こんにちは、内川です。
腹横筋について、みなさんはどのくらいご存じでしょうか?
腹横筋は腹部の最も深層に位置する筋肉で、体幹の安定性を得るのに欠かせない重要な筋肉です。姿勢を楽に保つこと、内臓を支える等の機能もあります。
インナーマッスルの一つとして働く腹横筋ですが、弱くなると姿勢が崩れたり、主に腰部や肩関節、下肢にまで影響を及ぼし痛みを発したりすることがあります。そんな腹横筋ですが、臨床でどのくらい評価していますか?
私自身腹横筋の重要性を知るまでは、腹直筋や腹斜筋などアウターマッスルの評価しか行わず、問題点にすら上がりませんでした。整形外科に勤めている私ですが、今現在はほぼ全員の患者さんに対し、腹横筋の評価を行っています。
いつも見てくださっている皆様も腹横筋の重要性を知り、実際に評価、アプローチを行ってみましょう!
まずは一緒に解剖から確認していきましょう。
目次
1.腹横筋の解剖学と作用
起始:
- 第7~12肋骨の内側面
- 胸腰筋膜
- 腸骨稜の前側3分の2
- 鼠径靭帯の外側3分の2
停止:
- 白線
- 恥骨櫛
支配神経:腸骨下腹神経
作用:
- 腹部内圧を上昇させ体幹の安定性を保つ。
- 同側方向への体幹回旋
- 骨盤後傾
- 骨盤や腰椎部のコントロール
2.腹横筋の評価方法
腹横筋のMMTとしては『強制呼気運動』になりますが、測定には圧力計などが必要になり、実際には困難なことが多いです。そこで腹横筋の作用を考え、筋力の評価や収縮しているのかを確認する方法を記載しました。
呼吸と触診による評価:
- 患者が仰向けで膝を曲げた状態で、腹部を軽く押しながら深呼吸
- 呼気時に腹部が内側に引き込まれるかどうかを確認
※腹横筋が適切に機能している場合、指の下で筋収縮が感じられる
筋力評価:
- 患者に背臥位で寝てもらう
- 腹部を収縮し、腰椎をベッドにつけるようにする
- 2の状態で両脚を持ち上げてもらい、腰部の安定性を観察する
※腰が浮いてしまう場合、腹横筋の筋力不足が考えられる
※わかりにくい場合は腰椎の下に手を入れて確認してください
3.腹横筋の筋力強化方法
ドローイン(腹部引き込み):
- 仰向けに寝て膝を立てる
- 手をお腹に置き、深呼吸をする
- 息を吐きながら、お腹を内側に引き込む
- 背中を床に押し付けるように意識させる
- 10秒間キープし、ゆっくりと元に戻すことを10回
4.姿勢保持や動きと腹横筋の関係
- 腹横筋は胸腰筋膜に起始を持ち、両側の収縮が起こることで腹圧は上昇し、胸腰筋膜と前方の筋膜が緊張します。腹圧を上昇させることで腰椎の剛性を向上させます。腰椎骨盤が安定することで、体幹全体の安定性が向上し、運動開始時から四肢の動きが効率的に行えます。
- 腹横筋は体幹に対して真横に走行し、『コルセット』のように体幹を支持します。
- 腹横筋は腹斜筋、腹直筋、多裂筋、骨盤底筋群などと協働し、効率的な動作や姿勢維持をサポートします。そのため、腹横筋だけでなく、周囲筋の筋力評価なども重要となります。
- 腹腔内圧を高めることにより排便や分娩にも関与します。
5.臨床ちょこっとメモ
- 肋骨の下方には内側から横隔膜も付着します。腹横筋が弱くなったり硬くなったりすると、一緒になって横隔膜もうまく働かなくなることもあり、呼吸にも影響を及ぼします。
- 腹横筋は『コルセット』の役割をしているので、腰痛持ちの人やマックスベルトをすると楽になると言う人は筋力低下が起きている可能性があります。
- 個人的にはよくセラピストに方が言う、「体幹が弱い」とは腹横筋を示していることが多いと感じています。
6.まとめ
- 腹横筋の解剖と機能:解剖学的には、腹横筋は第7〜12肋骨の内側面、胸腰筋膜、腸骨稜、鼠径靭帯から起始し、白線と恥骨櫛に停止します。腹横筋は体幹の安定性を保つ働きを持ちます。
- 評価と治療:評価方法としては、呼吸と触診による評価や筋力評価があり、これにより腹横筋の機能を確認できます。また、ドローインというエクササイズで腹横筋を強化することができます。
- 腹横筋は体幹の安定性を保つために重要で、他の体幹筋群と協働して効率的な動作や姿勢維持をサポートします。臨床的には、腹横筋が弱くなると姿勢が崩れ、腰痛などを引き起こし、呼吸に影響を及ぼすこともあるため、その評価と強化は重要です。
今回記載したものはあくまでも筋単体のことです。実際の治療においては腹横筋の周囲にいくつもの筋肉が存在しており、深さも考えなければなりません。周囲に何があるかイメージできていますか?不安な方はぜひ一緒に勉強しませんか?
参考文献
- 基礎運動学第6版補訂
- 脊柱理学療法マネジメント
- 筋骨格系のキネシオロジー
- 新徒手筋力検査法 原著第9版
- 病態動画から学ぶ臨床整形外科的テスト
臨床に活かせる解剖学を体験しながら学び、さらには関節・筋の検査方法も学ぶには...
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