【理学療法士・作業療法士向け】鎖骨下筋の臨床的意義|明日から使える解剖・評価・アプローチ法を徹底解説

【PT・OT必見】鎖骨下筋の評価、できていますか? 触診のコツから臨床応用まで解説

こんにちは、理学療法士の内川です。

臨床現場で、こんな疑問や悩みを感じたことはありませんか?

  • 「鎖骨下筋って、解剖学の教科書で見たきりかも…」
  • 「小さい筋肉だけど、臨床でどんな意味があるの?」
  • 「肩や胸郭の安定に関わるって聞くけど、いまいち実感できない…」

鎖骨下筋は目立たない小さな筋肉ですが、胸鎖関節の安定化、呼吸補助、神経血管の保護など、非常に重要な役割を担っています。

スポーツ選手のパフォーマンス低下や、外傷後の機能不全の背景に、この鎖骨下筋が隠れているケースも少なくありません。

この記事を読めば、鎖骨下筋の解剖から評価、アプローチまでを体系的に理解し、あなたの臨床の引き出しを一つ増やすことができます。

1.鎖骨下筋の解剖と作用

鎖骨下筋の解剖学的イラスト

まずは、基本的な解剖学のおさらいです。

  • 起始:第1肋骨内側端とその肋軟骨の上縁
  • 停止:鎖骨下面外側1/3の鎖骨下溝
  • 支配神経:鎖骨下筋神経(C5〜C6)
  • 作用
    • 鎖骨の下制と内側牽引
    • 胸鎖関節の安定化(特に前後方向)
    • 第1肋骨の挙上(深呼吸時の補助)
    • 鎖骨下動静脈・腕神経叢の保護

特徴:長さ5〜6cmほどの小さな紡錘状筋です。重要なのは、鎖骨下動静脈や腕神経叢といった神経血管束のすぐ上を走行する点で、解剖学的に非常にデリケートな位置関係にあります。

2.鎖骨下筋の臨床評価

触診方法

鎖骨下筋は、大胸筋の深層、鎖骨の真下に位置するため、直接的な触知は困難です。しかし、筋の収縮を捉えることは可能です。

鎖骨下筋の触診方法
  1. 患者を座位または仰臥位にします。
  2. セラピストは、鎖骨内側から鎖骨の裏側へ指を滑り込ませるようにコンタクトします。
  3. その状態で、患者に肩甲帯を軽く下制・内転してもらうと、指先に筋の収縮を触知できます。

3.鎖骨下筋へのアプローチ方法

リリース

鎖骨下筋の過緊張は、胸郭の可動性低下や神経血管へのストレスにつながるため、適切にリリースすることが重要です。

触診と同じ肢位で、第1肋骨と鎖骨の間に指を優しく入れます。その状態を保持したまま、患者にゆっくりとした深呼吸を数回繰り返してもらいます。呼気時に筋が弛緩するのを感じながら、圧を調整します。

注意点:すぐ深層に神経や血管があるため、強い圧迫や摩擦は絶対に避けてください。

4.鎖骨下筋の機能低下がもたらす影響

この小さな筋肉が機能不全に陥ると、様々な臨床症状を引き起こす可能性があります。

  • 胸鎖関節の不安定性による動作時の動揺や疼痛
  • 僧帽筋上部線維や肩甲挙筋など、アウターマッスルの代償的な過緊張
  • 肩甲帯の過剰な挙上や前方突出といった運動パターンの異常
  • 深呼吸などにおける胸郭上部の可動性制限
  • 肋鎖間隙の狭小化による胸郭出口症候群様症状の誘発・悪化
  • 鎖骨骨折や胸鎖関節脱臼後の短縮・癒着による肩関節の可動域制限

5.【重要】臨床ちょこっとメモ

臨床で特に意識したいポイントをまとめました。

  • 鎖骨下筋の過緊張は、肋鎖間隙を狭小化させ、神経血管を圧迫する直接的な要因になります。
  • 外傷後は、安静と早期の他動的な可動域訓練のバランスが、癒着を防ぐ上で非常に重要です。
  • 投球・ラケット競技やウエイトリフティングでは、鎖骨の安定性を確保することが外傷予防に繋がります。
  • 評価や治療の際は、常に神経血管の位置をイメージし、強すぎる刺激は避けることを徹底しましょう。

6.まとめ:鎖骨下筋のポイント整理

最後に、本記事の重要ポイントをまとめます。

① 鎖骨下筋の解剖・特徴

  • 起始:第1肋骨内側端+肋軟骨上縁
  • 停止:鎖骨下面外側1/3(鎖骨下溝)
  • 作用:鎖骨の下制・内側牽引、胸鎖関節の安定化、呼吸補助、神経血管の保護
  • 特徴:神経血管束と近接しており、解剖学的に重要

② 評価とアプローチ

  • 評価:座位または仰臥位で鎖骨内側の裏に指を入れ、下制・内転動作で収縮を確認
  • アプローチ:触診部位で深呼吸を繰り返すことでリリース。過度な圧迫は厳禁。

③ 機能低下の影響と臨床的注意点

  • 影響:胸鎖関節不安定性、代償的過緊張、肩甲帯運動異常、胸郭出口症候群様症状など
  • 臨床メモ:過緊張は神経血管圧迫のリスク。スポーツ選手の外傷予防にも重要。

いかがでしたでしょうか。

今回解説したのは、あくまで鎖骨下筋単体の話です。実際の臨床では、周囲の筋や軟部組織、関節との関連性を常に考慮する必要があります。

「周囲に何があるか、もっと立体的にイメージできるようになりたい…」
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7.参考文献

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