肘外側痛の正体は腕橈関節? 荷重時痛を見抜く解剖・機能と評価法

肘外側痛の正体は腕橈関節? 荷重時痛を見抜く解剖・機能と評価法

この記事の結論(3行まとめ)

  • 腕橈関節は「屈伸+回旋」に加え、伸展位における「荷重伝達」の大部分を担う。
  • 肘伸展位での軸圧負荷の約60%(57%程度)が腕橈関節にかかるという報告があり、プッシュ動作痛の要因となりやすい。
  • 外側支持機構(LCL complex)の中でもLUCLは後外側回旋不安定性(PLRI)の制御に重要である。

こんにちは、理学療法士の内川です。

「肘の痛みがあるけど、屈伸はそこまで悪くない…」
「前腕回旋で痛みが出るのに、腕尺関節は問題なさそう」
「プッシュ動作や支持動作で肘外側が痛い理由がわからない」

このような症例では、腕橈関節が関与している可能性を考慮する必要があります。

腕橈関節は、屈伸・回旋のどちらにも関与し、さらに上肢荷重時の力を受け止める上で重要な役割を担っています。

今回は、腕橈関節の解剖・機能・安定性・臨床での着目点を、文献的知見を交えて整理していきましょう。

1.腕橈関節の解剖学的特徴

[Image of humeroradial joint anatomy] 腕橈関節の解剖図1 腕橈関節の解剖図2

関節構成

  • 上腕骨小頭
  • 橈骨頭

上腕骨小頭の球状構造と、橈骨頭の凹面が接触して関節を形成します。

関節の性質:制限された球関節

  • 腕尺関節と同じ関節包内に存在
  • 形態的には球関節(ball-and-socket)の形状
  • ただし、隣接する尺骨との結合により多軸性の動き(特に内外転)は制限される
  • 屈伸時には滑り+転がり運動を伴う

つまり、形状は球関節ですが、機能的には「屈伸に追従しながら、回旋を許容する」という特殊な動きを強いられる関節と言えます。

2.腕橈関節の運動と機能

関与する運動

  • 肘関節の屈曲・伸展
  • 前腕の回内・回外
  • 上肢荷重時の圧縮力伝達

荷重伝達の役割

上肢に軸圧がかかる際(プッシュアップ、杖歩行、転倒時の手つきなど)、腕橈関節は重要な荷重伝達機能を担います。

部位荷重分担(肘伸展位)
腕橈関節約57~60%
腕尺関節約40~43%

文献的知見

カダバーを用いた研究(Morrey et al.)において、肘伸展位で軸圧を加えた際、約57.8%の荷重が腕橈関節に加わると報告されています。
このことから、伸展位での荷重時痛は、腕尺関節以上に腕橈関節へのメカニカルストレスを疑う根拠となります。

運動時の特徴

  • 屈伸時:橈骨頭が上腕骨小頭上を転がり+滑走
  • 回内外時:橈骨頭が小頭に接触したまま回転(Spin)

腕橈関節は近位橈尺関節と連動しながら回旋を成立させます。

3.腕橈関節の安定機構

 

① 骨性要素

  • 上腕骨小頭と橈骨頭の適合性
  • 完全なはまり込み(Socket)ではないため、骨性安定性は中等度です。

② 靱帯性安定性(静的安定化機構)

外側側副靱帯複合体(LCL complex) が主に関与します。

靱帯役割
橈側側副靱帯(RCL)内反ストレスへの抵抗
輪状靱帯橈骨頭を保持し、回旋を許容
外側尺側側副靱帯(LUCL)後外側回旋不安定性(PLRI)の制動

特にLUCLは、橈骨頭を後外側からハンモックのように支えており、後外側回旋不安定性(PLRI)を防ぐ上で極めて重要な役割を果たします。

③ 筋による動的安定性

靱帯だけでなく、以下の筋群も動的な安定性に寄与します。

  • 腕橈骨筋:屈曲時の圧縮力による安定化(Compressive stability)
  • 回外筋・伸筋群:動作時の動的制御
  • 上腕二頭筋:回外+荷重時の安定化

4.機能不全と臨床症状

腕橈関節の機能不全で起こりやすい問題

  • 肘外側部痛(Lateral Epicondylalgiaとの鑑別が必要)
  • 荷重位での疼痛(プッシュアップ、立ち上がり、杖歩行)
  • 前腕回旋時の引っかかり感(Clicking / Snapping)
  • 肘外側の不安定感(Giving way)

臨床的な着眼点:PLRIの可能性

いわゆるテニス肘と診断されていても、保存療法に抵抗する場合、軽微な不安定症(PLRIなど)が隠れている場合があります。

  • 椅子から立ち上がる際の手つき
  • ドアを押し開ける動作

これら「荷重+伸展+回外」の要素が重なる動作で不快感やクリック音が生じる場合は、LUCLの機能不全を含めた評価が必要です。

5.臨床ちょこっとメモ

  • 肘外側痛:上顆炎だけでなく、荷重テストを用いた腕橈関節の評価を推奨。
  • 回内外制限:近位橈尺関節とセットで評価する。
  • プッシュ動作痛:伸展位での疼痛は、構造的に腕橈関節へのストレスが高いことを考慮する。
  • 既往歴:転倒歴のある難治性外側痛では、橈骨頭骨折や靱帯損傷の既往を確認する。

6.まとめ

最後に、腕橈関節のポイントを復習しましょう。

① 解剖・特徴(腕橈関節の位置づけ)

  • 関節構成:上腕骨小頭 × 橈骨頭
  • 関節の性質:
    • 形態は球関節だが、機能的には多軸運動が制限されている。
  • 本質的役割:
    • 「屈伸に追従しながら、回旋と荷重を許容する関節」

② 評価とアプローチ(運動・安定機構)

  • 荷重伝達の特徴(肘伸展位):
    • 腕橈関節:約60%(報告により57.8%)
    • 腕尺関節:約40%
    • 伸展位の荷重痛は腕橈関節由来の可能性が高い。
  • 安定機構:
    • 骨性、靱帯性(LCL complex)、筋性(動的)の協調作用。
    • 特にLUCLは後外側への不安定性(PLRI)制御の要となる。

③ 臨床的注意点

  • 鑑別診断:
    • 肘外側痛=テニス肘(上顆炎)と決めつけず、関節性の要因や不安定性を考慮する。
  • 代償の影響:
    • 腕橈関節不全による回旋制限は、手関節・肩関節への負担増大につながる。

 

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