運動機能の評価からアプローチ・改善までの流れ 〜デイサービスにおける療法士の役割〜

運動機能の評価からアプローチ・改善までの流れ 〜デイサービスにおける療法士の役割〜

 

こんにちは、作業療法士の内山です。前回のコラムでは、デイサービスにおけるリハビリテーションの基本と応用についてお話ししました。今回は、身体機能をどのように評価し、アプローチから改善まで実践しているのかについて、詳しくお伝えしていきます。

1. デイサービスでの身体機能評価の方法

デイサービスでは、主に2つの方法で身体機能評価を行っています:

a) 役割活動での評価

  • メリット: ADL/IADL動作の選定が可能で、多職種でも評価可能
  • デメリット: 詳細な機能レベルの評価が難しい
  • 使用場面: 初期評価や再評価時
役割活動のバリエーションの一部

役割活動のバリエーションの一部(座位から立位レベルまで幅広い活動を提供できるようにしている)

b) 個別機能訓練での評価

  • メリット: 身体機能の詳細な評価が可能
  • デメリット: 全利用者への平等な実施が難しい
  • 使用場面: 特定の利用者に対して15分程度の個別介入時

2. 効果的なアプローチ法

利用者の状態に応じて、以下のアプローチを使い分けています:

a) 役割活動中心のアプローチ

  • 対象: 身体機能が維持されている方
  • 効果: 動作の活性化、社会参加の促進

ADL/IADL動作などの役割を持つことで、動きが活性化される(例:誰かのために動くことが好き・人のためなら働ける)

b) 個別介入中心のアプローチ

  • 対象: ADL/IADL動作に必要な身体機能が低下している方
  • 効果: 特定の機能改善に焦点を当てた訓練

例:通所し始めたばかりで廃用性の筋力低下がある・車椅子ベースで関節可動域制限が著しい・座位での活動はできるが、立位での活動はまだ難しい

c) 多職種連携によるアプローチ

  • 方法: 看護師、介護士と情報共有し、小集団体操やマシン誘導を実施
  • 効果: 継続的なリハビリテーション環境の提供、スタッフの意識向上

3. 具体的な改善例:週1回デイサービスに通所しているAさんのケース

目標

「また夫と外に出かけたり、日課であった屋外散歩を再開できるようになりたい/家でお風呂に入りたい」

生活目標(通所目的)

  • 長期目標: 歩行時の安定性が向上し、1人での外出が可能になる/自宅での入浴が再開できる
  • 短期目標: 歩行時の腰痛を軽減するために、四肢、体幹の可動性が向上する/活動性低下による廃用性の下肢筋力低下を防ぐ

初期評価

  • 脊柱管狭窄症による腰痛と下肢のしびれ
  • 長距離歩行困難
  • 体幹可動域制限
  • 下肢筋力低下

アプローチ

  • 脊柱椎間関節モビライゼーション
  • 体幹ROM運動
  • 小集団体操
  • 役割活動(ADL/IADL動作)
  • 屋外歩行練習

本人へ情報共有したこと、自主練習内容

  • 自主トレ:体幹屈曲/伸展/回旋の(姿勢は座位)
  • 情報共有:腰痛や痺れに対するゆたぽんの活用(全身の血流増加)
  • 現在の歩行距離の共有/現在の歩行能力で自宅から行ける距離にある場所の共有

結果

  • 腰痛軽減(NRS: 4〜5)
  • 歩行距離延長(300〜400m連続可能)
  • 体幹可動性向上
  • 下肢筋力改善
  • 要介護2から要支援2へ区分変更、デイサービス卒業

区分変更になった最大の要因:自宅でのシャワー浴が可能となった

4. まとめ

  1. 身体機能評価は、役割活動と個別機能介入でそれぞれ見るポイントを絞って行っている
  2. アプローチは、機能訓練士が直接関わるだけでなく、看護師や介護士などの他職種にも情報共有しながら行う時間を作っている
  3. 記載した評価〜アプローチまでの流れを行うことで、デイサービス卒業まで機能改善をすることができる

デイサービスにおける身体機能評価とアプローチは、利用者一人ひとりの状態や目標に合わせて柔軟に対応することが重要です。専門職としての知識と経験を活かし、多職種連携を図りながら、効果的なリハビリテーションを提供していくことが、利用者の生活の質向上につながります。

本コラムが、デイサービスでのリハビリテーション実践の一助となれば幸いです。ご質問やご意見がございましたら、お気軽にお寄せください。

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