こんにちは、療法士活性化委員会の大塚です。
こんにちは、療法士活性化委員会の大塚です。
前回は急性痛についてお伝えしました。大事なことは1,痛みを長引かせないこと、2,急性痛には急性期治療を、ただし必要以上の不活動状態を作らない、3,治療と並行して不安を減らすための患者教育が必要でした。>>>痛みについて勉強してみた〜急性痛編〜
今回は急性期の炎症であったり、侵害刺激自体が収まっても続いてしまう慢性疼痛についてお伝えして行きます。
痛みの定義
改めて痛みの定義を確認しておきましょう。
痛みとは、実際の組織損傷もしくは組織損傷が起こりうる状態に付随する、
あるいはそれに似た、感覚かつ情動の不快な体験。
注釈
- 痛みは常に個人的な経験であり、生物学的、心理的、社会的要因によって様々な程度で影響を受けます。
- 痛みと侵害受容は異なる現象です。 感覚ニューロンの活動だけから痛みの存在を推測することはできません。
- 個人は人生での経験を通じて、痛みの概念を学びます。
- 痛みを経験しているという人の訴えは重んじられるべきです。
- 痛みは,通常,適応的な役割を果たしますが,その一方で,身体機能や社会的 および心理的な健康に悪影響を及ぼすこともあります。
- 言葉による表出は、痛みを表すいくつかの行動の1つにすぎません。コミュニ ケーションが不可能であることは,ヒトあるいはヒト以外の動物が痛みを経験している可能性を否定するものではありません。
International Association for the Study of Pain(IASP),国際疼痛学会,2020.7.25
要は痛み刺激の有無に関わらず、不快な体験を痛みと定義しています。
基本的に人は痛み自体を不快なものと認識しています。痛みがあり、その痛みに苦痛を感じた経験がある場合、同じ苦痛を感じる場面を想起しただけでも痛みが発生すると言うことです。
またこの不快な状態が継続した場合、痛みを発している状態が通常の状態という神経の可塑性が生じ、侵害刺激自体が無くなったにも関わらず痛みが持続する慢性疼痛に移行してしまいます。
この中枢神経の可塑的な変化を中枢性感作といいます。
なので痛みに対してはとにかく長引かせないことが重要になります。
慢性疼痛とは
慢性疼痛は「組織の損傷が治癒するのに要する妥当な時間(3ヶ月間)を越えて持続する痛み」とされています。(国際疼痛学会)
急性痛と慢性疼痛の違いは以下になります。
療法士活性化委員会Assessmentコースより抜粋
つまり慢性疼痛には
- 筋骨格系の変化、異常姿勢によるメカニカルストレス、関節、結合組織、軟部組織の機能障害といった局所の問題
- 神経障害性疼痛と言われる、上行性疼痛伝達系の過活動、下降性疼痛抑制系、内因性疼痛修飾系の機能不全の中枢性感作(神経の問題)
- 痛みに対する情動や認知といった情動的・認知的側面の問題(脳の問題)
の3つが複雑に影響しているため、対象者が訴える局所の痛みに対しての機能的な介入だけでは良好な結果は得られません。
慢性疼痛に対しては
- 局所の問題
- 神経の問題
- 認知・情動の問題
の3つを包括的に捉え、介入する必要があります。
疼痛の評価
感覚的側面
- 痛みの強度:VAS、NRSなど
- 痛みの部位:pain drawing
- 痛みの性質:SF-MPQなど
認知・情動的側面
- 不安・抑うつ:HADS
- 破局的思考:PCS
- 恐怖回避的思考:FABQ、TSK
身体機能・活動
- 身体機能:国際標準化身体活動質問表、疼痛生活障害評価尺度
心理社会的要因
- QOL:SF-36など
- 社会的役割:問診
を一つで判断せず、統合して判断しましょう。
慢性疼痛の介入
まず前提として「痛みは不快なもの」というものがあります。つまり「不快な状態」でい続ける限り慢性疼痛は変化していきません。なのでまず最初に必要になるのが「教育」です。
急性痛のときと同じように
- 痛みの原因:侵害受容性、神経障害性、神経可塑性。主たる身体的な原因がなくても頭で痛みを作り出している事がある
- 日常生活の活動の継続:不活動性疼痛の抑制、廃用症候群の予防など
- 運動の必要性:不活動による疼痛の増加、血流の低下による治癒の遅延、廃用症候群の予防
- 予後:現在の痛みの原因、痛みの治癒過程など
- 現状の回復具合:炎症状態、可動域、筋力、動作の改善具合を可視化して共有するなど
を繰り返し理解するまで説明しましょう。
教育とともに行うのが運動です。
慢性疼痛に関するガイドラインでは教育と運動を主として行い、補助的に徒手療法、最終手段として手術療法が選択されるとされています。1)
要は、慢性疼痛は局所の問題だけでなく、痛みに対しての認知・情動的側面からも問題もあるため、自身が能動的に体を動かす事によって、血流の改善や結合組織の可動性の改善による姿勢の改善と言った身体的な変化とともに、痛みに対しての認知や感情を変化させる必要があります。なので運動が必要になります。
どんな運動がいいか?
基本的に運動の種類や器具の使用・不使用による効果の変化はないと言われています。
大事なのは「痛み=不快」という意識があるので、不快でない動き、要は痛くない運動を行うことが推奨されます。また、きつい運動も「きつい=不快」となるため、快適な強度での運動が必要です。
初期は
痛みの訴えのある部位と反対側の運動、または痛みの出る方向と反対の運動を1日に10分程度から始める。また痛みがない範囲での全身運動、ウォーキング、エルゴメーターなど。
徐々に変化が出てきたら
痛みのある部位を痛みのない範囲で動かす。全身運動の時間、や強度を増やすなどを行っていきます。
基本的には対象者の好みの運動を痛みのない、きつくない程度の強度で行うことが大切です。
その運動を療法士と相談しながら痛みが増強したらやりすぎ、動いて痛みがあるなら痛くない動きを相談するなどして適切にフィードバックをしながら行いましょう。
まとめ
痛みについて勉強してみた〜慢性疼痛編〜
- 痛みを感じる神経システムに問題が生じている
- 身体機能自体に問題がなくても脳が痛みを感じている
- 痛みのない範囲で運動する
痛みというとどうしても徒手的な介入を選択してしまいがちですが、より能動的な身体活動を意識してもらうように教育と運動を中心に行っていきましょう。次回は運動をしてもらうにあたって注意する点やよくある事例についてお伝えしていきます。
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参考文献
- Skou ST, Arendt-Nielsen L,Roos EM :an important pain reliever in knee osteoarthritis Pain in Joints.LWW,Philadelphia,2016
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