肩関節周囲炎のリハビリのポイントについて 〜肩関節だけ見ていても改善できない理由〜

肩関節周囲炎のリハビリのポイントについて 〜肩関節だけ見ていても改善できない理由〜

こんにちは、療法士活性化委員会の大塚です。

理学療法士大塚久

みなさん、肩関節周囲炎の方を担当したことはありますか? 僕も整形外科クリニックに勤めていたときはよく担当していました。正直言いますと苦手でした。

なぜ苦手だったかというと

  • 痛みの原因が分からない
  • じっとしてても痛い
  • 夜間痛をどうしていいかわからない
  • 肩関節の構造が複雑すぎる
  • 肩関節の評価がわからない
  • カフエクササイズをして安定性を高めるぐらいしか介入法がわからない

といったことが苦手な要因でした。みなさんも同じような経験ありませんか?

 

今回はそんなよくわからないけど痛みは強くて日常生活にも支障が出る肩関節周囲炎のリハビリのポイントをお伝えしていきます。

肩の痛みに対する理学療法に関するコンセンサス

Consensus for physiotherapy for shoulder painという文献を紹介します。こちらの文献は肩の痛みを持つ患者のための国際的に認められた評価および治療アルゴリズムの開発に貢献することを目的とされた研究です。この文献では

  1. 理学療法の治療決定は構造的病理ではなく身体的評価結果に基づくべきである
  2. 積極的な運動が主要な治療アプローチであるべきである
  3. 定期的な再評価が実行されて、肩の痛みの原因となるすべての臨床的特徴が確実に改善されていることを確認する

が特に強調されています。

Klintberg IH, Cools AM, Holmgren TM, Holzhausen AC, Johansson K, Maenhout AG, Moser JS, Spunton V, Ginn K. Consensus for physiotherapy for shoulder pain. Int Orthop. 2015 Apr;39(4):715-20. doi: 10.1007/s00264-014-2639-9. Epub 2014 Dec 31. PMID: 25548127.

どのような手順で評価、介入していくか?

Consensus for physiotherapy for shoulder painでは

  1. 肩関節の自動ROMを評価
  2. 肩甲上腕リズムを評価
    2-1問題あり:筋力を測定する
     2-1-1筋力に問題あり:動作を変えることで症状が変わるかを評価
      2-1-1-1動作の変化で症状に変化あり:肩甲骨の動きの制御の訓練をおこなう
      2-1-1-1動作の変化で症状に変化なし:肩甲胸郭関節・肩甲上腕関節に介入する
     2-1-2筋力に問題なし:頚椎、胸椎のROM制限を評価
     
    2-2問題なし:肩関節の他動ROMを評価
     2-2-1問題あり:肩関節の柔軟性を改善
     2-2-2問題なし:筋力を評価
      2-2-2筋力に問題あり
      2-2-2筋力に問題なし:頚椎、胸椎のROM制限を評価
     
  3. 再評価

再評価で改善が見られればそのまま継続して行い、経過を評価する。改善が見られなければもう一度最初から評価するか、理学療法の対象外とするのどちらかとなります。

なので肩関節周囲炎で見るポイントは

  • 肩甲上腕リズム
  • 肩甲骨周囲の筋(前鋸筋、僧帽筋、広背筋、菱形筋、小胸筋など)
  • 頚椎、胸椎のROM
  • 肩甲上腕関節の可動性
  • 肩甲上腕関節周囲の筋(ローテーターカフなど)

となります。少なくとも肩甲上腕関節だけで症状が改善するわけではなく、組織の変性度合いではなく、あくまで身体機能としての動きの評価を行う必要があると理解することができます。

次回はそれぞれの部位の具体的な評価と介入方法についてお伝えしていきます。

まとめ

肩関節周囲炎のリハビリのポイントについて 〜肩関節だけ見ていても改善できない理由〜

  1. 構造的病理ではなく動きの評価をものに介入法を決定する
  2. 肩甲上腕リズムから見る
  3. 頚椎、胸椎の可動性も必要

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