毎週木曜日は国家試験の問題と解説をしてきます!!
*あくまで療法士活性化委員会としての解説なので確実な正答を保証するものではありません。必ず自分で調べましょう!
問
「歯を磨くまねをしてください」という口頭命令ではうまくできないが、自発的には歯磨きができる状態はどれか。
- 観念失行
- 拮抗失行
- 構成失行
- 観念運動失行
- 肢節運動失行
解答
4
解説
失行とは,脳損傷の結果として,身体能力と行う意思はあるにもかかわらず,かつて習得した運動課題を意図的に行うことができなくなった状態です。
要は麻痺や運動の制限は無いのに特定の動作が行えない状態です。
主に
- 肢節運動失行:動作の拙劣さを特徴とし,自発運動,模倣動作,道具 の使用のいずれにおいても動作の拙劣さを認める症状
- 観念運動失行:物品を使用しない単純な運動や、一つの物品を対象とする運動が言語命令、模倣、物品使用のいずれでも障害されるもので、自動運動は可能であるが意図的な運動はできない状態
- 観念失行:個々の運動はできるが、複雑な一連の運動連鎖が必要な行為が障害される
- 着衣失行:高次脳機能障害による着衣障害で、身体図式障害や空間関係の障害のために自立で着衣できない状態とされる
- 構成失行:簡単な図形・絵画・文字を自発的にも模倣によっても描いたり書いたりすることができなくなる状態
の5つに分類されます。
元々は1〜3の分類でしたが後に4,5が追加になりました。
問題文で出てくる拮抗失行は右手の意図的な動作に対して左手が反目的的動作を行ってしまう現象で、脳梁に障害があるとされています。
問題文では
「口頭命令ではうまくできないが、自発的には歯磨きができる状態」
となっています。
これは観念運動失行の
「自動運動は可能であるが意図的な運動はできない状態」
なので解答は4となります。
これを臨床で活かすには?
失行に関しては症状を改善するためのリハビリは今の所エビデンスはありません。なので失行があることを前提にした対応方法を共有することが大切になります。
失行に対しては
- 直接的方法:日常生活で使う道具を用いての反復練習
- 代償的方法:視覚・聴覚・運動覚などを用いて動作と行為がスムーズに行えるように関連付ける。順番を図示する、矢印をつける、色を区別するなど
- 環境調整:必要な情報を整理して、生活範囲内に設定する。物品を置く場所を決めておく、余計なものは置かない、操作が簡単なものを使う、など
- 家族への援助:まず失行に対する正しい知識と対処法を伝える。個別に対応策を考えるなど
といった対応があります。
まず失行があることを前提にして相手の状態をしっかり評価し、より生活しやすい方法を考えていきましょう。
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