みなさんこんにちは。作業療法士の仲田です。
臨床で先輩から「この患者さん、もう少し体力を上げておいて」と言われたとき、あなたは何をイメージしますか?
多くの理学療法士・作業療法士が、なんとなく「有酸素運動=持久力トレーニング」を思い浮かべているかもしれません。しかし、リハビリテーションにおける「体力」は、本来もう少し広い概念です。
今回は、Zoomのナイトセミナー「OTしゃべり場」で実際に出てきた会話をもとに、一般的な「体力」のとらえ方を整理してお伝えします。
「体力を上げておいて」と言われたら…あなたならどうする?
ここからは、ある受講生と私のやり取りを、イメージしやすいようにLINE風の会話形式でご紹介します。臨床でのモヤモヤを、自分ごととして考えながら読んでみてください。





















会話から整理する「体力」の意味|持久力だけでは不十分?
会話の中でも触れたように、現場で「体力を上げてほしい」と言うとき、多くの場合は持久力(有酸素能力)を指していることが多いです。
例えば、次のような場面を思い浮かべてみてください。
- 歩行距離を伸ばしたいとき
- 座位保持時間を延ばしたいとき
- 一日の活動量を増やしたいとき
これらはどれも、長く動き続けるための「持久力」が大きく関わります。そのため、どうしても「体力=持久力」というイメージが先行しがちです。
しかし、本来の「体力」はそれだけではありません。筋力・バランス・柔軟性なども含めた、より包括的な概念です。
「筋力・バランス・柔軟性」も体力の一部
患者さんにとっての「動きやすさ」「生活しやすさ」を考えるとき、以下の要素は切り離せません。
- 筋力:必要な力を発揮できるか
- バランス:姿勢を保ち、転倒を防げるか
- 柔軟性:関節可動域が十分か、動きに制限がないか
つまり、リハビリテーションの文脈で「体力を上げる」と言うとき、本来は
持久力 + 筋力 + バランス + 柔軟性
といった複数の要素をバランスよく高めることが望ましいと言えます。
それでも「体力=持久力」と言われがちな理由
ではなぜ、現場では筋力・バランス・柔軟性ではなく、まず「体力=持久力」と表現されやすいのでしょうか。
- 筋力低下には「筋力強化」、バランスには「バランストレーニング」、柔軟性には「ストレッチ」など、固有名詞で表現されることが多い
- 一方で、全身的な疲れやすさ、活動量の低下などには、包括的に「体力がない」「体力をつける」と表現しやすい
このような背景から、「筋力やバランス、柔軟性は直接その名称で伝えられやすく、残った『持久力』が『体力』という言葉でまとめて表現される」という状況が起こっています。
臨床での「体力アップ」をもう一段深く考えるために
では、明日からの臨床で「体力を上げておいて」と言われたとき、どのように考えればよいでしょうか。
- その先生(先輩・主治医など)が何をイメージして「体力」と言っているかを確認する
- 患者さんの現状評価から、持久力だけでなく筋力・バランス・柔軟性も整理する
- 「今回は持久力メインで」「今回は筋力と持久力の両方を」など、自分の頭の中で要素を分けて計画する
このように整理しておくと、プログラム立案やカンファレンスでの説明が一段とクリアになります。また、患者さんやご家族に説明するときも、「どの体力をどう高めていくのか」を具体的に伝えられるようになります。
まとめ|「体力」という言葉に振り回されないために
最後に、今回のポイントを整理します。
- 1:臨床では「体力」という言葉を使う人が多い
- 2:その「体力」という単語は、実際には持久力を指していることがほとんど
- 3:本来の体力は、持久力だけでなく「筋力・バランス・柔軟性」も含めて考えた方がよい
「体力をつけましょう」という一言の裏には、どの要素を・どの程度・どの順番で高めていくのかという、セラピストの判断が必ず隠れています。
この視点を持っておくことで、患者さんの評価や訓練プログラムの立案が、より論理的で説得力のあるものになっていきます。
いかがだったでしょうか。少しでも視野が広がり、日々のリハビリテーションや患者指導の一助となれば幸いです。
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