こんにちは、理学療法士の内川です。
「坐骨神経痛と梨状筋って関係あるの?」
「梨状筋の緊張を緩和させるストレッチや評価方法が知りたい!」
「梨状筋って、股関節のどんな動きに関与しているの?」
このような疑問や悩みを感じたことはありませんか?
梨状筋は、股関節外旋筋群のひとつで、骨盤の安定性や下肢の動きに重要な役割を果たします。しかし、その位置関係から坐骨神経との関連が強く、梨状筋の緊張や柔軟性低下は「梨状筋症候群」と呼ばれる坐骨神経痛の原因になることがあります。
本コラムでは、梨状筋の解剖学的特徴から臨床的な視点、評価やストレッチ方法まで、現場で使える知識をわかりやすくまとめました。
梨状筋を正しく評価し、適切なアプローチを行うことが大切です。
それでは一緒に解剖から確認していきましょう!
目次
1.梨状筋の解剖と作用
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起始
- 仙骨前面(第2~第4仙椎間)
停止
- 大腿骨大転子上縁
支配神経
- 仙骨神経叢(L5~S2)
作用
- 股関節の外転、外旋(股関節が中間位または伸展位のとき)
- 股関節の外転、内旋(股関節が90°屈曲位のとき)
- 骨盤の安定性保持
2.梨状筋の評価
触診方法
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- 被検者を腹臥位にする。
- 後上腸骨棘より尾側へ2横指ほど下を触知する。
- 大転子へ向かった走行をイメージして仙骨から大転子へ触診する。
- 股関節の外旋運動を行い収縮を確認する。
※上に大殿筋があるため深部を触診するイメージになります。
側臥位でも上記の方法で触知できますが、大殿筋の作用が強くなるため難しくはなります。
・徒手筋力テスト(MMT)
・段階5、4、3の手順:
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- 座位をとり、体幹を支えられるように両手をベッドへ置く。
- 股関節の外旋を行ってもらう。
- 内果の上で内旋方向へ抵抗をする。その際法一方の手を膝のすぐそばで大腿遠位の外側に当てる。
・判断基準:
5:最大の抵抗に対して保持できる 4:中等度の抵抗に対して保持できる
3:可動域の最終域を保てる
・段階2、1、0の手順
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- 背臥位をとり、股関節を内旋位とする。
- 股関節の外旋を行ってもらう(段階2の場合は正中を過ぎたら軽度の抵抗を加える)
・判断基準:
2:可能な範囲の可動域を動かせる 1:少しでも動く
0:動きがない
・梨状筋症候群のテスト
梨状筋の下には坐骨神経が走行しており、過緊張や短縮があると坐骨神経領域に沿って痺れや放散痛が生じることがあります。
1.FAIRテスト
- F:股関節の屈曲(Flexion)
- A:内転(Adduction)
- IR:内旋(Internal Rotation)
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手順:
- 検査側を上とした側臥位をとってもらう
- 検査側の股関節を60°〜80°屈曲、膝関節を90°屈曲位とする
- 検査側の骨盤を固定し、片方の手で膝を床方向に押し下げる
判断基準:坐骨神経領域に沿って下肢の痺れや放散痛が生じる場合は陽性となる。
3.梨状筋のストレッチとトレーニング
ストレッチ
・ボールなどを使用した梨状筋のほぐし
- 触診の部位にて記載した周囲を触り圧痛点を探す。(無い場合は無理に探さない)
- ボールなどを使用して圧痛点をほぐす
・屈曲、内転ストレッチ
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- 股関節最大屈曲位にする
- 股関節内転、外旋を加えストレッチをする。
トレーニング
・クラムシェル
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- 両股関節、膝関節を屈曲した側臥位をとってもらう
- 上の股関節を外旋させる。
※骨盤が動かないように注意して行う
4.梨状筋の機能低下と影響
・梨状筋の過緊張により梨状筋症候群が引き起こされることがあります。
梨状筋症候群とは、梨状筋が過緊張や短縮を起こすことで、坐骨神経を圧迫し、臀部痛や下肢への放散痛を引き起こす病態です。長時間の座位や柔軟性の低下で生じることがあります。
・梨状筋は大殿筋のインナーとなるため、梨状筋の筋力低下により大殿筋の収縮や歩行時の股関節伸展が行いにくくなります。
5.臨床ちょこっとメモ
- 坐骨神経との関係性:梨状筋の過緊張や短縮により、坐骨神経が圧迫されることがあります。臨床では、梨状筋リリースやストレッチが有効です。人によっては梨状筋自体を坐骨神経が貫いていることがあります。
- 股関節のポジションに注意:梨状筋の作用は股関節の屈曲角度によって変わります。屈曲位では外転筋として働くため、ストレッチやエクササイズ時はポジションに注意が必要です。
- 骨盤アライメントの影響:梨状筋は仙骨に付着するため、仙腸関節や骨盤のアライメントにも影響します。骨盤の評価と合わせたアプローチが効果的です。
- 骨盤底筋との関与:梨状筋のみではないですが、股関節外旋筋の過緊張により股関節内旋制限が生じると骨盤底筋の機能不全にもつながります。
6.まとめ
1. 梨状筋の基本的特徴と機能
- 仙骨前面から大腿骨大転子に付着する股関節外旋筋
- 股関節中間位・伸展位では外転・外旋、90°屈曲位では外転・内旋を担う
- 骨盤の安定性維持に重要な役割を果たす
- 坐骨神経との解剖学的な位置関係が密接
- 仙骨神経叢(L5~S2)の支配を受ける
2. 評価・検査のポイント
- 触診は腹臥位で後上腸骨棘の尾側2横指から大転子へ向かって確認
- MMTは座位での股関節外旋で評価(重力に抗する場合)
- FAIRテストで梨状筋症候群の評価(屈曲・内転・内旋での症状誘発)
- 坐骨神経領域の痺れや放散痛の有無を確認
- 大殿筋の下層にあるため、深部触診が必要
3. 機能低下の影響と臨床的アプローチ
- 過緊張は梨状筋症候群(坐骨神経の圧迫)を引き起こす可能性
- 筋力低下は大殿筋の機能や歩行時の股関節伸展に影響
- ストレッチは股関節の屈曲・内転位で実施
- 骨盤アライメントや仙腸関節との関連を考慮したアプローチが重要
- 骨盤底筋との機能的な関連性にも注意が必要
今回記載したものはあくまでも筋単体のことです。実際の治療においては周囲にいくつもの筋肉が存在しており、深さも考えなければなりません。周囲に何があるかイメージできていますか?不安な方はぜひ一緒に勉強しませんか?
https://lts-seminar.jp/anatomyimage/
7.参考文献
- 基礎運動学 第6版補訂
- 股関節 協調と分散から考える
- 機能解剖学的触診技術 体幹・下肢
- マッスルインバランスの理学療法
- マッスルインバランス改善の為の機能的運動療法ガイドブック
- 成田崇矢の臨床「腰痛」