痛みの伝導路を整理する。受容器から脳までの「3つのニューロン」

痛みの伝導路を整理する。受容器から脳までの「3つのニューロン」

この記事の要約(3行まとめ)

  • 痛みは単なる感覚ではなく、脳の複数領域が関与する「感覚・情動・認知」の複合体験である。
  • 受容器から脳へは、主に3つのニューロン(一次〜三次)を乗り換えて伝達される。
  • 「外側系」は痛みの場所や強さを、「内側系」は不快感や覚醒(睡眠)などの反応を司る。

こんにちは、理学療法士の赤羽です。

疼痛には「感覚的側面」「情動的側面」「認知的側面」があり、これらの側面は受容器で検出された刺激が複数の痛み関連脳領域に伝えられることで生じるものです。
そのため脳が大きく関わっています。

そこで今回は、受容器から痛み関連領域に伝わるまでの過程を考えていきます。

疼痛の伝導路

まずは、大まかな伝導路の流れです。

【痛みの伝導ルート】

受容器(自由神経終末)

脊髄後角

(視床や脳幹を経由し)

大脳皮質・辺縁系など複数領域へ投射

※痛みの上行路は脊髄視床路だけでなく、脊髄網様体路など複数の経路が並列に関与します。

上記のような流れになります。もう少し詳しくみてみましょう。

侵害受容ニューロンの乗り換え

脳へ到達するまでに3つのニューロンを介します。

  • 一次侵害受容ニューロン:
    侵害受容器の信号を受け取り上行 ➡ 脊髄後角へ
  • 二次侵害受容ニューロン:
    脊髄後角でバトンタッチして上行 ➡ 視床へ
  • 三次侵害受容ニューロン:
    視床でバトンタッチして上行 ➡ 脳の各領域へ

つまり、「脊髄後角」「視床」でニューロンを乗り換えることになります。

侵害受容器について

侵害受容器には「高閾値侵害受容器」と「ポリモーダル受容器」があります。
これらの受容器はAδ線維とC線維という神経線維(一次侵害受容ニューロン)の末端である自由神経終末が侵害受容器として働いています。

  • Aδ線維の末端:
    主に高閾値侵害受容器(機械的侵害受容器)
  • C線維の末端:
    ポリモーダル受容器

高閾値侵害受容器は、主に強い機械的刺激に反応します。
一方、ポリモーダル受容器は、機械的刺激に加えて、熱刺激や冷刺激、そして化学的刺激(炎症による発痛物質など)にも反応します。

一次侵害受容ニューロンについて

一次侵害受容ニューロンには「Aδ線維」と「C線維」があることは先ほど解説しました。ここではもう少し詳しく解説していきます。

Aδ線維(一次痛)

  • 有髄線維で伝導速度が速い。
  • 局在がはっきりしている。
  • 皮膚に多く分布。
  • 一次痛(怪我をした瞬間に感じる鋭い痛み)に関与しやすい。

C線維(二次痛)

  • 無髄線維のため、伝導速度が遅い。
  • 局在がはっきりとしない。
  • 主に骨組織、歯髄などの深部組織や皮膚に分布。
  • 二次痛(怪我をした後に続く鈍い痛み)に関与しやすい。

二次・三次侵害受容ニューロンと「脳」への投射

二次侵害受容ニューロンは髄節で対側に交叉し、脊髄の前側索を脊髄視床路として上行します。
これは、「外側系」と「内側系」に分かれます。その後、視床へ達し三次侵害受容ニューロンへと乗り換えます。

外側系 (外側脊髄視床路)

脊髄後角から視床の腹側基底核群へと至り(外側脊髄視床路)、三次侵害受容ニューロンによって大脳皮質の体性感覚野へと投射されます。

体性感覚野では、「どこの部位がどう痛むのか」「痛みの強さ」や「痛みの局在」を弁別しています。
つまり外側系は主に、痛みの感覚的側面に関与すると考えられます。

内側系 (内側脊髄視床路、脊髄網様体路)

  • 脊髄網様体路: 脊髄 ➡ 脳幹網様体 ➡ 視床髄板内核群など
  • 内側脊髄視床路: 脊髄 ➡ 視床髄板内核群など

これらは最終的に、島皮質、前帯状回(ACC)、扁桃体、前頭前野、視床下部などへ投射します。

【内側系の特徴】

内側系は主に、情動・注意(覚醒)・動機づけ・自律神経反応など、「情動的/認知的側面」に関与すると考えられます。

  • 島皮質・前帯状回・扁桃体:痛みの「情動」
  • 網様体・視床髄板内核:覚醒レベルの調整
    ※「痛くて目が覚める」「痛くて眠れない」といった臨床現象は、この経路が覚醒系を賦活するためです。

また、自律神経の中枢である視床下部へも投射しているため、血圧上昇や頻脈・冷汗・顔面蒼白等の自律神経症状が出現します。

まとめ

今回は痛みの伝導路について解説していきました。

侵害受容器からの信号が最終的に脳へと至り、脳の広範な部位が反応します。そうしたことから疼痛が生じた際に身体的だけでなく情動面など様々な側面において複数の反応が出現します。

また、痛みは今回解説した上行入力だけでなく、脊髄後角での興奮性の増大(ワインドアップ現象など)や、脳からの下行性調節(抑制/促通)によっても大きく変動します。

臨床では「入力を減らす」だけでなく、こうした神経系の特性を理解し、「文脈(安全性・予測・注意・活動)」を整える視点が重要になります。

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参考文献

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一般財団法人 日本いたみ財団. いたみの教科書―「疼痛医学」ダイジェスト版. 医学書院, 2021.
半場 道子. 慢性痛のサイエンス 第2版:脳からみた痛みの機序と治療戦略. 医学書院, 2023.
沖田 実. ペインリハビリテーション入門. 三輪書店, 2020.

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