こんにちは、理学療法士の内川です。
「手関節って背屈・掌屈だけ見ればいい?」
「TFCCって何が問題になるの?」
「手関節の痛みが握力や巧緻動作に影響する理由は?」
手関節は”動く関節”であると同時に、前腕から手指へ力を伝える中継点でもあります。
評価が甘いと、肘・肩の代償や握力低下を見逃します。
今回は、手関節の構造・運動・安定機構・臨床像を整理します。
【この記事の要約】
- 手関節は背屈・掌屈だけでなく、前腕から手指へ力を伝える重要な中継点である。
- 橈骨手根関節と手根中央関節の運動分担を理解し、可動性低下の根本原因を見極める必要がある。
- TFCC(三角線維軟骨複合体)などの安定機構の破綻は、関節の不安定性や握力低下に直結する。
目次
- 手関節の構成
- 手関節の運動学
- 安定機構(靱帯・TFCC)
- 機能不全と臨床症状
- 臨床ちょこっとメモ
- まとめ
- 参考文献
1. 手関節の構成
手関節は単一関節ではなく、主に以下の複合体です。

① 橈骨手根関節
構成:
- 橈骨遠位端
- 舟状骨・月状骨(近位手根列)
- 三角骨は橈骨とは直接接触せず、TFCCを介して尺側から関与
主に背屈・掌屈を担う楕円関節
② 手根中央関節
構成:
- 近位手根列: 舟状骨・月状骨・三角骨(+豆状骨)
- 遠位手根列: 大菱形骨・小菱形骨・有頭骨・有鉤骨
背屈・掌屈の可動域増大に重要
③ 遠位橈尺関節(DRUJ)との関係
- 手関節の回内外運動に連動
- TFCC損傷ではDRUJ不安定性も評価必須
2. 手関節の運動学
可動域(参考値)
- 背屈: 60〜80°
- 掌屈: 70〜80°
- 橈屈: 15〜20°
- 尺屈: 30〜35°
運動の分担
- 背屈: 橈骨手根関節の寄与がやや大きいと報告されています。
- 掌屈: 手根中央関節の寄与が相対的に大きいと報告されています。
【Point】
厳密な寄与率は運動方向によって異なりますが、臨床上は「橈骨手根関節と手根中央関節のどちらも大きく寄与しており、おおよそ半々程度で分担している」とイメージしておくと、どちらか一方の可動性低下が全体制限につながることを理解しやすいです。
厳密な寄与率は運動方向によって異なりますが、臨床上は「橈骨手根関節と手根中央関節のどちらも大きく寄与しており、おおよそ半々程度で分担している」とイメージしておくと、どちらか一方の可動性低下が全体制限につながることを理解しやすいです。
3. 安定機構(靱帯・TFCC)
① 靱帯構造
外側(橈側・尺側):
- 橈側側副靱帯
- 尺側側副靱帯
掌側:
- 橈骨舟状骨靱帯
- 橈骨月状骨靱帯
- 尺骨月状骨靱帯
- 尺骨三角骨靱帯
※掌側橈骨手根靱帯群が手関節の主要安定機構です。
背側:
- 背側橈骨手根靱帯(掌側より薄く弱い)
手根骨間靱帯:
- SL靱帯(舟状月状骨間靱帯)
- LT靱帯(月状三角骨間靱帯)
手根骨は不安定な”積み木構造”(インターカルポラル・リング)であり、靱帯破綻=不安定性へ直結します。
② TFCC(三角線維軟骨複合体)
橈骨、尺骨と月状骨三角骨の間に存在します。
機能:
- 遠位橈尺関節(DRUJ)の安定化
- 尺側手関節への荷重伝達
- 前腕回内外の軸の一部
【Point】
TFCCは、DRUJと尺側手関節の安定に必須の組織です。
TFCCは、DRUJと尺側手関節の安定に必須の組織です。
4. 機能不全と臨床症状
よくある問題と特徴的疾患を整理します。
① 橈骨遠位端骨折後拘縮
- 非常に頻度の高い代表的な手関節外傷
- 受傷後、背屈・回外制限が残存しやすい
- 握力低下(健側の60–70%程度になることが多い)
② TFCC損傷
- 尺骨突き上げやフォアアーム回旋負荷にて生じやすい
- 尺側部痛+回内外時痛
- ドアノブ回旋、雑巾絞りで増悪
- DRUJ不安定性を伴うことも多い
5. 臨床ちょこっとメモ
- 手関節の掌背屈に関して、厳密な寄与率は異なりますが、臨床的なイメージとしては「橈骨手根関節と手根中央関節でおおよそ50%ずつ分担して動く」と捉えておくとアセスメントがスムーズです。
- 大菱形骨、小菱形骨、有頭骨、有鉤骨、第2・第3中手骨は靭帯の結合が強く、非常に安定性が高い(動きにくい)「central column」としての役割を持っています。
6. まとめ
① 解剖・特徴
- 関節構成(複合関節)
- 橈骨手根関節: 橈骨遠位端+舟状骨・月状骨(三角骨はTFCCを介して関与)。楕円関節(背屈・掌屈が主)。
- 手根中央関節: 近位手根列+遠位手根列。可動域を増大させる関節。
- 遠位橈尺関節(DRUJ)との連動: 回内外運動と連動。TFCC損傷ではDRUJ評価必須。
- 運動分担
- 背屈:橈骨手根関節の寄与がやや大きい
- 掌屈:手根中央関節の寄与が相対的に大きい
- ※臨床上は「概ね半々で分担」とイメージ
→ どちらかの可動性低下=全体制限
② 評価とアプローチ
- 評価ポイント
- 橈骨手根関節と手根中央関節を分けて考える
- 尺側痛 → 三角線維軟骨複合体(TFCC)を疑う
- 回内外痛があればDRUJも評価
- 握力測定で機能低下を確認
- よくある病態
- 橈骨遠位端骨折後: 代表的な手関節外傷。背屈・回外制限が残りやすい。握力は健側の60〜70%。
- TFCC損傷: 尺側部痛、回内外時痛。ドアノブ・雑巾絞りで増悪。DRUJ不安定性を伴うことあり。
- アプローチの考え方
- 背屈制限 → 手根中央関節の可動性確認
- 尺側痛 → 圧縮負荷を避ける
- 第2・3中手骨+遠位手根列は安定性が高い(central column)
③ 機能低下の影響と臨床的注意点
- 機能低下の影響
- 背屈制限 → プッシュ動作困難
- 掌屈制限 → 体重支持不安定
- TFCC障害 → 尺側荷重痛
- 不安定性 → 握力低下・巧緻動作低下
- 臨床的注意点
- 手関節は「積み木構造」=靱帯破綻で不安定
- 背側靱帯は掌側より弱い
- DRUJ評価を忘れない
関節の理解と共に筋肉がどうついているのか、どう動いているのか一緒に勉強しませんか?
7. 参考文献
- 基礎運動学 第6版補訂
- プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論運動器系 第3版
- 機能解剖学的触診技術 上肢
- 理学療法評価学 第6版補訂版
- 病気がみえる vol.11 運動器・整形外科 第2版







