科学的視点でつくる「通いたくなる」デイサービス 〜自己決定理論と3つの工夫〜

「通うのが楽しみ!」と言われるデイサービスの作り方〜3つのメカニズムと自立支援〜

皆さんこんにちは。作業療法士の内山です。

今回は、利用者さんから「通うのが楽しみ!」と言っていただけるデイサービス作りの工夫について、作業療法と行動科学の視点を交えて考えていきたいと思います。よろしくお願いします。

「楽しみ」が生まれるメカニズムを理解する

デイサービスに通うことが「楽しみ」になる。これは単なる感情の話ではなく、利用者の生活の質(QOL)や健康維持に関わる重要な要素です。多くの研究において、意味のある活動への参加やポジティブな感情は、心身機能の維持や主観的健康感の向上に関連しうることが示唆されています。

では、この「楽しみ」はどのように醸成されるのでしょうか。

内山は、デイサービスにおける「楽しみ」の構成要素を、モチベーション研究で知られる「自己決定理論(SDT)」の枠組み(自律性・有能感・関係性)とも通じる、以下の3つの要素で整理しています。

  • 1. 期待感(未来志向):「今日はどんなことをするのだろう」というワクワク感。
  • 2. 達成感(有能感):何かができた、役に立てたという実感が自己効力感を高める。
  • 3. つながり感(関係性):他者との交流やコミュニティへの帰属意識による「居場所」の実感。

これら3つの要素が相互に作用することで、内発的な動機づけが高まり、「通うのが楽しみ」という状態が作られやすくなると考えられます。

一人ひとりの「好き」を見つける〜生きがい発掘の実践

「楽しみ」を生み出すための第一歩は、利用者さん一人ひとりの「意味のある作業」を見つけることです。これまでの人生歴、興味、価値観を丁寧に聴取し、理解することが、クライエント中心の実践(Client-Centered Practice)の出発点となります。

内山のデイサービスでは、「生きがい発掘シート」を独自に作成し、その人の背景を深く理解するよう努めています。

事例:元大工の80代男性

この方は元大工さんで、物作りがアイデンティティの一部でした。しかし、脳梗塞後遺症により右手の巧緻性が低下し、当初は「もう何もできない」と意欲が低下していました。
しかし、聴取を通じて「また何か作りたい」という思いがあることが分かり、右手でも可能な木工作業(簡単な紙やすりがけ等)を提案しました。

段階的に作業レベルを調整し、完成した小物入れを見た時の誇らしげな表情は忘れられません。今では「また作りたい」と来所を楽しみにされており、役割の再獲得が自尊感情の向上に寄与した一例です。

事例:元小学校教師の70代女性

人に教えることが好きだったこの方に、若いスタッフへ折り紙を教える役割をお願いしました。「先生」と呼ばれることでかつての自分を取り戻し、自信を回復されていきました。

「選択」と「自己決定」を大切にする環境作り

デイサービスが楽しい場所になるためには、利用者さん自身の「自律性(Autonomy)」が尊重される環境が重要です。

一方的にプログラムを提供するのではなく、利用者さんが主体的に活動を選べるようにします。内山のデイサービスでは、役割活動を選択制にしています。「今日は何をしましょうか?」と問いかけ、自分で決めるプロセス自体を大切にしています。

  • 小さな選択の積み重ね:「味噌汁の具は何がいいですか?」「どこから拭き始めますか?」など、活動内でも自己決定の機会を設けます。
  • 「やらない」という選択:体調や気分に合わせて「休憩する」という選択も、立派な自己決定として尊重します。

長年の介護生活で受動的になってしまった方にも、まずは2択から提案するなど、段階的に「選ぶ」体験を支援しています。

「できた!」を積み重ねる〜成功体験のデザイン

心身機能の低下により「できないこと」が増えがちな高齢者にとって、「できた」という体験(有能感の充足)は自信回復の鍵となります。

重要なのは、スモールステップによるレベル設定です。「少し頑張れば達成できる」課題を設定し、成功体験を積み重ねます。例えば、歩行に不安のある方なら、まずは5メートルから始め、徐々に距離を延ばしていきます。

ポイントは「フィードバック」と「社会的承認」です。

  • できた事実を具体的に言語化してフィードバックする。
  • 測定結果をグラフ化して変化を可視化する。
  • 利用者さん同士で称賛し合い、コミュニティ全体で喜びを共有する。

「つながり」を育む空間と時間のデザイン

温かい人間関係(関係性)は、通所継続や精神的健康を支える重要な因子です。内山のデイサービスでは、社会的な交流を促進するために以下のような工夫を行っています。

  • 席配置の工夫:固定せず、活動内容や相性に合わせて柔軟に変更し、交流の機会を作る。
  • 協働作業:洗濯物干しや食器洗いなどを分担し、「一緒にやり遂げた」という連帯感を作る。
  • おしゃべり時間:休憩時間にゆったり交流できる余白を設ける。

ある90代男性は、若い利用者のサポート役(先輩役)をお願いしたことで、「ここに来るとみんなが待っていてくれる」と話されるようになりました。社会的な役割と居場所があることが、デイサービスの価値を高めます。

「いつもと違う」を楽しむ〜季節感とイベントの工夫

「いつもの安心感」と「いつもと違うワクワク感」のバランスが重要です。季節行事は単なるレクリエーションではなく、楽しみながら行う機能訓練としての側面も持たせています。

  • スイカ割り:立位バランス保持や空間認識の要素を含む活動として。
  • 餅つき:上肢筋力や協調運動を促す活動として。
  • 壁画作り:手指機能訓練と、共同作業による達成感を促す活動として。

これらは臨床的な工夫の一環ですが、楽しみながら身体を動かすことは、結果として活動量の増加につながりやすいメリットがあります。

職員の笑顔とチームワークが生み出す雰囲気

職員の精神状態やチームワークは、ケアの質や利用者満足度に関連します。

  • ポジティブなフィードバック:利用者の「できたこと」や「笑顔」を職員間で共有する。
  • 感謝の文化:職員同士で「ありがとう」と声を掛け合い、心理的安全性を高める。
  • 学びと成長:勉強会などを通じて専門性を高め、自信を持ってケアにあたる。

家族との連携が生む安心感と信頼

家族との信頼関係構築も、利用者の安定した通所を支える基盤です。

  • 情報の可視化:連絡帳や送迎時の報告に加え、定期的に体力測定結果などを提示する。
  • 在宅生活への汎化:デイサービスでの成果を自宅でどう活かすか、具体的な介助方法などを共有する。

利用者さん、家族、そして職員が三位一体となることで、安心感のある支援体制が構築されます。

まとめ

  1. 「楽しみ」の構造:自己決定理論とも通じる「期待感・達成感・つながり感」を育む視点が重要。
  2. 個と環境へのアプローチ:個々の「意味のある作業」を見つけ、自己決定できる環境と成功体験をデザインする。
  3. 関係性の構築:季節感のある活動や交流、職員・家族との信頼関係が、利用者の意欲を支える土台となる。

 

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