こんにちは!作業療法士の仲田です。
臨床現場で、患者さんの「体力」について考える場面は多いですよね。でも、「体力が落ちているから、なんとかしないと…」と思っても、そもそも「体力」とは何を指すのか、具体的にどうアプローチすれば良いのか、悩むことはありませんか?
「体力」という言葉は非常に幅広く、漠然としています。実は、体力には様々な要素が含まれており、どこに問題があるのかを特定しなければ、効果的なリハビリテーションは提供できません。
この記事では、理学療法士・作業療法士の皆さんに向けて、「体力」の中でも特に重要な「身体的要素」に焦点を当て、その分類と評価の考え方について分かりやすく解説します。Zoomのナイトセミナー「OTしゃべり場」での、若手セラピストとの会話を元にお届けしますので、臨床での疑問解決のヒントが見つかるはずです。
こんな方におすすめ
- 患者さんの「体力低下」の原因を正しく評価したい
- 「体力向上」に向けた具体的なアプローチ方法の考え方を知りたい
- 「体力」に関する知識を整理し、後輩指導にも活かしたい
- 日々の臨床での疑問を解消したい
【若手セラピストとの会話から学ぶ「体力」の捉え方】

仲田先生!担当している患者さんの体力が低下していて、リハビリが進まなくて…。

なるほど、「体力」ですか。具体的に、体力のどの部分が問題だと考えていますか?

え…?体力って、全体的に落ちているというか…。どうすれば体力が向上するんでしょうか?

うーん、さくらさん。「体力を向上するにはどうすれば良いですか?」という質問は、「脳卒中患者さんを良くするにはどうすればいいですか?」と聞いているのと同じくらい、漠然としているんですよ。

えっ!?そうなんですか?体力は体力だと思っていました…。

そうなんです。実は「体力」は大きく「身体的要素」と「精神的要素」に分けられます。そして、私たちが主に関わる「身体的要素」も、さらに「行動体力」と「防衛体力」に分類されるんです。

へぇー!そんなに細かく分かれているんですね!

だから、「体力が低下している」という場合、どの要素が、どの程度低下しているのかを具体的に評価することが、適切なアプローチの第一歩になるんですよ。
「体力」の分類を理解する:身体的要素を深掘り
体力は、先ほどの会話にもあったように、大きく「身体的要素」と「精神的要素」に分けられます。精神的要素には意欲やストレス耐性などが含まれますが、今回はリハビリテーションで直接的な介入対象となることが多い「身体的要素」について、さらに詳しく見ていきましょう。
身体的要素:行動体力と防衛体力
身体的要素は、「行動体力」と「防衛体力」の2つに大別されます。それぞれの要素を理解することで、患者さんの状態をより多角的に捉えることができます。
1. 行動体力:動くための力
行動体力は、私たちが日常生活を送る上で、実際に体を動かすために必要な能力全般を指します。これには、「形態(体の構造)」と「機能(体の働き)」の側面があります。
- 形態(体の構造):
- 体格(体型): 身長、体重、肥満度など
- 姿勢: 立位や座位でのアライメントなど
- 機能(体の働き):
- 筋力: 筋肉が発揮する力
- パワー(瞬発力): 短時間で大きな力を発揮する能力
- 持久力:
- 全身持久力(スタミナ): 長時間運動を続ける能力(心肺機能)
- 筋持久力: 特定の筋肉を繰り返し使う能力
- 敏捷性: 体を素早く巧みに動かす能力
- 平衡性(バランス): 安定した姿勢を保つ能力
- 協応性: 複数の体の部位をスムーズに連動させる能力
- 柔軟性: 関節の可動域や筋肉の伸びやすさ
2. 防衛体力:守るための力
防衛体力は、物理的なストレス(暑さ、寒さなど)や化学的ストレス(病原体、有害物質など)から私たちの体を守り、健康を維持するための能力です。こちらも「形態」と「機能」に分けられます。
- 形態(体の構造):
- 器官組織の構造: 細胞、組織、器官、器官系が正常に構成されているか
- 機能(体の働き):
- 体温調節: 環境変化に対して体温を一定に保つ能力
- 免疫: 病原体などから体を守る抵抗力
- 適応力: ストレスに対して体の内部環境を安定させる能力(ホメオスタシス)
「体力低下」への具体的なアプローチのために
このように、「体力」と一口に言っても、非常に多くの要素が複雑に関係し合っていることがお分かりいただけたでしょうか?
患者さんが「体力が低下している」「疲れやすい」と訴える場合、それが行動体力の問題なのか(例:筋力不足、持久力不足)、あるいは防衛体力の問題が影響しているのか(例:感染症による消耗、ストレスへの適応力低下)、またはその両方なのかを見極めることが重要です。
例えば、
- 「歩くとすぐ息が切れて疲れる」→ 全身持久力(行動体力)の評価が必要かも?
- 「立ち上がりや方向転換でふらつく」→ 平衡性や筋力(行動体力)の評価が必要かも?
- 「活動すると微熱が出やすい」→ 免疫機能や体温調節(防衛体力)の問題も考慮すべきかも?
これらの要素を評価し、どの部分に、どの程度問題があるのかを具体的に把握することで、初めて効果的なリハビリテーション計画を立案し、介入を進めることができます。
具体的な評価・介入方法をもっと詳しく知りたい方へ
今回の記事では、「体力」の分類と評価の重要性について解説しました。しかし、実際の臨床では、これらの要素をどのように評価し、どのようなアプローチをすれば良いのか、さらに具体的な知識や技術が必要になりますよね。
「OTしゃべり場」などのオンライン講座では、今回のような基本的な考え方から、具体的な評価バッテリーの選び方、エビデンスに基づいた効果的な介入プログラムの立案方法まで、より実践的な内容を学ぶことができます。
まとめ:患者さんの「体力」を正しく理解し、最適なアプローチを
今回は、「体力」の身体的要素について、その分類と評価の重要性を解説しました。
- 「体力」は多岐にわたる要素の総称である:漠然と捉えず、身体的要素(行動体力・防衛体力)と精神的要素に分けて考える。
- 「体力低下」には具体的な評価が不可欠:どの要素(筋力、持久力、バランス、免疫など)が問題なのかを特定する。
- 評価に基づいた個別的なアプローチが重要:原因に応じた適切なリハビリテーション計画を立てる。
この記事が、理学療法士・作業療法士の皆さんが患者さんの「体力」について深く考え、より質の高いリハビリテーションを提供する一助となれば幸いです。
臨床での関わり方に悩んだら:スキルアップの機会
日々の臨床で「これでいいのかな?」「もっと効果的な方法はないかな?」と悩むことは、成長のためにとても大切です。一人で抱え込まず、信頼できる情報源から学び、仲間と共有する機会を活用しましょう。
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