こんにちは、理学療法士の赤羽です。
多くの人が抱える腰痛の問題に対処するため、今までさまざまな神経の役割についてお話ししてきました。
の記事を通じて、腰痛に関与する神経の働きに焦点を当て、そこでどのような末梢神経が腰痛に関わっているのか、その中の上殿皮神経や中殿皮神経がどのように影響しているのかお伝えしてきました。
今回は、脊髄神経後枝に着目してお伝えしていきます。
脊髄神経後枝の概要
脊髄神経は、身体のさまざまな部位に信号を送る重要な神経です。これらは前枝と後枝に分かれ、後枝は特に背中の筋肉や皮膚に信号を送る役割を持っています。
前枝:頚神経叢(C1-4)、腕神経叢(C5-T1)、腰神経叢(T12-L4)、仙骨神経叢(L4-S3)
後枝:筋枝(運動神経) 固有背筋を支配
皮枝(皮神経) 皮膚を支配
さらに、脊髄神経後枝は、筋枝と皮枝に分かれ、それぞれが固有背筋や皮膚を支配します。
内側枝:上下の椎間関節・多裂筋・棘間筋・棘間靭帯・棘上靭帯を支配
外側枝:腸肋筋・最長筋・その上にある皮膚を支配
脊髄神経後枝の症状
腰痛における脊髄神経後枝の影響は大きく、特に内側枝と外側枝の障害が痛みの原因となります。内側枝は椎間関節や周辺の筋肉に、外側枝は腰部や大腿の皮膚に影響を及ぼします。この神経の障害により、片側性の腰痛や殿部痛、鼠径部痛、大腿外側部痛が生じることがあります。
片側性の痛みが下記のように出現
内側枝
L1:L1/2椎間関節直上を中心とする傍脊柱部
L2:主にL2/3椎間関節直上を中心とする傍脊柱部、一部がその上下の傍脊柱部、殿部
L3:L3/4椎間関節直上を中心とする傍脊柱部、一部がその上下の傍脊柱部、大腿外側部
L4:L3/4からL4/5椎間関節直上を中心とする傍脊柱部、一部がその上下の傍脊柱、大腿外側~鼠径部
L5:L4/5からL5/S1椎間関節直上を中心とする傍脊柱部、一部がその上下の傍脊柱、殿部、大腿外側
S1:L5/S1椎間関節直上を中心とする傍脊柱部一部がその上下の傍脊柱、殿部、大腿外側
参考:福井晴偉ら, 脊髄神経後枝内側枝の電気刺激による腰椎椎間関節性疼痛の分析,日本ペインクリニック学会誌Vol.3No.1,29~33,1996
➡つまり、障害されているレベルの上下を含めた椎間関節レベルの疼痛、殿部や大腿外側、鼠径部痛が出現する可能性があります。
外側枝
神経支配から考えると、最長筋や腸肋筋を支配していることから、その領域に疼痛や筋力低下・感覚障害等が出現する可能性があると考えられます。
脊髄神経後枝外側枝は上殿皮神経へと続いていくため、上殿皮神経の症状が出現する可能性があると考えられます。
また、脊髄神経後外側枝の絞扼により間欠性跛行を呈した症例(根津ら,1981)が報告されたりしています。
アプローチ
腰痛の改善には、椎間関節や固有背筋、腰部の皮膚を支配していることから、椎間関節・多裂筋・最長筋・腸肋筋・皮膚へのアプローチを介することで神経へのアプローチが可能ではないかと考えられ、腰痛の緩和につながります。
まとめ
- 脊髄神経は前枝と後枝があり、後枝は内側枝と外側枝に分けられる
- 内側枝は椎間関節や椎間関節・多裂筋・棘間筋・棘間靭帯・棘上靭帯、外側枝は最長筋・腸肋筋・皮膚を支配している
- 症状として片側性の腰痛や殿部痛、鼠径部痛、大腿外側部痛が出現する可能性がある
脊髄神経後枝は、腰痛の原因となる神経の一つです。この神経の理解を深めることで、腰痛の改善に向けた効果的なアプローチを見つけ出すことができます。内側枝と外側枝が引き起こす症状を正確に理解し、それぞれに適した治療を選択することが重要です。私たちの身体は複雑で繊細なシステムであり、腰痛改善への道は、これらの神経の働きを正しく理解することから始まります。
神経へのアプローチを知りたい方は…
慢性疼痛に対して神経に着目した徒手アプローチ ~DNM(Dermo Neuro Modulating)~ | 療法士活性化委員会 (lts-seminar.jp)