【理学療法士・作業療法士向け】見落としがちな恥骨筋を徹底解説!解剖から評価、

こんにちは、理学療法士の内川です。

「内転筋群って種類が多くて、どれがどの動きに関与しているか分かりづらい…」

「恥骨筋って小さいけど、何か意味のある筋なの?」

「鼠径部や股関節の前内側の痛みって、もしかして恥骨筋が関係してる?」

このように感じたことはありませんか?

恥骨筋は、内転筋群の中でも特に深部に位置する短い筋肉ですが、股関節の安定性や動きの制御に重要な役割を果たしています。臨床では、鼠径部痛症候群(グロインペイン)やスポーツ選手の内転筋の不均衡などで関わってくることが多く、意外と“見落とされがち”な存在です。

この記事では、恥骨筋の解剖学的特徴から臨床的な評価、アプローチまで、新人療法士にもわかりやすく解説していきます!

目次

  1. 恥骨筋の解剖と作用
  2. 恥骨筋の評価
  3. 恥骨筋のアプローチ
  4. 機能低下と影響
  5. 臨床ちょこっとメモ
  6. まとめ
  7. 参考文献

1. 恥骨筋の解剖と作用

恥骨筋の解剖学的起始・停止を示した図

起始

  • 恥骨上枝(恥骨櫛)

停止

  • 大腿骨後面(恥骨筋線)

支配神経

  • 大腿神経(L2~L4)または閉鎖神経(個人差あり)

作用

  • 股関節の内転
  • 股関節の屈曲
  • わずかに外旋の補助

筋の走行イメージとしては、恥骨から大腿骨へ、斜め後方に走行する幅の狭い筋肉です。

短くて深層に位置するため、運動方向の制御や股関節の安定性に寄与しやすく、特に内転の初動や細かい動きのサポートとして機能します。(内転の作用としては長内転筋よりは弱いとされています)

2. 恥骨筋の評価

触診

恥骨筋の触診方法を示した図
  • 股関節を軽く屈曲、外転、外旋させます(F-abd-ER肢位)。
  • 鼠径部のやや内側、大腿動脈の内側を目安に深部を触知します。
  • 被験者に股関節の屈曲・内転運動を行ってもらい、筋収縮を確認します。

※注意点:長内転筋と混同しやすいですが、恥骨筋はより深層にあります。奥から盛り上がるような収縮を感じるか確認しましょう。大腿中央部まで筋腹を辿れる場合は、長内転筋の可能性が高いです。

MMT(徒手筋力テスト) – 内転筋群全体として評価

恥骨筋単独でのMMTは困難なため、内転筋群全体として評価し、触診による筋緊張や筋ボリュームの左右差などを合わせて判断します。

【段階 5・4・3】

測定肢位:側臥位(テストする側を下にする)

MMT内転段階5,4,3の測定肢位(開始肢位) MMT内転段階5,4,3の測定肢位(抵抗を加える様子)
  • 手順:
    1. 非テスト側(上側)の股関節を約25°外転させ、検者が支えます。
    2. テスト側(下側)の下肢を、上の下肢に向かって持ち上げるよう指示します(内転運動)。
    3. 段階3:抵抗なしで全可動域動かせればOK。
    4. 段階5・4:最終域で大腿遠位部(膝の内側)に抵抗を加えます。
  • 判断基準:
    • 5 (Normal):最大抵抗に耐えられる
    • 4 (Good):中程度〜強度の抵抗に耐えられる
    • 3 (Fair):抵抗がなければ全可動域を動かせ、最終域を保持できる

【段階 2・1・0】

測定肢位:背臥位

  • 手順:
    1. 非テスト側の股関節を外転させ、テスト側の内転運動を妨げないようにします。
    2. 一方の手でテスト側の足部を支え、検者が下肢の重さを免荷します(摩擦を減らす)。
    3. もう一方の手で大腿近位部の内転筋群(恥骨筋を含む)を触診します。
    4. 股関節の内転運動を行うよう指示します。
  • 判断基準:
    • 2 (Poor):重力と摩擦を除去すれば全可動域を動かせる
    • 1 (Trace):筋収縮は触知できるが、関節運動は起こらない
    • 0 (Zero):筋収縮が全く触知できない

