デイサービスで「健康寿命」をどう延ばす? OTが実践する4つの戦略と症例

デイサービスで 「健康寿命」をどう延ばす? OTが実践する 4つの戦略と症例

この記事の結論(3行まとめ)

  • 健康寿命延伸には「身体・認知・社会参加・生活習慣管理」の4方向からのアプローチが必須である
  • 単なる訓練ではなく「役割活動」を通じた成功体験が、利用者の意欲と機能向上を引き出す
  • PDCAによるデータ測定と家族・地域を巻き込んだ「持続可能な支援」が、真の自立につながる

皆さんこんにちは。作業療法士の内山です。
今回は、デイサービスにおける健康寿命延伸に向けた取り組みに焦点を当てて考えていきたいと思います。よろしくお願いします。

健康寿命とは何か?デイサービスが果たすべき役割

健康寿命とは、心身ともに自立し、健康的に生活できる期間のことを指します。

日本人の平均寿命は男性が約81歳、女性が約87歳ですが、健康寿命は男性が約72歳、女性が約75歳となっており、平均寿命と健康寿命の間には約10年の差があります。この10年間は、何らかの介護や支援が必要な期間ということになります。

この差を縮め、できるだけ長く健康的に自立した生活を送ることができるようにすることが、超高齢社会を迎えた日本における重要な課題です。

そして、この健康寿命の延伸において、デイサービスが果たすべき役割は非常に大きいと内山は考えています。

なぜなら、デイサービスは要支援・要介護認定を受けた方々が定期的に通う場所であり、まさに健康寿命の維持・延伸が必要な方々と接する最前線だからです。ここでの取り組みが、利用者さんの健康寿命を左右すると言っても過言ではありません。

デイサービスが果たすべき4つの役割

  • 身体機能の維持・向上
  • 認知機能の維持・活性化
  • 社会参加の促進
  • 生活習慣病の予防と管理

これらを総合的に提供することで、利用者さんの健康寿命を延ばすことができるのです。

身体機能の維持・向上〜動ける体を保つための実践的アプローチ

健康寿命を延ばすための第一歩は、身体機能の維持・向上です。歩ける、立てる、手を使える、といった基本的な動作能力を保つことが、自立した生活の基盤となります。

内山のデイサービスでは、身体機能の維持・向上のために「役割活動」を中心としたアプローチを実践しています。
従来のリハビリのように、ただ筋力トレーニングや歩行練習を行うのではなく、日常生活に即した活動を通じて、自然に身体機能を鍛えることを重視しています。

【事例】80代男性:役割が身体を変えた

ここで、ある利用者さんの事例をご紹介します。
この方は脊柱管狭窄症による腰痛があり、長時間の立位や歩行が困難な状態でした。しかし、「お墓参りに行きたい」「孫と散歩したい」という強い希望を持っていました。

この方に対して、まず体幹の柔軟性を高めるための個別機能訓練を実施しました。それと並行して、以下の役割活動を提供しました。

  • 洗濯物干し
  • お茶入れ(立位で実施)
  • 机拭き

これらの活動は、いずれも体幹を伸展させる動作を含んでおり、腰痛の軽減に効果的です。

さらに重要なのは、これらの役割活動を行うことで、利用者さん自身が「誰かの役に立っている」という実感を得られることです。この実感が、活動への意欲を高め、結果として身体機能の向上につながるのです。

6ヶ月間の結果

腰痛が軽減し、連続して20分程度歩けるようになりました。そして念願だったお墓参りを実現することができました。この時の利用者さんの嬉しそうな表情は、今でも忘れることができません。

また、別の90代の女性利用者さんは、「もう役に立てない」と意欲が低下していましたが、他の利用者さんのサポート役をお願いしたところ、自己価値を再発見し、結果として下肢筋力と歩行の安定性が向上しました。

このように、身体機能の維持・向上は、単に筋力トレーニングを行うだけではなく、生活に意味のある活動を通じて達成できるのです。

認知機能の維持・活性化〜脳も体と同じように鍛える

健康寿命を延ばすためには、身体機能だけでなく認知機能の維持も欠かせません。

内山のデイサービスでは、認知機能を「評価」するだけでなく、日常の活動の中で自然に「賦活」することを重視しています。

例えば、料理活動は認知機能のトレーニングとして非常に効果的です。

  • レシピを確認する(記憶機能)
  • 手順を考える(実行機能)
  • 複数の作業を同時進行する(注意の分配)
  • 材料の位置を把握する(視空間認知)

