中斜角筋の解剖と機能を徹底解説! 〜学生・新人理学療法士、作業療法士のためのスキルアップガイド〜

こんにちは、理学療法士の内川です。

臨床現場で、患者様の頚部痛や肩こり、腕のしびれなどに関わる中で、中斜角筋について以下のような疑問を持ったことはありませんか?

  • 中斜角筋って、具体的にどんな働きをするんだろう?」
  • 前斜角筋後斜角筋とは何が違うの?臨床的な意義は?」
  • 胸郭出口症候群(TOS)肩こりと、どう関係しているの?」

中斜角筋は、頸部の安定性や呼吸補助に関わる重要な筋肉ですが、特にデスクワークやスマートフォンの長時間使用による不良姿勢で過緊張を起こしやすく、肩こり胸郭出口症候群(TOS)の要因となりうる筋肉の一つです。

この記事では、理学療法士・作業療法士の皆さんが臨床で活用できるよう、中斜角筋の基本的な解剖学から、臨床で役立つ評価方法、具体的なアプローチ、そして機能低下がもたらす影響まで、網羅的に解説していきます。

目次

1. 中斜角筋の解剖と作用

中斜角筋の解剖図:起始、停止、走行を示したイラスト

起始

  • 第2~第7頚椎の横突起(後結節)

停止

  • 第1肋骨(前斜角筋の後方に付着)

支配神経

  • 頸神経叢の筋枝(C3~C8の神経根由来)

主な作用

  • 頸部の側屈(同側へ曲げる)
  • 頸部の屈曲補助(両側が働いた場合、前斜角筋と協働)
  • 第1肋骨の挙上(吸気補助筋として働く)

中斜角筋は、前斜角筋と共に、特に努力性吸気時に第1肋骨を引き上げる補助的な役割を担います。また、頸部の側屈動作や頭頸部の姿勢保持に重要な役割を果たしており、日常生活動作やスポーツパフォーマンスにも影響を与える筋肉です。

2. 中斜角筋の評価

触診

中斜角筋の触診方法:背臥位での触診部位を示すイラスト
  • 体位:対象者に背臥位になってもらいます。
  • ランドマーク:胸鎖乳突筋の後縁を確認します。
  • 触診手順:
    1. 顎下レベルで胸鎖乳突筋の後縁を触知します。
    2. 指をわずかに後方の深層(頚椎横突起方向)へ滑らせます。中斜角筋前斜角筋の後方に位置します。
    3. 対象者に軽く頸部を同側へ側屈してもらうと、中斜角筋の収縮を指下に感じることができます。

※注意:中斜角筋の直下には腕神経叢や鎖骨下動脈が走行しているため、強い圧迫は避けてください。

中斜角筋に対する個別の徒手筋力テスト(MMT)はありませんが、頸部側屈の抵抗運動で左右の筋力差や収縮の程度を確認することは臨床的に有用です。

胸郭出口症候群(TOS)に関連する評価

中斜角筋は、前斜角筋との間で斜角筋隙を形成し、腕神経叢と鎖骨下動脈が通過します。この部位での絞扼は胸郭出口症候群(斜角筋症候群)の原因となるため、以下のテストが評価に用いられます。

アドソンテスト(Adson Test)

アドソンテストの実施方法:頸部回旋・伸展時の橈骨動脈触知 アドソンテストの変法:反対側への頸部回旋・伸展

手順:

  1. 検者は座位または立位の対象者の後方に立ち、テスト側の上肢をやや外転・伸展させ、橈骨動脈の脈拍を触知します。
  2. 対象者に、テスト側へ頭頸部を回旋させ、さらに顎を挙げるように伸展させ、深呼吸をしてもらいます。(前斜角筋中斜角筋の間での絞扼を誘発)
  3. 橈骨動脈の脈拍が減弱または消失するかを確認します。
  4. 症状が誘発されない場合、反対側へ頭頸部を回旋・伸展させて同様に確認することもあります(中斜角筋の影響をより考慮する場合)。

陽性所見:橈骨動脈の脈拍の減弱または消失、および/または上肢への症状(しびれ、痛みなど)の再現。

モーレイテスト(Morley Test) / 斜角筋圧迫テスト

モーレイテスト:鎖骨上窩の圧迫部位 モーレイテスト:斜角筋三角の圧迫部位

手順:

  1. 検者は、対象者の鎖骨上窩にある斜角筋三角(前斜角筋、中斜角筋、第1肋骨で囲まれる部位)を指で圧迫します。
  2. 圧迫は最大1分程度行い、症状の変化を確認します。

陽性所見:圧迫により、対象者が普段感じている上肢への放散痛やしびれが再現されること。

※これらのテストは特異度が低い場合もあるため、他の所見と合わせて総合的に判断することが重要です。

3. 中斜角筋へのアプローチ

中斜角筋は過緊張を起こしやすい傾向があるため、アプローチとしてはストレッチやリリースが中心となります。

ストレッチ

  • 体位:座位または立位。
  • 手順:
    1. ストレッチしたい側と反対側に顔を向けます(頸部回旋)。
    2. そこから、ゆっくりと頸部を伸展させます(顎を上げる)。
    3. ストレッチ感を強めるために、ストレッチしている側の肩を下げ、反対側の手で鎖骨上部または胸骨上部を軽く下方に押さえます。
    4. 中斜角筋(頸部の前外側)に伸びを感じる位置で、深呼吸をしながら20~30秒キープします。

※痛みを感じない範囲で行い、神経症状が出現する場合は中止してください。

リリース(筋膜リリース・トリガーポイントアプローチ)

