OTの専門性を活かす。 意味ある作業でトイレ動作へアプローチ 〜基礎から学ぶトイレ動作〜

皆さんこんにちは。作業療法士の内山です。今回は、作業療法士の専門性である「意味のある作業」の視点から、トイレ動作へのアプローチについて考えていきたいと思います。よろしくお願いします。

前回の記事はこちら>>>送迎場面が宝の山! トイレ動作評価チェックリスト 〜トイレ動作の動作分析から情報共有までの流れを学ぶ〜

意味のある作業としてのトイレ動作とは?メカニズムを知る

トイレ動作は単なる基本的ADLではなく、その人の人生や生活歴と深く結びついた意味のある作業です。具体的には、以下の要素で構成されています。

心理的要素

羞恥心や自尊心と密接に関連し、自己効力感にも大きな影響を与えます。特に、介助を要する状況では、これらの心理的側面への配慮が重要となります。

社会的要素

トイレ動作の自立度は、社会参加や活動範囲に影響を与えます。例えば、外出時のトイレ動作に不安がある場合、活動制限につながる可能性があります。

文化的要素

生活習慣や価値観によって、トイレ動作への認識や方法が異なります。これは幼少期からの生活環境や教育によって形成されます。

生活に根ざした活動がトイレ動作につながる?

日常生活で行う様々な活動には、トイレ動作に必要な要素が含まれています。それぞれの活動を詳細に分析することで、より効果的なアプローチが可能となります。

1. 味噌汁作り

必要な動作要素:

  • 立位保持(調理台での作業)
  • 両手動作の協調性(具材の準備)
  • 重心移動(調理台での横移動)
  • 手指の巧緻性(調味料の計量)

トイレ動作との関連性:

  • 便座での姿勢保持
  • 下衣操作時の両手動作
  • 方向転換時の重心移動
  • 細かな操作を要する着衣動作

提供時の工夫:

  • 立位時間は個人の耐久性に合わせて調整
  • 調理台の高さを適切に設定
  • 必要物品の配置を工夫し、リーチ動作を促進

2. 水やり

必要な動作要素:

  • 側方リーチ(植物への水やり)
  • 重心移動(移動しながらの水やり)
  • 道具操作(じょうろの操作)
  • 立位バランス(様々な方向への重心移動)

トイレ動作との関連性:

  • 手すりの操作
  • 方向転換時の姿勢制御
  • 便器周辺での位置取り
  • 立位での姿勢保持

提供時の工夫:

  • 植物の配置を調整し、リーチ距離を段階的に増加
  • じょうろの重さを調整し、負荷量を管理
  • 複数の植物の配置で、方向転換の機会を設定

3. 野菜の皮むき

必要な動作要素:

  • 手指の巧緻性(皮むき器の操作)
  • 両手の協調性(野菜の保持と道具操作)
  • 座位保持(作業中の姿勢維持)
  • 上肢の持久力(継続的な作業)

トイレ動作との関連性:

  • 下衣の細かな操作
  • ボタンやファスナーの操作
  • 便座での安定した座位保持
  • 持続的な動作の遂行

提供時の工夫:

  • 皮むき器の種類を段階的に変更
  • 野菜の大きさや硬さを調整
  • 作業時間を個別に設定

4. 新聞紙たたみ

必要な動作要素:

  • 両手の協調性(新聞紙の展開とたたみ)
  • 空間認知(たたむ順序の理解)
  • 手指の巧緻性(細かな紙の操作)
  • 注意の持続(手順の遂行)

トイレ動作との関連性:

  • 衣服の折りたたみ動作
  • 空間での身体位置の認識
  • 手順に沿った動作の遂行
  • 持続的な注意力の維持

提供時の工夫:

  • 新聞紙のサイズを段階的に変更
  • たたむ手順を視覚的に提示
  • 作業環境の明るさを調整

具体的なアプローチ例を考えてみる

事例1:75歳女性、変形性膝関節症

介入前の状態:

  • しゃがみ込み動作困難
  • トイレ後の立ち上がりに介助必要
  • 活動意欲の低下

介入内容:

  1. 役割活動の提供
    • 水やり:側方への重心移動練習
    • 玄関掃除:段階的なしゃがみ込み訓練
  2. 作業活動の工夫
    • 花の手入れ:立位保持能力の向上
    • 野菜の下処理:手指機能の向上

結果: しゃがみ込みと立ち上がり動作が軽介助レベルまで改善。自宅での役割活動も増加。

事例2:82歳男性、パーキンソン病

介入前の状態:

  • 動作の円滑性低下
  • すくみ足による方向転換困難
  • 便座着座時の姿勢不安定

介入内容:

  1. 役割活動の選定
    • 味噌汁作り:立位での安定性向上
    • 食器の片付け:リズミカルな動作練習
  2. 段階的なアプローチ
    • 初期:2動作での方向転換
    • 中期:スムーズな体重移動
    • 後期:一連動作の統合

結果: 方向転換時のすくみ足が減少し、トイレ動作の安全性が向上できた!

まとめ

  1. トイレ動作は、その人の生活歴や価値観と密接に関連する意味のある作業である。
  2. 日常の活動には、トイレ動作改善につながる多くの要素が含まれている。
  3. 作業療法士は、個々の生活背景に合わせた意味のある作業を提供することで、より効果的なアプローチが可能となる。

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