こんにちは!
モーションアナライシスコース講師の吉田頌平です。
(今回から写真を変えてみました。小ネタです、はい。)
前回の内容まで脊柱・肋骨の動きと、解剖イメージをつかむコツをお伝えいたしました!
なかなか難しいと感じるかもしれませんが、学んだ触診技術を使って少しずつ学びを深めていきましょうね。
さて、本日からは馴染みの深い股関節についてお話させていただこうと思います。
さっそくですが、ひと昔前の股関節のイメージってどんなものでしょうか? 下肢の一部というイメージですよね。どんなに下肢へのアプローチが分からなくても、ストレッチやエクササイズに代表される足上げ運動・SLRのように、すぐに下肢へ介入できるとても便利で重要な部位だったと思います。
でも、「股関節って、下肢が悪い時にアプローチするだけで十分じゃない?」、そう思う人も多いはず……。ところがどっこい、股関節は下肢だけじゃなく、体幹機能においても重要な存在なのです!
寝返り動作中の動作分析 – 総論 –
▼目次
2. 股関節の2つの動き
3. 「股関節」またの名を…
4. 終わりに
5. 講習会情報
なくてはならない存在、股関節
みなさんが知っている股関節って、きっと寛骨・寛骨臼のなかに大腿骨頭がはまり込んでいる球関節で、歩行に大切なイメージですよね。構造だけ見ると、シンプルでわかりやすいわけです。実際に「股関節」でググってみると、股関節は歩行や人工関節の対象部位として注目されています。
ですが、運動学的には座位で身体を支える際のベース部分になっており、股関節は歩行や下衣更衣のためだけに存在するわけではなく、寝返り動作・起き上がり動作のように、体幹とともに全身が動くための中心としても存在しています。
そして……。この話をしようか、それはとても迷ったんですが……。本当のことですし、もし知らない人がいたら、ぜひ知っていてほしいから話すことにします……。
実は、股関節の動き方って2つ存在するんです!
股関節の2つの動き
これを伝えないと先に進めないし、きっとみなさんは理解してくれるはずなのでお伝えします。
股関節は大腿骨頭と寛骨の2つで構成されていて、それぞれ別の目的のために運動しています。簡単にお話すると「大腿骨頭」は、みなさんも知っている下肢の一部として動くところです。最近ではSLRによるストレッチは効果がないと言われることもある股関節の「大腿骨頭」。しかし、SLRが目的とするハムストリングスのストレッチは、これからお伝えするもうひとつの股関節の動きのために必要なものだと思っています。
そして、もう一方の「寛骨」のことは、ここではあえて「彼」と言いましょう。
彼は、私たちが見えているところには存在しない、見えないところで重要な役割を担ってくれている本当の意味での動きの中心部分なのです。
「股関節」またの名を…
「彼」には様々な筋が付着しており、主な体幹筋と下肢筋が付着しています。
ズラズラ書き出すとホントに挫折しそうになるので、筋肉の名前と大まかな作用を表にまとめるだけにします。
筋の名前 | 筋の主な作用 |
腹斜筋群 | 体幹を回旋 |
腹横筋 | 体幹を支持(諸説あります) |
腰方形筋 | 体幹を伸展 |
脊柱起立筋 | 体幹を伸展 |
広背筋 | 体幹を伸展、回旋 |
大腰筋 | 体幹を屈曲、回旋 |
筋の名前 | 筋の主な作用 |
臀筋群 | 大腿骨を伸展・回旋 |
股関節外旋筋群 | 大腿骨を回旋 |
大腿直筋 | 膝を伸展、寛骨を前傾 |
ハムストリングス | 膝を屈曲、寛骨を後傾 |
股関節内転筋群 | 大腿骨を内転 |
腸骨筋 | 大腿骨・寛骨を屈曲 |
肋骨や脊柱、大腿骨などにつながる筋肉(腹斜筋、広背筋、大腰筋、腸骨筋など)が活躍できるように、「彼」は存在しています。見えないところで病院を組織する、その様はまるで看護部長(裏番長)のようなもの。ただ、その能力の高さと複雑さゆえに思わぬところにまで影響を与えてしまう可能性があるので、取扱には十分注意が必要です。やれやれ、危ないヤツだぜ。
(あくまでジョークです。全国の看護部長さん、優しい目で見守ってください。)
「寛骨(股関節・近位部)」の土台には、脊柱の一部である仙骨があるため、寛骨の動きを意識して股関節を動かしていくと、下肢だけでなく脊柱・肋骨を介して肩や頸部へ動きを効率良く伝えてくれるようになるのです。
前回まで取り上げてきた、寝返り動作の代償運動をもういちど確認してみましょう。
(前回までの内容を読んだことがない方は、こちらを参考にしてください!)
→『寝返り動作』を分析したことのなかった僕が、患者さんと寝返りできるようになるために悩み続けたこと
→寝返りに必要な脊柱の動きって??
回旋動作は活用されず、主に股関節の屈曲が活用されていますよね。
そして動きの起点になっているのは
左の図では「大腿骨(股関節・遠位部)」、
右の図では「寛骨(股関節・近位部)または脊柱」
であることにお気づきですか?
どちらも「股関節の屈曲」を代償動作として選んでいますが、
メインで動く場所も活用される筋も違っています。
つまり、上記の2パターンの代償動作を考える際にはまず、
左の図では、動いていない『肩甲骨周囲の動き』+『体幹の回旋の動き』
右の図では、動いていない『大腿骨頭の回旋の動き』+『体幹の回旋の動き』
を評価すると有効なんです……!
さて、そんな彼「寛骨」をググってみると、あらまぁ骨盤の一部であるとの情報が……! すでに十分ご存知だと思いますが、もしまだ体幹機能としての寛骨を知らない場合、いやこの話にまだ飽きていないようでしたら、ぜひMotion Analysis講座をチェックしてみてください……。
終わりに
いかがでしたか?
結論から申し上げますと、下肢に大きな機能低下はなくても必ず股関節を評価しよう、評価したらちゃんと体幹の機能も評価しよう、そういった内容でお送りいたしました。
動作分析が苦手…と思う方の苦手意識が
少しでも「楽しい!」に近づきますように。
ありがとうございました。
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療法士活性化委員会
認定講師 吉田 頌平
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