「軟骨がすり減って痛い」は本当ですか? 膝関節の侵害受容性疼痛と組織評価

こんにちは、理学療法士の赤羽です。

変形性膝関節症や半月板損傷など膝痛を誘発する病態はいくつもあります。

外傷であれば、ある程度問題となる組織は明確になりやすいですが、例えば変形性膝関節症では「軟骨がすり減っているから痛いんですよ。」などと軟骨から侵害受容入力が起こっていると解釈できる説明がされることが多くあります。

しかし、正常な関節では、関節軟骨はほとんど神経支配がなく、主要な痛みの発生源にはなりにくいとされています。ただし、変形や損傷が進行すると、軟骨や軟骨下骨への神経線維侵入・感作が生じ、痛みに関与しうることも報告されています。

今回は、侵害受容性疼痛に焦点をあてて侵害受容入力が起こり得る組織を整理していきます。

  • 正常な関節軟骨は主要な痛みの発生源になりにくいが、病態進行により神経侵入が生じる可能性もある
  • 膝痛の評価は、滑膜や脂肪体など侵害受容入力が起こり得る「周囲の組織」の特定が重要
  • 動きの方向だけでなく、荷重・非荷重などの負荷条件を含めた多角的な推論が臨床の鍵となる

侵害受容性疼痛とは

侵害受容性疼痛とは、
侵害受容器(nociceptor)への入力によって生じる痛みです。

この侵害受容器は、自由神経終末として滑膜、関節包、靭帯、半月板、軟骨下骨、筋・筋膜などに存在します。

つまり、侵害受容器が存在するため、条件が揃えば侵害受容入力源となり得る組織となります。

膝関節周囲の侵害受容入力が起こり得る組織

上記の一例として、以下の組織があげられます。

  • 膝蓋下脂肪体
  • 膝蓋腱・膝蓋支帯
  • 半月板
  • 滑膜・関節包
  • 側副靭帯
  • 腸脛靭帯
  • 軟骨下骨
  • 筋・筋膜(鵞足・膝窩筋・半膜様筋など)

臨床応用:どの組織で入力が起こっているか?

これらの組織は圧痛や整形外科テスト、他動や自動運動での違い、屈曲や伸展などポジションでの違い、疼痛の示し方や疼痛の表現、動作(動作パターンや荷重・非荷重の違い)などを参考にして、「どの組織で侵害受容入力がおこっているのか」を考えていきます。

【動作方向からの推測例】

  • 屈曲で痛い:大腿四頭筋、膝蓋腱・膝蓋支帯、半月板、滑膜・関節包など?
  • 伸展で痛い:膝蓋下脂肪体、半月板、ハムストリングス、鵞足、腸脛靭帯、側副靭帯、滑膜・関節包?
  • Activeや抵抗運動など筋収縮でより痛い:筋・筋膜?

などある程度推測しながら局所評価を行い総合的に考えて、どの組織が問題となっているのかを推測していきます。

それに加えて重要な点として、「動きの方向」だけで決めないことです。

例えば屈曲で痛い場合でも、荷重下で痛いのか・非荷重で痛いのか・反復で増悪するのか・最終域でのみ痛いのか・途中域で痛いのかでも疑う組織は変わります。

荷重 × 屈曲で痛い

荷重下屈曲での痛みは、

  • 膝蓋大腿関節圧縮増大
  • 軟骨下骨ストレス
  • 半月板後角への圧縮
  • 滑膜の挟み込み

などを考えます。

この場合、単に「屈曲で痛い」ではなく、圧縮ストレスが増えているかどうかがポイントの一つになります。

非荷重 × 屈曲で痛い

非荷重での屈曲痛は、

  • 滑膜炎症
  • 関節包緊張
  • 半月板可動域制限
  • 筋短縮

などが候補になります。ここでは圧縮よりも伸張ストレスや炎症反応が関与している可能性があります。

抵抗収縮で増悪する

等尺性収縮で痛みが再現される場合、「筋そのものの侵害受容入力」「筋収縮による関節圧縮増加」のどちらか、または両方が考えられます。

ここで、「他動では痛くないが自動で痛いのか」などを確認するのがポイントの一つです。

組織の複合入力を考慮する

これらはそれぞれ単一の組織のみが原因とは限りません。

臨床でよくあるのは、滑膜+脂肪体、半月板+軟骨下骨、筋+関節包のような複合入力です。
一つの筋活動変化が、複数組織へのメカニカルストレスを増やすことがあります。

【複合入力の連鎖例】

大腿四頭筋の過活動

膝蓋大腿関節圧縮増大

軟骨下骨ストレス

滑膜炎症

という流れも考えられます。この場合、筋は「原因」でもあり「増悪因子」でもあります。

ちなみに、余談ですが疼痛の要因として神経障害性疼痛など神経由来のものがあります。例えば、伏在神経や脛骨神経、腓骨神経などの疼痛が出現している場合もあります。

まとめ

膝関節の侵害受容性疼痛を考える際には、「どの組織に侵害受容器があるか」だけでなく、「どの動作で」「どの負荷条件で」「どのストレス(圧縮/剪断/伸張)が増えているのか」などを評価することが重要となります。

参考文献

  • McDougall JJ. Arthritis and pain. Neurogenic origin of joint pain. Arthritis Res Ther. 2006;8(6):220.
  • Zeng N, Yan ZP, Chen XY, Ni GX. Infrapatellar Fat Pad and Knee Osteoarthritis. Aging Dis. 2020 Oct 1;11(5):1317-1328.
  • Morgan M, Nazemian V, Harrington K, Ivanusic JJ. Mini review: The role of sensory innervation to subchondral bone in osteoarthritis pain. Front Endocrinol (Lausanne). 2022 Dec 20;13:1047943.

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