こんにちは、理学療法士の内川です。
「脊柱起立筋ってざっくりとしたイメージしかない…」
「最長筋と腸肋筋、多裂筋の違いは何?」
「腰痛の患者さんで“脊柱起立筋の過緊張”と言われても、どこを触ればいいか分からない…」
このように悩んだことはありませんか?
最長筋は、胸椎~腰椎の姿勢保持・伸展・回旋に深く関与し、慢性腰痛の患者に最も過緊張が見られる筋の1つです。
脊柱安定化の中核であり、多裂筋とのバランスが崩れると腰部機能障害の原因にもなります。
今回は、臨床で“必ず知るべき”最長筋について解説します。
1. 最長筋の解剖と作用
最長筋は脊柱起立筋群の中央に位置し、頸部・胸部・腰部にまたがって存在します。
構成
- 頭最長筋
- 頸最長筋
- 胸最長筋
起始と停止

■ 胸最長筋
- 起始:仙骨、腸骨稜、腰椎棘突起、Th1〜Th12横突起
- 停止:第2~12肋骨 腰椎肋骨突起・副突起、Th1〜Th12横突起
■ 頸最長筋
- 起始:T1〜T6の横突起
- 停止:C2〜C5横突起
■ 頭最長筋
- 起始:C4〜Th3横突起
- 停止:乳様突起
支配神経
- 脊髄神経後枝(C1〜L5)
主な作用
- 脊柱伸展(両側)
- 同側側屈(片側)
- 胸腰椎の姿勢保持(最重要)
最長筋は “姿勢保持のメイン筋” で、多裂筋がインナー、最長筋がアウターの働きを担っています。
2. 最長筋の評価
触診
脊柱起立筋は集団で働く筋のため、一つ一つの分離触診は困難となりますが、以下のランドマークを目安にします。
▼ Th以上での最長筋の触診

- ThやCレベルでは、棘突起から外側へ1〜2横指分の位置を触知する
- 体幹伸展にて収縮の確認を行う
▼ 腰部レベルでの最長筋の触診

- 腰部では腸骨稜へ外側方向に広がるため、棘突起から3横指ほど外側を触知する
- 体幹伸展にて収縮の確認を行う
筋力評価(MMT:体幹伸展)
体幹伸展のテストでは脊柱起立筋群、多裂筋、棘間筋と複合的な評価となります。
段階5、4の手順

- 腹臥位で頭の上で手を組む
- 患者のくるぶし部分で下肢を固定する
- ベッドから臍が離れるまで体をあげてもらう
判定基準:
5:ロックされたようにテスト姿勢が保持できる
4:最終域まで到達するが、努力性がある
段階3の手順

- 乳頭の高さまで上半身をベッドから下ろす
- 両腕を体側に置く。
- 患者のくるぶし部分で下肢を固定する
- 臍がベッドから上がるまで体を起こす
判定基準:
3:可動域全体を動かせる
段階2、1、0の手順

- 全身をベッドに乗っけた腹臥位をとる
- 段階3の手順を行う
判断基準:
2:わずかでも体幹伸展が起きる
1:収縮を感じる
0:筋収縮なし
3. 機能低下と影響
過緊張・短縮の場合
- 腰痛(慢性腰痛で最も緊張しやすい筋の1つ)
- 脊柱伸展パターンの過剰優位(反り腰)
- 多裂筋の抑制 → 体幹の安定性低下
- 骨盤前傾が強まり、腰椎の後方要素にストレス
- ハムストリングスや大殿筋の働きが低下
慢性腰痛との関係
- 健常者では体幹前屈や伸展最終域で脊柱起立筋群(腸肋筋・最長筋・半棘筋)に「屈曲弛緩現象(FRP)」がみられます。
- 一方、慢性腰痛者ではFRPが消失し、半棘筋や多裂筋の過剰収縮・活動異常が確認されています。
- この異常は「モーターコントロール不良」として腰椎不安定性や痛みの慢性化に関与します。
立位から前屈する際に、健常者では脊柱を支える背筋群の筋活動が最終的な屈曲位で消失する現象のこと。
4. 最長筋のアプローチ
① ストレッチ

