【理学療法士が解説】腰方形筋の重要性と効果的なアプローチ方法
こんにちは。理学療法士の内川です。
皆さんは腰方形筋についてどのくらいご存じですか? 私自身、理学療法士として働き始めた頃は、腰方形筋のことをあまり理解していませんでした。しかし、解剖学を深く学ぶにつれ、その重要性に気づきました。腰方形筋は深部にあるからこそ、脊柱の安定性を保つために重要な役割をもち、日常生活のさまざまな動作を支え、腰方形筋が正常に機能していないと、腰痛や姿勢障害が生じやすいです。
今回のコラムでは、腰方形筋の解剖、評価、筋力トレーニングについて詳しく解説します。
まず解剖から確認し、評価をイメージしやすくしましょう!
目次
1. 腰方形筋の解剖と作用
- 起始:腸骨稜、胸腰筋膜
- 停止:第12肋骨、腰椎の横突起(L1-L4)
- 支配神経:腰神経叢(T12, L1-L4)
- 作用:
- 腰椎の側屈
- 脊柱の安定化
- 骨盤の挙上
腰方形筋は深部に位置し、胸腰筋膜を介して脊柱起立筋とつながっています。この位置関係が、腰痛の軽減や脊柱の安定性維持に重要な役割を果たしています。
2. 腰方形筋の評価
筋力評価(MMT)
段階5,4の手順
- 背臥位でベッドの縁を掴んでもらう
- 両手を使い検査する下肢を足関節のすぐ上で持ち尾側に引く
- 骨盤を挙上してもらう
判断基準:
- 5:最大抵抗に耐えられる
- 4:強い抵抗に耐えられる
段階3,2の手順
- 片手にて検査側の足関節のすぐ上で下肢を支える
- もう一方の手を膝の下に置き、ベッドから下肢を浮かせる
- 骨盤を挙上してもらう
判断基準:
- 3:可動域全体を動かせる
- 2:可動域の一部を動かせる
注意:腰方形筋のMMTでは1.0はありません
3. 腰方形筋の筋力練習
1. 骨盤挙上(MMT同様)
- 背臥位で足を肩幅に開き骨盤挙上を行う。
- この状態を数秒間保持し、ゆっくりと元の位置に戻す。
2. サイドプランク
- 側臥位を取り、肘を肩の真下に置く。
- 体幹を一直線に保ち、腰を持ち上げる。
- この状態を数秒間保持し、ゆっくりと元の位置に戻す。
3. 座位での骨盤挙上
- 椅子座位をとり片方の坐骨結節を上げるようにする。
- 左右交互に繰り返す。
4. 筋力低下と影響
- 腰方形筋の機能低下は、腰椎の安定性の低下や側屈運動の制限を引き起こします。特に、腰痛や姿勢の乱れが生じやすくなり、日常生活の動作に支障をきたします。
- 腰方形筋は胸腰筋膜に起始を持っており、上殿皮神経という神経が胸腰筋膜を貫くため、過緊張や短縮により腰部痛や臀部痛につながることがあります。
5. 臨床ちょこっとメモ
- 腰方形筋は体幹筋の中でも深層に位置しているため機能不全が生じると脊柱起立筋の負担が増しやすいです。
- 中殿筋の筋力低下により生じやすいと言われているトレンデレンブルク徴候ですが、体幹と骨盤を固定する腰方形筋の筋力低下でも生じることがあります。
- 腰方形筋は、腰痛の予防や改善において重要な筋肉です。この筋肉を適切に評価し、トレーニングすることで、腰痛のリスクを低減し、患者さんの日常生活の質を向上させることができます。
6. まとめ
解剖と機能
腰方形筋は深層に位置し、体幹の安定性維持に重要な役割を果たしています。その解剖学的特徴と神経支配を理解することで、効果的なアプローチが可能になります。
評価と筋力練習
MMTによる適切な評価と、それに基づいた筋力トレーニングが腰方形筋の機能改善に不可欠です。骨盤挙上やサイドプランクなど、日常的に実践できる運動を患者さんに指導しましょう。
機能不全の影響と臨床的考察
腰方形筋の機能低下は様々な問題を引き起こします。周辺の筋肉や神経との関連を考慮し、総合的なアプローチを行うことが重要です。
今回記載したものはあくまでも筋単体のことです。実際の治療においては周囲にいくつもの筋肉が存在しており、深さも考えなければなりません。周囲に何があるかイメージできていますか?不安な方はぜひ一緒に勉強しませんか?
7. 参考文献
- 基礎運動学第6版補訂
- 筋骨格系のキネシオロジー
- 新徒手筋力検査法 原著第10版
- 脊柱理学療法マネジメント