こんにちは、理学療法士の嵩里です。今回は、病棟でのトイレ動作自立の判断に迷うセラピスト向けに、文献を参考にしつつ自立判断の基準についてお伝えします。
病棟での進め方
1. 病棟への伝達
- トイレ誘導の実施を病棟と相談
- プライマリーNsやCWとも連携、バルーンが留置されている場合は抜去できるかも相談
- 介助方法、環境設定、認知機能や高次脳機能障害の情報共有
- 段階的なアプローチ:見守りから開始、リハビリ以外の病棟生活でもトイレ動作が安全に行えているかを評価
- 共有方法:カンファレンスや実際の介助場面のデモンストレーション
2. 病棟からの情報収集
病棟のADLを変更したら終了、ではなく変更した後も患者さんが病棟でもトイレ動作を行えているかを聴取します。
- 朝方・夜間の介助量:朝方や夜間は寝起きで身体が思うように動かない方や、眠剤を服用されている方に注意
- 指示理解のムラ:認知機能の低下や高次脳機能障害がある方は指示の仕方で動作や介助量が変化する場合もあります。理解しやすい口頭指示があればその内容も伝えましょう。
- 病棟のマンパワー(トイレ回数と介助量)
- 介助方法の再確認と必要に応じたデモンストレーション:私も経験がありますが、セラピストが伝えた介助方法とは全く異なる方法でトイレ介助を行なっているために介助量が増えていることも多々あります。
自立に変更するかの判断
トイレ動作が定着すると、病棟から自立に変更できないかと依頼が来ることがあります。何となくフラフラしてる、認知面で心配等の理由で自立に変更するか迷う経験されたセラピストも多いのではないでしょうか?トイレ動作は身体機能と認知機能のどちらも必要な動作になります。他職種の意見に加えて客観的な評価を行うことでADL変更の判断材料にしていきましょう。以下は身体機能と認知機能に関する評価スケールと参考文献になります。
1. Berg Balance Scale (BBS)
トイレ動作は移乗・起立・下衣操作を行うための上下運動・下方リーチといった複雑な工程が必要です。そのため身体を制御するためにバランス面の評価が重要となります。評価スケールとしてはBBSが良く用いられています。
米持利枝らの研究では
- トイレ動作に必要な複雑な工程のバランス評価
- 自立群の目安:平均40点
- 重要項目(4点目安):着座、移乗、閉眼立位、立ち上がり、立位保持
という結果になっています。
2. Functional Independence Measure (FIM)
法山徹ら、岡本 伸弘らの研究をまとめると
- 運動項目:53.5〜67.6点
- 認知項目:28〜29点
- トイレ移乗:5〜6.2点
- 問題解決:4.5〜5.8点
となります。
トイレ移乗5〜6点、問題解決5点が自立となる基準といえそうです。
病棟の評価とセラピストのBBS・FIMの評価を踏まえて、トイレ動作自立と判断できるかを検討していきましょう。病棟だけでなく自宅でのトイレ動作が可能となるかの予後予想や判断材料としてもBBSや FIMの点数は有効といえそうです。
まとめ
- トイレ動作自立の判断には病棟の評価が不可欠
- 客観的評価スケールと病棟評価を総合的に判断
- 評価スケールは自宅退院の予後予測にも活用可能
適切な評価と他職種連携により、患者さんの安全で自立したトイレ動作を支援しましょう。
参考文献
- 米持利枝「脳卒中片麻痺患者におけるトイレ動作の自立に対する立位バランスの影響」
- 川村淳一郎「脳卒中片麻患者におけるトイレ動作・トイレ移乗と Berg Balance Scaleの関連」
- 法山 徹「回復期リハビリテーション病棟の脳卒中片麻痺患者における退院時排泄動作自立の予測」