こんにちは、理学療法士の内川です。
臨床でこんな疑問を感じたことはありませんか?
- 「胸の奥が突っ張る感じがするけど、どこの筋肉が原因?」
- 「肩甲骨の動きが悪いのは小胸筋のせい?」
- 「呼吸が浅い患者さんへのアプローチに小胸筋は関係する?」
小胸筋は肩甲帯の動きや胸郭の安定に関与し、デスクワークやスマホ操作での不良姿勢が原因で過緊張しやすい筋肉です。さらに、小胸筋の短縮は胸郭の動きを制限し、呼吸機能にも影響を及ぼすため、臨床ではその評価とアプローチが非常に重要です。
本記事では、小胸筋の解剖学的特徴から評価・アプローチ方法までを、部位別の視点を交えながら解説していきます。
それでは、一緒に確認していきましょう!
1.小胸筋の解剖と作用

起始
- 第3~第5肋骨(肋骨外側面)
停止
- 肩甲骨の烏口突起
支配神経
- 内側胸筋神経(C8~T1)
作用
- 肩甲骨の前傾・下制・内転
- 呼吸補助筋として、強制呼気時に胸郭を引き下げる
小胸筋は烏口突起から肋骨に向かって走行し、肩甲骨と胸郭をつなぐ重要な筋肉です。肩甲骨を胸郭に引き寄せることで、胸郭の動きや肩甲骨の安定に寄与します。
2.小胸筋の評価
※小胸筋の徒手筋力テストはありません。
触診

- 座位をとってもらう
- 肩甲骨の烏口突起を目安に、みぞおちへ3横指の付近を触知する
- Lift offを行ってもらい収縮を確認する
伸張性テスト


- 背臥位でベッドと左右の肩甲骨の高さを確認する。
- 肩甲骨を上方からベッドに向けて押す
評価:左右差がなければ正常。背臥位時点で左右差がある、柔軟性がなく押してもベッドへつかない場合は伸張性の低下が考えられます。
3.小胸筋の機能訓練(ストレッチ)

- 伸張運動
- 伸張させたい方の肩関節外転・外旋90°の姿勢をとる
- 両下肢を反対側へと倒す
- 肘をベッドにつける様に押しストレッチを行う
- リリース
- 触診で触った部位を再度触る
- 表層には大胸筋があるため少し深めに押す様にし、深呼吸を行ってもらう。
4.筋肉の特徴
- 肩甲挙筋、菱形筋とともに肩甲骨下方回旋に作用します。
- 小胸筋の短縮が生じると肩甲骨の前傾及び巻き肩を引き起こします。
- 小胸筋は短縮が生じやすい筋のため、伸張エクササイズが重要となります。
5.臨床ちょこっとメモ
- 小胸筋の深層には腕神経叢や鎖骨下動脈、鎖骨下静脈があり、過緊張や短縮により小胸筋症候群を引き起こすことがあります。(胸郭出口症候群の一つで過外転症候群とも言われます)
- 小胸筋は肩甲骨と胸郭をつなぐため、胸郭の動きが悪いと肩甲骨の動きにも影響します。胸郭の柔軟性改善を考慮したアプローチも必要です。
- まき肩かつ胸式呼吸が中心となっている場合だと特に小胸筋の過緊張が生じやすいため、姿勢改善のみでなく、呼吸の改善も行う必要があります。
6.まとめ
- 小胸筋の基本的特徴と機能
- 第3~5肋骨から烏口突起に付着する筋肉
- 肩甲骨の前傾・下制・内転を担う
- 強制呼気時の呼吸補助筋として機能
- 内側胸筋神経(C8~T1)の支配を受ける
- 肩甲骨と胸郭をつなぐ重要な筋肉
- 評価・アプローチ法
- 触診は烏口突起からみぞおちへ3横指付近で確認
- 伸張性テストは背臥位での肩甲骨の高さと可動性を評価
- ストレッチは肩関節90度外転・外旋位で実施
- 深呼吸を併用したリリースが効果的
- 胸郭の柔軟性評価も重要
- 臨床的特徴と注意点
- 短縮しやすい筋肉で、巻き肩の原因となる
- 過緊張により小胸筋症候群を引き起こす可能性
- 不良姿勢(デスクワーク・スマホ操作)で過緊張しやすい
- 胸式呼吸との関連が強く、呼吸パターンの改善が重要
- 腕神経叢や血管が近接するため、慎重なアプローチが必要
今回記載したものはあくまでも筋単体のことです。実際の治療においては周囲にいくつもの筋肉が存在しており、深さも考えなければなりません。周囲に何があるかイメージできていますか?不安な方はぜひ一緒に勉強しませんか?
解剖学を学びませんか?(https://lts-seminar.jp/anatomyimage/)
7.参考文献
- プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論運動器系 第3版
- 肩関節痛・頸部痛のリハビリテーション
- 機能解剖学的触診技術 上肢
- マッスルインバランスの理学療法
- 基礎運動学 第6版補訂