  • 体位:背臥位がリラックスしやすく、触診もしやすいでしょう。
  • 手順:
    1. 上記「触診」で確認した中斜角筋の硬結や圧痛点(トリガーポイント)を探します。
    2. 指や母指で硬結部位を持続的に圧迫します(虚血圧迫)。圧の強さは、対象者が心地よい痛みを感じる程度(NRS 5-7/10程度)に調整します。
    3. 圧迫したまま、対象者にゆっくりと深呼吸を繰り返してもらいます。呼気時に筋が弛緩するのを感じながら、圧を調整します。
    4. 硬結が和らぐのを感じるまで、30秒~90秒程度続けます。

※リリース時も、神経や血管への過度な圧迫を避け、しびれや強い痛みが出ないように注意深く行います。

4. 中斜角筋の機能低下とその影響

中斜角筋の機能異常は、主に過緊張や短縮によって引き起こされます。その影響としては、以下が挙げられます。

  • 胸郭出口症候群(TOS):前述の通り、前斜角筋との間で腕神経叢や鎖骨下動脈を圧迫し、上肢のしびれ、痛み、冷感、脱力感などを引き起こす可能性があります。中斜角筋の肥厚や過緊張が直接的な原因となることもあります。
  • 頸部痛・肩こり:持続的な筋緊張は、頸部の可動域制限(特に側屈や回旋)や、関連痛として肩上部や肩甲骨周囲への痛みを引き起こすことがあります。
  • 呼吸パターンの異常:中斜角筋は吸気補助筋であるため、慢性的な口呼吸や胸式呼吸優位のパターン、COPDなどの呼吸器疾患を持つ患者では、過剰に活動しやすくなり、さらなる過緊張を招く悪循環に陥ることがあります。
  • 頭痛:中斜角筋のトリガーポイントは、側頭部や眼窩後部に関連痛を引き起こすことがあるとされ、緊張型頭痛の一因となる可能性も指摘されています。

5. 臨床ちょこっとメモ:理学療法士・作業療法士向け

  • 過緊張へのアプローチ優先:中斜角筋前斜角筋と同様に、現代の生活習慣(デスクワーク、スマホ操作など)で過緊張を起こしやすい筋肉です。そのため、臨床では筋力強化よりも、ストレッチやリリースによる緊張緩和柔軟性の改善を優先することが多いです。
  • 呼吸との関連:頸部痛や肩こりを訴える患者様で、肩で息をするような浅い胸式呼吸パターンが見られる場合、中斜角筋を含む斜角筋群の過緊張が関与している可能性が高いです。呼吸パターンの評価と修正(腹式呼吸指導など)もアプローチの一環として重要です。
  • 側屈時痛の原因検索:頸部側屈時に痛みが出現する場合、椎間関節や神経根だけでなく、中斜角筋自体の伸張痛や、過緊張による関連痛の可能性も考慮に入れましょう。触診やストレッチテストで鑑別を進めます。
  • ストレートネックとの関連:ストレートネックや頭部前方偏位姿勢では、頭部を支えるために頸部前面・側面の筋群(斜角筋群、胸鎖乳突筋など)が過剰に働きやすくなります。中斜角筋へのアプローチは、これらの姿勢異常に伴う頸部痛や肩こりの改善に効果的な場合があります。
  • 鑑別診断の重要性:上肢へのしびれや痛みがある場合、TOS(斜角筋症候群)だけでなく、頚椎症性神経根症、手根管症候群など他の病態との鑑別が不可欠です。各種整形外科的テストや神経学的所見と合わせて慎重に評価しましょう。

6. まとめ:中斜角筋のポイント

この記事で解説した中斜角筋に関する重要なポイントをまとめます。

① 解剖学的特徴と機能

  • 起始:第2~第7頚椎の横突起
  • 停止:第1肋骨(前斜角筋の後方)
  • 支配神経:頸神経叢(C3~C8)
  • 作用:頸部側屈(同側)、頸部屈曲補助、第1肋骨挙上(吸気補助
  • 頸部の姿勢維持や呼吸において重要な役割を担います。

② 評価と関連病態

  • 触診:胸鎖乳突筋の後縁深層で、頸部側屈時に収縮を確認します。
  • MMT:固有のMMTはありませんが、側屈での筋力比較は可能です。
  • 関連病態:過緊張により、前斜角筋との間で腕神経叢・鎖骨下動脈を圧迫し、胸郭出口症候群(TOS)の原因となり得ます。頸部痛、肩こり、頭痛、呼吸パターン異常にも関与します。
  • TOS評価:アドソンテストモーレイテストなどが用いられますが、他の所見と合わせて総合的に判断します。

③ アプローチと臨床上の注意点

  • アプローチ:主にストレッチ(対側回旋+伸展)やリリース(硬結への持続圧迫+深呼吸)で過緊張を緩和します。
  • 臨床的意義:デスクワークやスマホ使用による不良姿勢で過緊張しやすく、筋力強化より緊張緩和が重要となることが多いです。
  • 呼吸との関連:浅い胸式呼吸パターンでは過剰に働きやすいため、呼吸評価と指導も有効です。
  • 鑑別:上肢症状がある場合は、頚椎由来の症状などとの鑑別が必要です。
  • ストレートネック・肩こり:これらの症状に対するアプローチとしても有効な場合があります。

今回解説した内容は、中斜角筋単体に関する知識が中心です。しかし、実際の臨床では、中斜角筋は周囲の多くの筋肉(前斜角筋、後斜角筋、胸鎖乳突筋、僧帽筋上部線維など)や神経、血管と複雑に関わり合っています。

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