肋間筋の働きと臨床アプローチ|理学療法士・作業療法士が理解すべき胸郭運動の評価とリハ戦略

肋間筋「なんとなく」を「自信」に変える。身体で学ぶ 触診・解剖学セミナー【筋肉編】

呼吸・姿勢・胸郭可動性を左右する「肋間筋」。本稿では基本解剖→評価→機能低下の影響→アプローチを、PT/OT向けに臨床直結で整理しました。

こんにちは、理学療法士の内川です。

  • 「肋間筋って呼吸筋だけど、具体的にどんな動きをしているの?」
  • 「外肋間筋と内肋間筋の違いがいまいち分からない…」
  • 「呼吸リハで“胸郭を広げる”って言うけど、どの筋を意識すればいいの?」

肋間筋は横隔膜を支える補助筋であり、胸郭運動や姿勢制御にも関わる重要な筋群です。「胸郭の弾性」や「呼吸時の肋骨の動き」を作る中心で、胸郭可動域制限や呼吸パターンの理解に不可欠です。

1. 肋間筋の解剖と作用

肋間筋図1 肋間筋図2

肋間筋は、外肋間筋・内肋間筋・最内肋間筋の3層から構成され、胸郭を囲むように配置されています。

筋名起始と停止支配神経主な作用
外肋間筋上位肋骨の下縁→下位肋骨の上縁(肋間を斜め下前方に走行)肋間神経(Th1〜Th11)吸気時に肋骨を挙上(胸郭拡張)
内肋間筋下位肋骨の上縁→上位肋骨の下縁(肋間を斜め上前方に走行)肋間神経(Th1〜Th11)呼気時に肋骨を下制(胸郭収縮)
最内肋間筋内肋間筋の内層(胸膜直外)肋間神経(Th1〜Th11)内肋間筋と同様に呼気補助

ポイント

  • 外肋間筋:吸気筋として胸郭を“外側・前方”に拡張
  • 内肋間筋:呼気筋として胸郭を“内側・後方”へ戻す
  • 最内肋間筋:呼気終末時の胸郭安定性に寄与

2. 肋間筋の評価

① 視診・触診

  • 胸郭の左右差(肋骨の動き、膨らみ)を観察
  • 上部・中部・下部の拡張差を確認
  • 上部:両肩上部に手を置き拡張の確認
  • 中部:肩甲骨と脊柱の間に手を置き拡張の確認
  • 下部:下部胸郭に手を置き拡張の確認

② 胸郭の機能テスト(胸郭拡張テスト)

胸郭拡張テスト
  1. 座位を取り、第10肋骨レベルにメジャーを巻く
  2. 最大吸気と最大呼気の差を計測

判定:差が3cm未満の場合は肋椎関節・脊柱・呼吸筋機能の低下を示唆。

3. 機能低下と影響

  • 呼吸効率の低下:外肋間筋低下で吸気量↓、内肋間筋低下で呼気不十分→浅い呼吸・努力呼吸・換気効率低下
  • 胸郭可動性の制限:短縮/過緊張で拡張・収縮が妨げられ、片側短縮では左右差と非対称パターンが出現
  • 姿勢・体幹機能への影響:胸椎伸展制限→肩甲帯・頸部へ負担増、補助筋(斜角筋・胸鎖乳突筋)の過活動を誘発

4. 肋間筋のアプローチ

① 深呼吸を用いたストレッチ

  • 胸郭拡張ストレッチ:両手を後頭部に置き、吸気で肘を後方へ広げ胸を張る→呼気で戻す(外肋間筋の伸張)
  • 側方ストレッチ:片手を頭上に上げ、体幹側屈で反対側の肋間を広げ深呼吸

5. 臨床ちょこっとメモ

  • COPDでは外肋間筋の過活動・短縮により吸気時の胸郭運動が制限されやすい
  • 開胸術・心臓手術後は肋間筋の癒着・疼痛が呼吸制限の主因となる
  • 胸郭出口症候群や肩こりでは肋間筋緊張と呼吸パターンの乱れが関係することも
  • 円背・猫背では肋骨の下方回旋が胸郭・肩関節の可動域を制限しうる
  • 呼吸訓練では呼気を最後まで吐くことが肋間筋の再教育に有効

6. まとめ(要点の再掲)

① 解剖・特徴

肋間筋は外肋間筋・内肋間筋・最内肋間筋の3層で胸郭を囲み、呼吸運動の中心的役割を担います。

筋名起始と停止支配神経主な作用
外肋間筋上位肋骨下縁 → 下位肋骨上縁(斜め下前方へ走行)肋間神経(Th1〜Th11)吸気時に肋骨を挙上(胸郭拡張)
内肋間筋下位肋骨上縁 → 上位肋骨下縁(斜め上前方へ走行)肋間神経(Th1〜Th11)呼気時に肋骨を下制(胸郭収縮)
最内肋間筋内肋間筋のさらに内層(胸膜直外)肋間神経(Th1〜Th11)呼気終末期に胸郭安定化

② 評価とアプローチ

視診・触診

  • 胸郭の左右差(動き・膨らみ)を観察
  • 上部:肩上部、
    中部:肩甲骨と脊柱の間、
    下部:下部肋骨で拡張を確認

胸郭拡張テスト

  1. 座位で第10肋骨レベルにメジャーを巻く
  2. 最大吸気・最大呼気の差を測定

差が3cm未満は、肋間筋・肋椎関節・脊柱などの可動性低下のサイン。

アプローチ

  • 胸郭拡張ストレッチ:吸気で肘を開き胸を張る→呼気で戻す
  • 側方ストレッチ:体幹側屈で反対側肋間を広げる

③ 機能低下の影響と臨床的注意点

  • 呼吸効率低下、胸郭可動性制限、姿勢機能への影響
  • COPD・術後・胸郭出口症候群などの背景に配慮
  • 呼吸訓練では呼気の終わりまで吐くことを徹底

周囲解剖を一緒に確認しませんか?

今回の解説は筋単体の整理です。実臨床では層の深さや周囲構造の理解が必須。周囲に何があるかイメージできますか? 不安な方は下記で復習をどうぞ。

【解剖が苦手な方限定】「なんとなく」を「自信」に変える。身体で学ぶ 触診・解剖学セミナー【筋肉編】

7. 参考文献

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