- 四つ這いで背中を丸める(キャットポーズ)
② 筋リリース
- 触診同様に筋の触知を行いそのまま深呼吸を行ってもらう
③ 筋力強化(モーターコントロール)

ヒップリフト
- 背骨を一つずつ動かすよう意識しながらお尻を上げていく。
- 骨盤→腰椎→胸椎の順で上げ、胸椎→腰椎→骨盤の順で下げていく。
5. 臨床ちょこっとメモ
- 最長筋が硬くなると 股関節伸展(大殿筋)やハムストリングスが働きにくくなるため、歩行や立ち上がり動作に影響します。
- 特に「反り腰」「胸郭後傾」の患者は最長筋が常に短縮している傾向にあります。
- 触診では腸肋筋と迷いやすいですが、Th以上では棘突起のすぐ外側が最長筋と覚えましょう。
6. まとめ
① 解剖・特徴
- 位置と構成
- 脊柱起立筋群の中央に位置し、頭最長筋・頸最長筋・胸最長筋の3つからなる
- 起始・停止
- 胸最長筋:仙骨〜胸椎横突起 → 肋骨・胸椎横突起
- 頸最長筋:T1〜6横突起 → C2〜5横突起
- 頭最長筋:C4〜Th3横突起 → 乳様突起
- 支配神経
- 脊髄神経後枝(C1〜L5)
- 主な作用
- 脊柱伸展(両側)
- 同側側屈(片側)
- 胸腰椎の姿勢保持のメイン筋
- インナーは多裂筋、アウターは最長筋という関係
- 特徴(新人向けポイント)
- 姿勢保持の中心 → 過緊張・短縮しやすく慢性腰痛で問題になりやすい
- 触診では腸肋筋と混同しやすい
② 評価とアプローチ
評価
- 触診のポイント
- Th〜C:棘突起から外側1〜2横指
- 腰部:棘突起から外側3横指(腸骨稜方向へ広い)
- 体幹伸展で収縮確認
- MMT(体幹伸展)
- 5:ベッドから臍が離れた姿勢をロックして保持
- 4:最終域までだが努力性あり
- 3:臍がベッドから上がるまで挙上(腕は体側)
- 2:わずかな伸展
- 1:収縮触知
- 0:収縮なし
- 注意点
- 最長筋だけでなく、脊柱起立筋群・多裂筋との複合評価になる
アプローチ
- ① ストレッチ
- 四つ這いで背中を丸める(キャット)
- ② 筋リリース
- 触診位置に沿って圧をかけ、深呼吸を使って緩める
- ③ 筋力強化(モーターコントロール)
- ヒップリフト:背骨を一つずつ動かす意識
- 上げる:骨盤 → 腰椎 → 胸椎
- 下げる:胸椎 → 腰椎 → 骨盤
- ポイント
- 多裂筋の賦活とセットで行うと体幹安定性が改善
- ヒップリフト:背骨を一つずつ動かす意識
③ 機能低下の影響と臨床的注意点
過緊張・短縮
- 反り腰・胸郭後傾姿勢で短縮しやすい
- 多裂筋の抑制 → 体幹の不安定化
- 腰椎後方要素へのストレス増大
- 大殿筋・ハムストリングスの機能低下
- 歩行・立ち上がりでの股関節伸展が弱くなる
慢性腰痛との関係
- 健常者:前屈最終域で「屈曲弛緩現象(FRP)」が出現
- 慢性腰痛:FRPが消失 → 半棘筋・多裂筋が過剰活動
- 結果:モーターコントロール不良 → 痛みの慢性化に関与
臨床注意点:
- 触診は腸肋筋と間違えやすい(Th以上は棘突起すぐ外側が最長筋)
- 最長筋が硬い患者は、殿筋が働かず「腰で動く」代償パターンになりやすい
今回記載したものはあくまでも筋単体のことです。実際の治療においては周囲にいくつもの筋肉が存在しており、深さも考えなければなりません。
周囲に何があるかイメージできていますか?
不安な方はぜひ一緒に勉強しませんか?








