理学療法士・作業療法士のみなさん、こんにちは。作業療法士の仲田です。今回は、リハビリテーションの核となるICFの「活動」について、評価の質を上げるための実践的な視点と記載方法を解説します。単に「できる・できない」で終わらせない、一歩踏み込んだ評価方法を身につけましょう。
この記事は、私が開催するZoomセミナー「OTしゃべり場」で、参加者の療法士さんから実際にいただいた質問への回答が元になっています。
仲田先生、ICFの「活動」について教えてください！
はい、お任せください。「活動」は日常生活の具体的な行動のことですが、「参加」との違いに迷うこともありますよね。
そうなんです！「買い物」は活動ですか？参加ですか？
良い質問ですね。簡単に言うと、社会的な役割や、他者との関わりがあるかがポイントになります。「店員さんとやり取りし、地域社会の一員として買い物をする」なら参加、「商品を棚から取る動作」は活動、と捉えられます。この違いはまた別の記事で詳しく解説しますね。
お願いします！では、今日は「活動」の評価について詳しく知りたいです。
「できる/できない」で終わらせない！活動評価の4つの視点
ADL動作などを評価する際、単に「自立」「介助」と書くだけでなく、以下の4つの視点を持つことで、評価の質が格段に上がります。
活動評価の4つの視点と記載例
- 1. 実行可能性（どのような条件下で可能か？）
例：「トイレ動作は病棟内の手すりがあれば自立。しかし自宅の段差があると介助が必要」 - 2. 補助具・代償手段（何を使って行っているか？）
例：「スプーン操作は右手で可能だが、左手での器の固定が困難なため、滑り止めマットを使用」 - 3. 時間・質・安全性（どのように行っているか？）
例：「更衣動作に標準の2倍の時間を要するが自立」「立位バランスに不安があり、移乗時に転倒リスクが高い」 - 4. 評価ツールとの連動（客観的な指標はどうか？）
例：「FIM食事項目は6点だが、むせ込みがみられ、STによる評価が必要」
なるほど…。ここまで書くと、誰が見ても状況がクリアにわかりますね！
その通りです。多職種連携においても非常に重要になります。
分析が鍵！「なぜできないか」から目標設定へ繋げる
質の高い評価の次は、質の高い分析です。評価結果から「なぜその活動が困難なのか」という要因を分析し、具体的なリハビリ目標に繋げていきます。
例えば「ズボンの上げ下ろしが困難」という評価があったとします。その要因は、「筋力不足？」「立位バランスの低下？」「高次脳機能障害？」「抑うつによる意欲低下？」など、様々な可能性が考えられますよね。
はい、要因によってアプローチが全く変わってきます！
その通りです。要因を分析することで、初めて具体的な対応策が見えてきます。「立位バランス低下」が要因なら「環境調整（手すり設置）」や「バランス訓練」を。「意欲低下」が要因なら、活動の意味づけ支援や、本人にとって意味のある目標を一緒に設定するアプローチが必要になります。
「活動」を「参加」に繋げる作業療法の視点
私たち作業療法士は、単に動作ができるようにするだけではありません。その活動が、患者さんの意味のある生活、つまり「参加」にどう繋がるかを常に意識します。
例えば、「コップが持てる」という評価だけでなく、「朝、自分で好きなコーヒーを淹れて飲むことができる」といった、本人にとって意味のある文脈で活動を捉えることが大切です。
なるほど…。「活動」が「参加」への橋渡しになるんですね！
素晴らしい！その通りです。「歩けるようになる」ことがゴールではなく、「歩けるようになって、近所の友人と会う」といった社会参加に繋げていく。それが私たちの役割です。
とても勉強になりました！ありがとうございました！
まとめ：ICF「活動」評価で明日から使える3つのポイント
- 評価は「4つの視点」で具体的に記述する
「実行可能性」「補助具」「時間・質・安全性」「評価ツール」の視点で、誰が読んでも状態がわかるように書く。 - 「なぜできないか」を分析し、目標設定に繋げる
評価の裏にある要因（筋力、バランス、認知、心理など）を分析し、具体的なアプローチの根拠とする。 - 活動を「参加」への橋渡しとして捉える
単なる動作の獲得でなく、その人にとって「意味のある生活行為（参加）」にどう繋がるかを常に意識する。
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