こんにちは、理学療法士の内川です。
臨床でこんな悩みを抱えていませんか?
- 「頸部痛や頭痛の評価で、板状筋ってどこまで意識すればいいの?」
- 「頭部前方位姿勢(FHP)の患者さん、どこをアプローチしたらいいか迷う…」
- 「後頭下筋群はよく触るけど、板状筋の役割が曖昧…」
頸部のリハビリで見落とされやすい筋のひとつが 板状筋(頭板状筋・頸板状筋) です。
板状筋は、頸椎の伸展・側屈・同側回旋に関わるだけでなく、後頭神経(大後頭神経・小後頭神経)との解剖学的関係から、頭痛の発生源になりやすい筋 です。
今回は臨床応用を意識しつつ、板状筋の解剖・評価・機能不全・アプローチまでまとめていきます。
目次
1. 板状筋の解剖と作用
板状筋は 頭板状筋と頸板状筋の2つから構成されます。

頭板状筋
- 起始:C7〜T3の棘突起、項靭帯
- 停止:側頭骨乳様突起、後頭骨上項線の外側部
頸板状筋
- 起始:T3〜T6の棘突起
- 停止:C1〜C3横突起後結節
支配神経
- 頸神経後枝(C4〜C8)
作用
両側収縮:
- 頸椎伸展
- 頭部を後方へ引く
片側収縮:
- 頸椎の同側回旋
- 同側側屈
臨床ヒント:
胸鎖乳突筋とは「回旋方向が逆」なので鑑別に役立ちます。
2. 板状筋の評価
触診
注意点:
頭板状筋、頸板状筋の境界は不明瞭となっており、それぞれを明確に触知することは困難となります。

- 乳様突起と第3胸椎を結ぶラインをイメージします。
- 乳様突起下方から胸椎方向にかけて触診し、同側側屈をしてもらい収縮を確認します(側屈へ軽く抵抗をかけると収縮がわかりやすくなります)。
3. 機能低下と影響
過緊張や短縮の場合
- 頭部前方位姿勢(FHP)の悪化
- 頸椎伸展・回旋での疼痛
- 肩こり・頭重感
- 上位頸椎(C0–C2)のストレス増加
- 後頭神経痛(後頭部しびれ・刺す痛み)の誘発
姿勢・呼吸との関連
- 円背姿勢では板状筋が常に遠心性収縮を強いられ、過緊張状態になりやすいです。
- 胸式呼吸優位の場合、頸部伸筋群の過活動が助長されやすいです。
4. 板状筋のアプローチ
ストレッチ
- 座位で背筋を伸ばします。
- 反対側回旋+反対側側屈+軽度屈曲のポジションをとります。
- 心地よい伸張感の位置で20〜30秒保持します。
リリース

触診同様に乳様突起のやや下部を触知し、圧迫したまま患者さんに深呼吸を行ってもらい、筋の緊張緩和を促します。
5. 臨床ちょこっとメモ
- 「肩がこって頭痛がする」という患者の多くに、板状筋の過緊張が見られます。
- 頭板状筋と半棘筋の間を大後頭神経が通り、板状筋の過緊張により神経の圧迫が生じ、頭痛(特に後頭部痛)へとつながりやすくなります。
- 頸椎回旋の左右差を診る際は、必ず板状筋の緊張度を触診で比較します。
- 胸鎖乳突筋とは拮抗関係(回旋方向が逆)であることを覚えておくと、評価の際に役立ちます。
6. まとめ
① 解剖・特徴(板状筋:頭板状筋・頸板状筋)
- 構成筋:頭板状筋/頸板状筋
- 起始・停止
- 頭板状筋:C7〜T3棘突起・項靭帯 → 乳様突起・後頭骨上項線外側
- 頸板状筋:T3〜T6棘突起 → C1〜C3横突起後結節
- 支配神経:頸神経後枝(C4〜C8)
- 作用
- 両側収縮:頸椎伸展、頭部を後方へ引く
- 片側収縮:同側回旋・同側側屈
※胸鎖乳突筋とは回旋方向が逆で鑑別に有用
② 評価とアプローチ
評価(触診)
- 頭板状筋と頸板状筋を明確に触り分けるのは困難。
- 触診の目安:乳様突起〜T3へ向かうライン。
- 確認方法:同側側屈をしてもらい収縮を触知。
アプローチ
ストレッチ
- 背筋を伸ばして座位。
- 反対側へ回旋+反対側へ側屈+軽度屈曲。
- 20〜30秒保持。
リリース
- 乳様突起のやや下部を触診し、深呼吸とともに緊張緩和を促す。
③ 機能低下の影響と臨床的注意点
機能低下・過緊張による症状
- 頭部前方位姿勢(FHP)の悪化
- 頸椎伸展・回旋時の疼痛
- 肩こり・頭重感
- 上位頸椎(C0–C2)への負担増
- 後頭神経痛の誘発(刺すような痛み・しびれ)
姿勢・呼吸との関連
- 円背姿勢 → 板状筋が常に緊張し、疼痛や可動域制限の原因に。
- 胸式呼吸優位では頸部伸筋が過活動となり板状筋の緊張を助長。
臨床上の注意点(後頭神経痛との関係)
- 頭板状筋と半棘筋の間を大後頭神経が走行。
- 板状筋が過緊張するとこの神経を圧迫 → 後頭部痛や片頭痛様症状を引き起こす。
- 頸椎回旋制限の左右差をみる際には、板状筋の左右差を必ず確認。
- 胸鎖乳突筋とは “回旋方向が逆の関係” → 評価時の鑑別に役立つ。
今回記載したものはあくまでも筋単体のことです。実際の治療においては周囲にいくつもの筋肉が存在しており、深さも考えなければなりません。周囲に何があるかイメージできていますか?
不安な方はぜひ一緒に勉強しませんか?
7. 参考文献
脊柱理学療法マネジメント-病態に基づき機能障害の原因を探るための臨床思考を紐解く









