胸鎖関節の解剖と運動学|新人セラピストが知っておくべき可動域と触診のコツ

肩の痛みが変わる「胸鎖関節」の評価と治療|解剖から紐解く臨床アプローチ

こんにちは、理学療法士の内川です。

「胸鎖関節って、どこにある関節か即答できますか?」
「肩の痛みなのに、なぜ胸の近くの関節を見る必要があるの?」
「鎖骨の動きが悪いと言われても、評価や介入のイメージが湧かない…」

新人リハビリスタッフほど、胸鎖関節は評価の優先順位が低くなりがちです。

しかし実際には、胸鎖関節は上肢と体幹を直接つなぐ唯一の関節であり、肩甲帯全体の動きの“起点”となる極めて重要な関節です。

今回は、胸鎖関節を「構造」「運動」「筋との関係」「臨床での見方」という視点から整理していきましょう。

目次

  1. 胸鎖関節の解剖
  2. 胸鎖関節の構造的特徴
  3. 胸鎖関節に関与する筋肉と触診
  4. 機能不全と臨床症状
  5. 臨床ちょこっとメモ
  6. まとめ
  7. 参考文献

1.胸鎖関節の解剖

胸鎖関節の解剖図

構成骨

  • 鎖骨内側端
  • 胸骨柄(胸骨上部)
  • 第1肋軟骨

関節の種類

  • 鞍関節(解剖学的には鞍関節ですが、関節円板を有するため機能的には球関節様の運動が可能です)

関節円板

  • 関節内に線維軟骨性の関節円板を有する
  • 役割:衝撃吸収・適合性向上・安定性確保に寄与

靱帯

  • 前・後胸鎖靱帯
  • 鎖骨間靱帯
  • 肋鎖靱帯(制動における主要な靱帯)

可動域(参考値)

  • 挙上・下制: 約30-35°
  • 前方・後方移動: 約15-20mm
  • 鎖骨軸回転(後方回旋): 約40-50°

👉 ポイント
非常に高い安定性が構造的に求められる関節です。

2.胸鎖関節の構造的特徴

  • 上肢帯が体幹と直接連結される唯一の骨性関節
  • 肩甲骨・鎖骨運動の“起点”
  • 上肢挙上時には以下の運動が起こります
    • 鎖骨挙上・下制
    • 鎖骨前方・後方回旋
    • 鎖骨前後方向の滑り

👉 ポイント
胸鎖関節の可動性が低下すると、肩甲骨運動は制限、または代償されやすくなります。

3.胸鎖関節に関与する筋肉と触診

胸鎖関節は筋が直接またがる関節ではありませんが、鎖骨や肩甲骨を介して多くの筋の影響を受けます。

① 鎖骨直接作用筋

  • 僧帽筋(上部)
  • 大胸筋(鎖骨部)
  • 胸鎖乳突筋
  • 鎖骨下筋

② 間接的影響筋(肩甲骨運動を介して)

  • 小胸筋
  • 前鋸筋
  • 僧帽筋(中部・下部)

③ 姿勢・呼吸関連筋

  • 胸鎖乳突筋
  • 斜角筋群
  • 小胸筋

触診のポイント

胸鎖関節の触診イメージ1 胸鎖関節の触診イメージ2
  • 鎖骨を内側へ辿り、胸骨との境(裂隙)を探す
  • 肩の挙上、下制を行い胸鎖関節の動きを確認する

4.機能不全と臨床症状

胸鎖関節の機能不全は、以下のような症状として現れることがあります。

  • 鎖骨内側部の痛み・圧痛
  • 上肢挙上時の違和感・詰まり感
  • 肩甲骨の挙上過多・運動不全
  • 押す・引く動作での不安定感
  • 頸部痛・胸部違和感との併発

👉 ポイント
肩関節や肩鎖関節の症状だと思っていたものが、実は「胸鎖関節由来」というケースも臨床上しばしば見受けられます。

5.臨床ちょこっとメモ

  • 視診・触診が重要:屈曲時に鎖骨の下制、回旋が適切に出現するか確認しましょう。
  • 左右差の確認:安静時の位置(挙上位・前方位になっていないか)を必ず比較します。
  • 肩甲帯の評価:動きが悪い症例では必ず胸鎖関節をチェックします。
  • 問診:外傷歴(転倒・交通事故・スポーツ外傷)は重要なヒントになります。
  • 優先順位:胸鎖関節を評価・修正せずに肩甲骨だけを介入しても改善しない例があります。
  • 呼吸との関連:胸式優位の呼吸や頭頸部前方位などの姿勢は、鎖骨位置や周囲の筋緊張を変化させ、胸鎖関節の動きに影響しうると考えられます。

6.まとめ

ここまでの内容を整理しました。

① 解剖・特徴

  • 構成骨:鎖骨内側端、胸骨柄、第1肋軟骨
  • 関節の種類:鞍関節(機能的には球関節様の運動)
  • 関節円板の役割:衝撃吸収、適合性向上、安定性の確保
  • 靱帯構造:前・後胸鎖靱帯、鎖骨間靱帯、肋鎖靱帯(主要な安定化機構)
  • 可動域:挙上・下制(約30〜35°)、前後移動(約15〜20mm)、後方回旋(約40〜50°)
  • 本質的特徴:上肢帯が体幹と直接つながる唯一の関節であり、高い安定性が求められる。

② 評価とアプローチ(筋・運動連鎖を含めて)

  • 胸鎖関節の役割:肩甲骨・鎖骨運動の「起点」。ここが制限されると肩甲骨運動も代償されやすくなります。
  • 関与する筋:
    • 直接作用:僧帽筋上部、大胸筋鎖骨部、胸鎖乳突筋、鎖骨下筋
    • 間接影響:小胸筋、前鋸筋、僧帽筋中部・下部
    • 呼吸関連:胸鎖乳突筋、斜角筋群、小胸筋
  • 触診:鎖骨内側端を辿り胸骨との境界を確認し、肩の挙上・下制で動きを観察します。
  • アプローチ:肩甲骨修正だけで改善しない場合は再評価が必要です。鎖骨の挙上・後方回旋が出る環境づくりを重視し、胸郭運動や姿勢も同時に評価しましょう。

③ 機能低下の影響と臨床的注意点

  • 主な症状:鎖骨内側部の痛み、挙上時の詰まり感、不安定感。
  • 運動への影響:肩甲骨の挙上過多、肩甲帯全体の運動不全。
  • 関連症状:頸部痛、胸部違和感、呼吸パターンの乱れ。
  • 注意点:左右差や外傷歴を見逃さないようにしましょう。

7.参考文献

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