※評価のポイント:恥骨筋単独のMMTは難しいため、他の内転筋(長内転筋、短内転筋、大内転筋など)との協調性筋ボリュームの左右差触診による筋緊張などを総合的に評価することが重要です。

3. 恥骨筋のアプローチ(リリース)

過緊張や短縮が見られる場合に有効なアプローチの一つです。

  • 触診と同様の方法(股関節 軽度屈曲・外転・外旋位)で恥骨筋を触知します。
  • 筋線維に対し垂直方向に圧を加えながら、被験者に深呼吸を3〜5回繰り返してもらいます。
  • 呼気時に筋肉が弛緩するのを感じながら、ゆっくりと圧を調整します。

4. 機能低下と影響

恥骨筋の機能が低下したり、過緊張になったりすると、以下のような影響が出ることがあります。

  • 股関節の安定性が低下し、歩行時や片脚立位でのバランス能力低下に繋がる。
  • 股関節内転動作が不安定になり、代償動作が出現する。
  • 鼠径部痛や恥骨結合部のストレス増大を招き、特にスポーツ活動時の痛みや炎症(グロインペイン症候群など)を助長する可能性がある。
  • 他の内転筋群との協調性が乱れ、非効率的な運動パターンを誘発する。
  • 腸腰筋や腹直筋など、体幹や股関節周囲筋との連動性も損なわれることがある。

5. 臨床ちょこっとメモ

  • 恥骨筋の緊張が高い状態は、大腿骨頭を臼蓋に押し付ける力を強め(求心位の保持には寄与するが過剰になると)、関節内圧を上昇させる可能性があります。これは変形性股関節症などの症例で疼痛増悪の一因となることがあります。
  • 臨床的には、恥骨筋は筋力低下よりも短縮や過剰収縮による疼痛を生じることが比較的多い印象です。
  • 解剖学的に、恥骨筋の前方を大腿動脈と大腿静脈が通過します。
  • 筋連結として、長内転筋、内側広筋、腸骨筋との関連が報告されています。これらの筋との関連性を考慮した評価・アプローチも重要です。
  • 股関節の深層に位置するため、股関節の安定性(特に前方安定性)に関与しやすい筋肉です。
  • 原因が特定しにくい股関節の前面・内側の痛みがある場合、深層にある恥骨筋の問題が隠れている可能性があります。

6. まとめ

1. 解剖学的特徴と機能

  • 起始:恥骨上枝(恥骨櫛) / 停止:大腿骨後面(恥骨筋線)
  • 支配神経:大腿神経または閉鎖神経(L2-L4)
  • 内転筋群の最深層に位置する短い筋肉
  • 作用:股関節の内転、屈曲、わずかな外旋補助
  • 股関節前面から大腿骨へ斜め後方に走行
  • 筋連結:長内転筋、内側広筋、腸骨筋

2. 評価と臨床的意義

  • 触診:股関節軽度屈曲・外転・外旋位で鼠径部内側の深部を触知
  • MMT:単独評価は困難。内転筋群全体で評価し、協調性・筋量・緊張を比較
  • 股関節の安定性、特に内転初動や細かい動きの制御に関与
  • 鼠径部痛症候群やスポーツ障害(内転筋不均衡)との関連
  • 股関節前面・内側の痛みの原因となりうる

3. 機能障害とアプローチ

  • 機能低下/過緊張の影響:股関節不安定性、バランス低下、鼠径部痛、代償動作、変形性股関節症の疼痛増悪因子
  • 短縮や過剰収縮による疼痛が生じやすい
  • アプローチ例:触診肢位での持続的な圧迫+深呼吸(リリース)
  • 他の内転筋や体幹筋との連動性も考慮した評価・介入が重要

今回ご紹介したのは恥骨筋単体についての情報ですが、実際の臨床では、周囲の筋肉や関節とのバランス、全身的な運動連鎖を考慮することが不可欠です。ぜひ皆さんも恥骨筋への理解を深め、患者さんや利用者さんのより良い生活をサポートしていきましょう!

臨床に活かせる解剖学を体験しながら学び、さらには関節・筋の検査方法も学ぶには...

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7. 参考文献

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