【理学療法士が解説】大腿四頭筋の解剖学と機能改善|膝の痛み改善に
こんにちは。理学療法士の内川です。今回は日常生活で重要な役割を果たす大腿四頭筋について詳しく解説します。膝の痛みや変形性膝関節症との関連、そして効果的なリハビリテーション方法まで、幅広くカバーしていきます。
目次
1. 大腿四頭筋の解剖と作用
構成筋と起始・停止
- 大腿直筋:下前腸骨棘と寛骨臼上縁
- 内側広筋:大腿骨内側面
- 外側広筋:大腿骨外側面
- 中間広筋:大腿骨前面
全ての筋が膝蓋骨を介して脛骨粗面に停止します。
神経支配
大腿神経(L2-L4)
主な作用
- 膝関節の伸展
- 大腿直筋による股関節屈曲の補助
2. 大腿四頭筋の評価方法
触診
仰臥位で膝を軽度屈曲させ、大腿部を触診。筋の硬さや圧痛を確認します。
関節可動域検査(ROM-T)
- 膝関節屈曲:基本軸は大腿骨、移動軸は腓骨
- 正常可動域:屈曲130°、伸展0°
徒手筋力検査(MMT)
段階5.4.3の手順
測定肢位:座位(手は体の横かベッドの縁を掴む)
- 座位の状態で軽く体を後方へ傾ける(ハムストリングスを緩める)
- 一度膝の伸展を行い全可動域を動かす(段階3のテスト)
- 足関節すぐ上の下腿遠位に抵抗をかける
判断基準:
5:最大抵抗に対して保持できる
4:強度から中等度の抵抗に対して保持できる
3:抵抗がなければ全可動域を動かし、保持できる
段階2の手順
測定肢位:段階2は側臥位 段階1.0は背臥位
- 後ろから大腿部とくるぶしのすぐ上の足関節で下腿を支える
- 膝関節90°屈曲位にする
- 膝関節を伸展してもらう
・判断基準:
2:除重力であれば全可動域を動かせる
段階1.0の手順
- 膝のすぐ上で大腿四頭筋腱を触知する
- 膝関節の伸展(大腿四頭筋セッティング)を行う
・判断基準:
1:筋の収縮を腱を介して触知できる
0:筋の収縮がない。腱が浮き上がらない
3. 大腿四頭筋のリハビリテーション
ストレッチ
- 立位ストレッチ:壁に手をつき、片足を後ろに引いて膝を曲げ、足首をつかみます。20秒間保持。
- 側臥位ストレッチ:横向きに寝て、上側の足を後ろに引き、手で足首をつかみます。
注意:腰椎の過度な伸展に注意してください。
筋力強化
クアッドセット
仰臥位で膝下にタオルを置き、膝を伸ばして大腿四頭筋を収縮。10秒間保持を繰り返します。
スクワット
- 足を肩幅に開く
- つま先と膝が同じ向きになるよう注意しつつ膝関節、股関節の屈曲を行う
- 膝が内側へ入らないように意識しつつ元の姿勢へ戻る
膝関節60°屈曲位が最もトルクを発揮しやすい位置です。
4. 大腿四頭筋の機能不全と影響
- 内側広筋の早期筋萎縮と筋力低下が膝への負担増加につながります。
- 筋力低下や過緊張は膝の安定性低下、膝痛、股関節問題を引き起こす可能性があります。
- スポーツ時には前十字靭帯損傷のリスクが高まります。
- 筋の短縮は骨盤前傾を引き起こし、腰痛や反り腰の原因となることがあります。
5. 臨床ちょこっとメモ
- 左右差は触診でも確認可能です。
- 日常生活動作における大腿四頭筋の重要性:
- ジャンプ:歩行の3.8倍の筋力が必要
- 階段昇降:歩行の3.2倍の筋力が必要
- スクワット:歩行の2.9倍の筋力が必要
- 筋力練習だけでなく、実際の動作を意識したエクササイズが重要です。
6. まとめ
解剖と機能
大腿四頭筋は4つの筋(大腿直筋、内側広筋、外側広筋、中間広筋)から構成され、主に膝関節伸展を担います。内側広筋は抗重力筋として特に重要です。
評価と強化方法
触診、ROM-T、MMTによる評価が重要です。筋力強化にはクアッドセットやスクワットが効果的で、特に膝関節60°屈曲位でのトレーニングが推奨されます。
機能不全の影響と臨床的考察
大腿四頭筋の機能不全は膝の安定性低下や痛み、さらには腰痛にまで影響を及ぼす可能性があります。日常生活動作を意識したリハビリテーションが重要です。
7. 参考文献
- 基礎運動学第6版補訂
- 病態動画から学ぶ臨床整形外科的テスト
- 筋骨格系のキネシオロジー
- 新徒手筋力検査法 原著第10版
- 小林龍生. “膝関節疾患のリハビリテーション治療に必要な解剖・バイオメカニクス”. MB Medical Rehabilitation (258): 1-7, 2021.
- 小野田竣介.他.”変形性膝関節症に有効な大腿四頭筋セッティングの検討”.静岡理学療法ジャーナル (45): 109-109, 2023.
- 下河内洋平. “深屈曲位での大腿四頭筋強化のためのスクワットトレーニング”臨床スポーツ医学 39(2): 215-217, 2022.