股関節・膝痛の鍵!大腿筋膜張筋の評価とアプローチ【解剖から臨床まで】

この記事の結論(30秒で把握)

  • 大腿筋膜張筋(TFL)は股関節・膝関節の双方に影響する「二関節筋的」な役割を持つ重要筋。
  • 評価はASIS外下方の触診に加え、MMTやOber Testによる短縮・伸張性の確認が必須。
  • 臨床では腸脛靭帯炎のリスク因子や、THA後の代償動作として過緊張を起こしやすい点に注意。

こんにちは、理学療法士の内川です。

「股関節の外側にある張った感じの筋肉、どう評価していますか?」
「ランナーや自転車選手でよく問題になる“腸脛靭帯炎”と関係あるって聞いたけど、本当?」
「股関節前面の痛みや膝外側の痛みに、この筋がどう関わるのか知りたい…」
「股関節屈曲や外転に関わるけど、姿勢や膝痛にも影響するって本当?」

大腿筋膜張筋(TFL: Tensor Fasciae Latae)は小さな筋ですが、股関節から膝関節まで影響を及ぼす重要な筋肉です。股関節屈曲・外転・内旋の補助に加え、腸脛靱帯を介して膝外側の安定性を支えています。スポーツ障害や膝のオーバーユース障害に深く関わるため、理解が欠かせません。

1.大腿筋膜張筋の解剖と作用

大腿筋膜張筋
  • 起始:上前腸骨棘(ASIS)外側、腸骨稜外側部
  • 停止:腸脛靱帯を介して脛骨外側顆(Gerdy結節)
  • 支配神経:上殿神経(L4–S1)

作用

  • 股関節の屈曲・外転・内旋(補助)
  • 腸脛靱帯を緊張させ、膝伸展時の外側安定性を高める
  • 立位・歩行時に骨盤の安定化に寄与
解剖学的特徴のポイント
小さい筋腹を持ちますが、腸脛靱帯と強固に連結しており、膝関節外側安定性に大きく影響します。特にランニングや階段昇降などで過剰に活動しやすいのが特徴です。

2.大腿筋膜張筋の評価

触診

  • ASISのやや外側下方を触知する。
  • 股関節屈曲、外転の複合運動にて収縮を確認する。

MMT(股関節屈曲位からの外転)

段階5、4、3の方法

測定肢位:側臥位

  • テストする側の下肢を上にした側臥位をとり、下側の下肢は安定のため屈曲する。
  • テスト側の股関節を45°屈曲位とし、骨盤を支え安定させる。
  • 股関節屈曲位のまま約30°外転してもらう。
  • 段階5、4では膝関節のすぐ上で抵抗をかける。

判定:

  • 5:最大抵抗に耐えられる
  • 4:中程度〜強度の抵抗に対して耐えられる
  • 3:抵抗がなければ可動域全てを動かせ、最終域を保持できる

段階2、1、0の方法

測定肢位:長座位

  • 長座位にて両上肢を後ろにおき、体を支えてもらい、垂直から45°以内で傾いてもらう。
  • 片方の手でテスト側の足首を支持し、台との摩擦を減らす(アシストも抵抗もしない)。
  • もう一方の手で大腿骨近位外側(ASISの外下方)で大腿筋膜張筋を触知する。
  • 股関節の外転を行ってもらう。
  • 段階1、0の場合は足首を持たず、膝関節の外側を触り、大腿近位と膝関節外側の両方で大腿筋膜張筋の収縮を確認する。

判定:

  • 2:外転可動域を全て動かせる
  • 1:大腿筋膜張筋の収縮活動を触知するが運動は起こらない
  • 0:筋の活動無し

伸張テスト(Ober Test)

大腿筋膜張筋や腸脛靭帯の短縮をみるテストです。

  • テストする下肢を把持し、骨盤を固定した上で、股関節中間位、膝関節90°屈曲位の状態から股関節外転位をとる。
  • 股関節を内転させていく。

判定基準:
陽性:股関節外転位で止まる(内転10°未満で止まる)。

3.機能低下と影響

  • 短縮・過緊張時
    • 腸脛靱帯炎(ランナー膝)のリスク増加
    • 股関節屈曲拘縮による腰椎前弯の増強
    • 骨盤の外側偏位や動作時の代償運動
  • 筋力低下時
    • 股関節外転筋群(中殿筋など)とのバランスが崩れ、骨盤の安定性低下
    • 膝外側の支持力不足 → 膝の不安定感

4.大腿筋膜張筋のアプローチ

リリース

触診同様に筋を触知してそのまま深呼吸をしてもらいます。

ストレッチ

方法1

伸張したい下肢を下にし、股関節軽度伸展位の状態で内転方向へストレッチをします。

方法2

股関節外転位の状態から股関節伸展・内転方向へ下肢をおろします。

5.臨床ちょこっとメモ

  • 大腿筋膜張筋の過緊張により股関節内旋制限や腸脛靭帯の過緊張も引き起こしやすく、腸脛靭帯炎の誘引となりやすいです。
  • THA(人工股関節置換術)後のリハビリでは、股関節外転筋群の代償筋としてTFLが過活動しやすいため注意が必要です。
  • 膝OAや術後リハにおいて、TFLの短縮は膝外側荷重を増悪させる因子になります。
  • オスグッド・シュラッター病において大腿筋膜張筋の過緊張が関与しやすい傾向があります。

6.まとめ

① 筋の名前の解剖・特徴

  • 名称:大腿筋膜張筋(Tensor Fasciae Latae, TFL)
  • 起始:上前腸骨棘(ASIS)の外側、腸骨稜外側部
  • 停止:腸脛靱帯を介して脛骨外側顆(Gerdy結節)
  • 神経支配:上殿神経(L4–S1)
  • 作用:
    • 股関節:屈曲・外転・内旋(補助的)
    • 腸脛靱帯を緊張 → 膝伸展時の外側安定性向上
    • 立位・歩行時の骨盤安定化に寄与
  • 特徴:筋腹は小さいが、腸脛靱帯と強固に連結。ランニング・階段昇降で過剰活動しやすい筋。

② 評価とアプローチ

  • 触診:ASISの外側下方を触れ、股関節屈曲+外転で収縮を確認
  • MMT(股関節屈曲45°位からの外転):
    • 側臥位(段階5〜3):膝のすぐ上に抵抗を加える
    • 長座位(段階2〜0):足首を支持し摩擦を減らして行う
  • 伸張テスト(Ober Test):内転10°未満で止まると陽性(短縮あり)
  • アプローチ:リリース(深呼吸)とストレッチ(内転・伸展方向)

③ 機能低下の影響と臨床的注意点

  • 影響:腸脛靱帯炎、骨盤偏位、膝不安定感など
  • 臨床的注意点:THA後の中殿筋代償、膝OAでの外側荷重増悪、オスグッド病への関与

 

今回記載したものはあくまでも筋単体のことです。実際の治療においては周囲にいくつもの筋肉が存在しており、深さも考えなければなりません。周囲に何があるかイメージできていますか?不安な方はぜひ一緒に勉強しませんか?

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