急性疼痛の理解と管理 〜科学的根拠に基づく痛みの基礎〜

急性疼痛の理解と管理 〜科学的根拠に基づく痛みの基礎〜

こんにちは、理学療法士の赤羽です。

疼痛について解説するシリーズ第8回目へようこそ。前回は痛みの分類について「時間的分類」と「神経メカニズム的分類」の2つに分けて解説しました。
前回の内容はこちら>>>痛みの分類:時間的分類と神経メカニズム的分類 〜科学的根拠に基づく痛みの基礎〜
今回は、特に急性疼痛に焦点を当て、その特徴と管理方法について詳しく見ていきましょう。

急性疼痛とは何か?

急性疼痛は、組織損傷や炎症に伴う侵害受容による痛みです。これは生物にとって必要不可欠な警告信号としての役割を果たし、通常は創傷修復過程で自然に改善します。主な特徴は:

  • 原因が明確
  • 発症から3ヶ月以内に改善
  • 感覚的側面が強い

しかし、急性疼痛が適切に管理されないと、慢性疼痛へ移行するリスクがあります。

急性疼痛の管理:なぜ重要か?

急性疼痛が遷延してしまうと慢性疼痛へと移行してしまう可能性があります。慢性疼痛に移行してしまう要因として、器質的な要因や心理社会的要因等が挙げられます。

研究によると、術後3日間にNRS(数値評価スケール)が5以上であると、CRPS(複合性局所疼痛症候群)発症のリスクが高まることが分かっています。このことから、急性期の段階での適切な疼痛管理が患者の長期的な予後に大きな影響を与える可能性があります。

急性痛に対しては、損傷組織に対する修復を進めることに加え疼痛の長期化を防ぐ目的で物理療法や運動療法等を行っていきます。そのためには、医師と相談しながら場合によっては薬物療法も行いながらリハビリテーションを進めていくことが重要となります。

急性疼痛管理の実践的アプローチ

  1. 物理療法
    • 寒冷療法
    • TENS(経皮的電気神経刺激)
    • 低出力レーザー光線治療
    • 非温熱でのパルス超音波治療
  2. 運動療法
    • 過度な安静・固定を避ける
    • ADL(日常生活動作)向上を目指した介入
    • 段階的な活動量の増加
  3. 心理社会的アプローチ
    • 認知行動療法
    • マインドフルネス
    • 臨床心理士との連携
    • ソーシャルワーカーや地域支援サービスとの連携

多角的アプローチの重要性

急性疼痛の管理には、生物学的要因だけでなく、心理社会的要因も考慮した多角的なアプローチが必要です。BPSモデル(生物心理社会モデル)を活用し、患者を全人的に捉えることが重要です。

まとめ:急性疼痛管理の3つのポイント

  1. 急性疼痛は組織損傷や炎症に伴う侵害受容による痛みで通常創傷修復で改善される
  2. 慢性疼痛に移行してしまう要因として器質的な要因や心理社会的要因等が挙げられる
  3. 器質的な要因に対しては薬物療法や物理療法・運動療法等でADL能力の向上を図り、心理社会的要因に対してはそれぞれの専門職と連携しながら関わっていく

急性疼痛の適切な管理は、患者の長期的な予後と生活の質に大きな影響を与えます。リハビリテーション専門職として、これらの知識を活かし、患者一人ひとりに最適な介入を提供していきましょう。

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確認問題:

  1. 急性疼痛の主な特徴として正しいものはどれですか?
    1. 原因が不明確である
    2. 発症から6ヶ月以上続く
    3. 通常、創傷修復過程で改善する
    4. 主に心理的要因によって引き起こされる
  2. 急性疼痛管理において重要でないものはどれですか?
    1. 物理療法
    2. 運動療法
    3. 長期間の完全安静
    4. 心理社会的アプローチ
  3. BPSモデルにおいて考慮すべき要因は何ですか?
    1. 生物学的要因のみ
    2. 心理的要因のみ
    3. 社会的要因のみ
    4. 生物学的、心理的、社会的要因すべて

答え:

  1. c) 通常、創傷修復過程で改善する
  2. c) 長期間の完全安静
  3. d) 生物学的、心理的、社会的要因すべて

これらの問題を通じて、急性疼痛の特徴と適切な管理方法について復習してください。疑問点があれば、遠慮なくコメント欄でお尋ねください。

参考文献:

  1. Savas¸ S, et al. J Hand Ther, 2017.
  2. 川村博文ら, Jpm J Rehabili Med 2016:53:604-609
  3. 沖田 実, 松原 貴子, 急性疼痛の理解と管理 〜科学的根拠に基づく痛みの基礎〜 三輪書店, 2020
  4. 一般財団法人 日本痛み財団, いたみの教科書―「疼痛医学」ダイジェスト版, 医学書院, 2021

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