このように、多様な認知機能を総合的に使います。

【事例】左半側空間無視へのアプローチ

70代の女性利用者さんは、左半側空間無視と注意の分配障害がありました。
この方に対して、週1回の味噌汁作りを継続的に実施しました。調理道具を左側に配置し、作業療法士も左側に立ってサポートすることで、左側への注意を促す訓練としました。

半年間継続した結果、左側への注意が向きやすくなり、火を使わない調理であれば自宅で再開できるレベルまで改善しました。

また、役割活動(食器洗いなど)を通じて生まれる他者との会話や協力体験といった「社会的な刺激」も、脳の活性化に大きく寄与します。

社会参加の促進〜つながりが健康寿命を延ばす

健康寿命延伸において、見落とされがちですが極めて重要なのが「社会参加」です。
人とのつながり、役割を持つこと、社会の一員であることの実感が、心身の健康に大きく影響することが明らかになっています。

内山は、デイサービスの最終目的地は「社会参加・コミュニティ活動のステージまで利用者さんが階段を上っていけること」だと考えています。

「生きがい発掘シート」の活用

社会参加を促進するために、内山のデイサービスでは「生きがい発掘シート」を独自に作成し、その人の生き様や個性を重要視しています。

  • 元教師の方 → 連絡帳配りや名札準備
  • 料理が得意だった方 → 味噌汁作り

その人の過去の仕事や趣味といった背景情報をもとに役割を設定することで、利用者さんは自分の強みを活かせ、「自己効力感」が高まります。

社会参加は、単に外出することだけではありません。デイサービス内での小さな役割や、多世代との交流など、それぞれの利用者さんに合った形を見つけ支援することが重要です。

生活習慣病の予防と管理〜デイサービスでできる健康管理

高血圧、糖尿病などの生活習慣病は、健康寿命を短縮させる大きな要因となります。
ここでは、看護師だけでなく作業療法士も重要な役割を果たします。

  • 運動習慣の定着:マシン運動や役割活動を組み合わせ、無理なく継続できるプログラムを提供。
  • 栄養管理:管理栄養士と連携し、食事や料理活動を通じて食習慣を改善。
  • 早期発見:日々の関わりの中から、小さな体調変化やサイン(血圧変動、動作の緩慢さ等)を見逃さない。

データに基づく効果測定と改善〜PDCAサイクルの実践

取り組みをやりっぱなしにせず、客観的なデータに基づいて改善し続けること(PDCA)が不可欠です。

  • Plan(計画):「利用者管理表」で生活目標や役割を共有。
  • Do(実行):個別機能訓練、役割活動などの実施。
  • Check(評価):3ヶ月に1度の体力測定(握力、片脚立位、TUG)やADL評価(FIM等)。
  • Act(改善):評価に基づきプログラムを見直し。目標達成時は次のステップへ。

これらのデータは、職員間での共有はもちろん、ケアマネジャーや行政への報告、家族への説明においても強力なエビデンスとなります。

持続可能な健康寿命延伸のために〜利用者さんと共に歩む

健康寿命延伸に向けた取り組みで最も重要なのは、「持続可能性」です。

そのために重要なのは、利用者さん自身が「できた」という成功体験を積み重ねることです。
「今日は5分長く歩けた」「他の利用者さんを手伝えた」。
そんな日々の小さな達成を称賛することで、継続する意欲が生まれます。

内山のデイサービスでは、「第3の家族」として、利用者さんが最期まで自分らしく過ごせる時間のお手伝いをすることを理念としています。

一人ひとりの利用者さんと丁寧に向き合い、その人の希望や価値観を大切にしながら、健康寿命延伸に向けた支援を続けていくこと。
これが、デイサービスで働く作業療法士の使命だと、内山は考えています。

まとめ

  • 健康寿命延伸のためには、身体機能、認知機能、社会参加、生活習慣病予防の4つの側面からの総合的なアプローチが必要である。
  • 役割活動を中心とした生活に根ざした支援により、利用者さんの意欲を引き出しながら機能維持・向上を図ることができる。
  • 客観的データに基づくPDCAサイクルの実践と、利用者さん・家族・職員が一体となった持続可能な取り組みが、真の健康寿命延伸につながる。

 

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