みなさんこんにちは。作業療法士の仲田です。
回復期リハビリテーション病院で働く理学療法士・作業療法士(以下PT・OT)のみなさんが一度は考えるそれぞれの役割について改めてお話していきたいと思います。
まず、回復期リハビリテーション病棟協会が出している職種別10か条・5か条をご存じでしょうか? その中には、医師、看護師、療法士、ソーシャルワーカー、栄養士などがそれぞれの立場からよりよい医療を目指した指針としての「10か条」や「5か条」を掲げています。
前回は、PT・OT・STの5か条の中のPTを確認していきました。今回は、OTの5か条を確認していきたいと思います。
前回の内容はこちら>>>回復期リハビリテーションにおける理学療法士と作業療法士の役割 ~理学療法士編~
<OTの5か条>
- 地域生活の拡大・充実(再建)に向けて、作業に焦点を当てた個別性のある支援を行おう
- ADL・IADLなどの活動を評価・介入し、主体的な生活の習慣化につなげよう
- 認知・行為、心理的側面を包括的に捉え、その人らしい作業の現実を援助しよう
- 生活行為に活かせる身体機能/操作機能の改善・獲得に取り組もう
- 自助具や福祉用具を駆使し、対象者を取り巻く環境を整理することで作業遂行を充実させよう
前回もお話した通り、昔から、回復期リハビリテーション病院のPTとOTの役割は、PTが下肢、OTが上肢と言われていて、OTにとっては学校で習わない機能を求められることが多くありました。きっと、PTは歩くというイメージが強くて下肢、OTは作業するイメージが強くて上肢だからだと思います。
OTの5か条を紐解きながら確認していきましょう。
地域生活の拡大・充実(再建)に向けて、作業に焦点を当てた個別性のある支援を行おう
- ここでの作業とは、日常生活活動、家事、仕事、趣味、遊び、対人交流、休養など、人が営む生活行為であり、その人にとって目的や価値を持つものを指します。その人にとっての目的や価値は人それぞれなので、しっかりと情報を収集し本当にその人にとって価値のある個別性を引き出し支援していくことが重要と解釈できます。
ADL・IADLなどの活動を評価・介入し、主体的な生活の習慣化につなげよう
- その人が今まで行ってきたADL・IADLが困難となり、軽度であれ重度であれ麻痺が残存した今の状態でのADL・IADLをその人が行いやすいやり方を一緒に見つけ、繰り返し練習することで家や施設で使えるよう習慣化できるよう関わろうと解釈できます。
認知・行為、心理的側面を包括的に捉え、その人らしい作業の現実を援助しよう
- その人の価値観や人生観を大切に、辛いであろう現状を考慮した上で今までの生活に近い日常生活(その人らしい作業)の実現を援助していくと解釈できます。
生活行為に活かせる身体機能/操作機能の改善・獲得に取り組もう
- ここでの身体機能/操作機能は、「生活行為に活かせる」ことを指します。現状の能力でADL・IADLの訓練を獲得していくことが重要です。
自助具や福祉用具を駆使し、対象者を取り巻く環境を整理することで作業遂行を充実させよう
- リハビリにも限界があります。自身の力だけでは困難なことでも自助具や福祉用具、環境設定をすることで生活がしやすくなります(作業遂行)。これらを活用していきましょうと解釈できます。
よくいわれていた「OTだから上肢」ではなく、OTの5か条には、そもそも機能訓練を行おうとは1文も記載されていません。回復期リハビリテーション病院で働いているOTの中には機能訓練をメインに行っているOTも多いですが、OTの5か条を紐解いてみると、機能訓練ではなく今ある能力を最大限に活かしてその人らしい生活をしていただくことが強調されています。これがOTの強みです。しかし、今ある能力が限界ではなく、機能の伸びしろがある方もいます。日常生活活動は上肢だけでなく、下肢も体幹も頸部も関わってきます。PTと同等とは言わないまでも、ある程度の機能は知っていて損はないでしょう。例えば、トイレ訓練や着替え訓練などで困ったことがあればPTに相談するのも良いでしょう。
まとめ
OTの役割を考察した結果
- 個別性を引き出しながら「今(現状)を100」として、ADL・IADLをその人が行いやすいやり方を一緒に見つけて習慣化していく。
- その人らしい生活や趣味などの実現を援助していく。
- 自助具や福祉用具、環境設定を最大限に活かし、日常生活をしやすくする。
いかがだったでしょうか。少しでも役に立てれば幸いです。次回は、トイレ動作についてお話ししたいと思います。
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