この記事の要点(30秒で読めます)
- 「屈伸は可能だが回旋が困難」な場合は近位橈尺関節(車軸関節)を疑う
- 回外筋の過緊張は「テニス肘」だけでなく「神経絞扼」の原因にもなる
- 制限パターン(回内が硬い=回外筋の短縮など)から原因組織を正しく推測する
こんにちは、理学療法士の内川です。
「回内・回外が硬いけど、どこを見ればいいの?」
「肘は曲がるのに、ドアノブが回せないのはなぜ?」
「テニス肘の患者で回外時に引っかかる理由がわからない…」
このような症例で重要になるのが 橈尺関節です。
屈伸は問題ないのに回旋だけが制限される場合、
多くはこの関節が関与しています。
1. 近位橈尺関節の解剖学的特徴

関節構成
- 橈骨頭
- 尺骨の橈骨切痕
- (輪状靱帯)
橈骨頭が、尺骨の橈骨切痕にはまり込み、輪状靱帯がそれを”輪のように”保持しています。
橈骨頭の形状的特徴
- 円盤状で上面が浅く凹んでいる
- 周囲は円柱状
- 輪状靱帯内で360°回転可能な構造
Point: この形状が回内外90°という広い可動域を可能にします。
関節の性質
- 車軸関節
- 主な運動は回内・回外
近位橈尺関節は橈骨が回転するための軸を形成する関節です。
2. 近位橈尺関節の運動と役割
主な運動
- 回内
- 回外
回旋時のメカニズム
- 回外:
橈骨頭が輪状靱帯内で回転 - 回内:
橈骨頭が輪状靱帯内で回転し、遠位端で橈骨が尺骨の前方を横切る
実際の回旋は近位橈尺関節+遠位橈尺関節の協調で成立します。
可動域(参考値)
- 回内:約80〜90°
- 回外:約80〜90°
回内外筋の作用メカニズム
肘位置による主動筋の変化
- 回外:
- 肘伸展位 → 回外筋が主働
- 肘屈曲位 → 上腕二頭筋が主働
- 回内:
- 素早い回内 → 円回内筋
- 力強い回内 → 方形回内筋
重要: 回外筋の過緊張はテニス肘(外側上顆炎)に関連するだけでなく、橈骨神経深枝の絞扼(Radial Tunnel Syndrome)の原因にもなり得ます。
3. 安定機構
① 靱帯性安定
- 輪状靱帯(最重要)
橈骨頭を尺骨に固定し脱臼を防止 - 方形靱帯
近位橈尺関節の前後安定性および回外時の制動に寄与 - 骨間膜
遠位との連結・荷重分散
※小児の肘内障(橈骨頭亜脱臼)は輪状靱帯の機能不全によるものです。
骨間膜の3つの役割
- 近位・遠位橈尺関節の連結
- 荷重の分散:手関節で橈骨にかかった荷重(約80%)を尺骨へ逃がし、肘への負担を均等化する
- 前腕筋の付着部
② 筋による動的安定
- 回内筋群(円回内筋・方形回内筋)
- 回外筋
- 上腕二頭筋
肘角度・負荷により主動筋が変化します。
4. 機能不全と臨床症状
よくみられる問題
- 回内外制限
- 回旋時の疼痛
- 外側部の引っかかり感
- 肘外側痛(テニス肘様症状)
原因として考えるべきこと
- 輪状靱帯の機能低下・癒着
- 橈骨頭の可動性低下
- 回外筋の過緊張
- 橈骨頭骨折後の拘縮
- 方形靱帯の短縮
重要: 「屈伸OK+回旋NG」は近位橈尺関節を疑いましょう。
回旋制限のパターン別鑑別
筋肉が短縮すると、その筋肉が伸びる方向(拮抗動作)が制限されます。
| 回内制限 > 回外制限 (回内しにくい) | 【後方組織の問題・拮抗筋の短縮】 ・後方関節包の拘縮 ・回外筋の短縮・過緊張 |
| 回外制限 > 回内制限 (回外しにくい) | 【前方組織の問題・拮抗筋の短縮】 ・輪状靱帯の癒着 ・円回内筋・方形回内筋の短縮 ・方形靱帯の短縮 |
| 両方向とも制限 | 橈骨頭の変形、骨化性筋炎 |
制限パターンから原因組織を推測します。
5. 臨床ちょこっとメモ
評価のポイント
- 回旋制限の評価は肘屈曲90°で行う
- 回内外時の橈骨頭の触診は必須
- 痛みの部位が外側なら腕橈関節との鑑別が重要
- テニス肘様症状の場合、神経絞扼(Radial Tunnel Syndrome)との鑑別も念頭に置く
橈骨頭の触診方法
- 肘を90°屈曲
- 外側上顆の遠位約2cmを触診
- 回内外させながら橈骨頭の動きを確認
評価チェックポイント
- 軋轢音の有無
- 回旋時の痛みの出現角度
- end-feelの質
※「カクッ」という引っかかり感は関節内遊離体や軟骨損傷を疑ってください。
6. まとめ
① 解剖・特徴
- 関節の構造:橈骨頭が尺骨の橈骨切痕にはまり、輪状靱帯がリング状に保持する「車軸関節」である。
- 形状の利点:橈骨頭は円盤状で、輪状靱帯内で360°回転可能な構造を持つ。これが前腕の広い回内外可動域(各90°)を支える。
- 支持組織:最重要の輪状靱帯に加え、制動に関わる方形靱帯、荷重を分散させる骨間膜が安定性に寄与する。
② 評価とアプローチ
臨床では「肘の角度」と「触診」が重要となります。
- 基本評価:肩の代償を防ぐため、回旋制限の評価は「肘屈曲90°」で行う。外側上顆の約2cm遠位で橈骨頭に触れ、動きを確認する。
- 主動筋の使い分け:
- 回外:肘伸展位では「回外筋」、屈曲位では「上腕二頭筋」が主に働く
- 回内:素早い動きは「円回内筋」、力強い動きは「方形回内筋」が担当する。
- 制限因子の推測:回内制限(回外筋の短縮)、回外制限(回内筋群の短縮)など、拮抗筋の影響を正しく評価する。
③ 機能低下の影響と臨床的注意点
「屈伸は可能だが回旋が困難」な場合は、この関節の異常を疑ってください。
- 肘内障(ちゅうないしょう):小児に多く、輪状靱帯から橈骨頭が抜けかかる亜脱臼状態である。
- テニス肘との関連:外側上顆炎(テニス肘)では、伸筋群だけでなく回外筋の過緊張が背景にあることが多い。難治性の場合は神経絞扼も疑う。
- 荷重伝達の異常:骨間膜の機能不全は、橈骨から尺骨への適切な荷重分散を阻害し、手関節や肘への二次的な負担を招く。
- 注意すべきサイン:回旋時の「カクッ」という引っかかりや軋轢音がある場合は、軟骨損傷や関節内遊離体を疑い、無理な可動域訓練は避ける。
関節の理解と共に筋肉がどうついているのか、どう動いているのか一緒に勉強しませんか?
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