しびれと痛みの違いは? 明日から臨床で使える評価のポイントを徹底解説

しびれと痛みの違いは? 明日から臨床で使える評価のポイントを徹底解説

「この”しびれ”、どうにかならないかな…」

理学療法士・作業療法士の先生方なら、患者さんからこのような訴えを日常的に聞くのではないでしょうか。

「しびれ」は非常にありふれた症状ですが、その背景には多様な病態が隠れています。そして、「痛み」との違いを明確に理解し、説明することは、的確なアプローチの第一歩であり、患者さんとの信頼関係構築にも不可欠です。

この記事では、「しびれ」と「痛み」の根本的な違いから、明日からの臨床ですぐに実践できる評価のポイントまでを分かりやすく解説します。

しびれとは?患者さんの多様な表現を理解する

まず、しびれの定義を確認しましょう。しびれは専門的には「末梢神経から大脳までの感覚神経伝導路の障害によって起こる自発性異常感覚であり、そのなかでも非疼痛性のもの」とされています。

つまり、臨床で重要なのは、患者さんが「しびれ」と表現している感覚が、本当に「痛みではない異常感覚」なのかを問診で丁寧に確認することです。

患者さんは、しびれを様々な言葉で表現します。

「しびれ」の表現例

  • 石畳の上を歩いているような感覚
  • 足の裏に一枚、膜が張っている感じ
  • チクチク、ピリピリ、ジンジンする
  • 針で刺されるような感じ
  • 正座の後のような感覚
  • 感覚が鈍い、麻痺している
  • 力が入りにくい脱力感

このように表現は多岐にわたり、時には痛みと重複したり、症状が移行したりすることもあります。

【徹底解説】しびれと痛みの神経生理学的な違い

しびれも痛みも、最終的には脳で自覚される感覚ですが、脳に情報が伝わる神経の経路が異なります。この違いを理解することが、病態把握の鍵となります。

二つの症状の違いは、主に関与する感覚神経線維の種類にあります。

神経線維伝導速度髄鞘担当感覚主な受容器
Ia非常に高速筋紡錘からの伸張感覚筋紡錘
Ib高速張力(腱反射)ゴルジ腱器官
II(Aβ)高速触覚・振動覚Meissner, Merkel, Pacini, Ruffini
III(Aδ)中速冷覚・鋭い痛み自由神経終末
IV(C)低速×温覚・鈍痛・かゆみ自由神経終末

ここが最も重要なポイントです。

  • しびれ:主にAβ線維(太い有髄線維)が関与。触覚などを伝える神経の異常な興奮によって生じます。
  • 痛み(神経障害性疼痛):主にAδ線維(細い有髄線維)C線維(無髄線維)が関与。いわゆる侵害受容器を介する痛み情報です。

つまり、神経の障害がAβ線維に起これば「しびれ」として、Aδ線維やC線維に起これば「痛み」として現れやすいのです。患者さんの訴えから障害されている神経線維を推測できることは、セラピストにとって大きな武器となります。

明日から使える!しびれの臨床評価 3つのポイント

では、臨床でどのように「しびれ」を評価すればよいのでしょうか。最低限、以下の3つのポイントを問診で確認しましょう。

ポイント1:しびれの「性質」

まずは「しびれ」なのか「痛み」なのかを改めて確認します。「ジンジン」や「ピリピリ」といった表現は、しびれと痛みの両方で使われるため注意が必要です。「触ると嫌な感じがしますか?」あるいは「何もしなくても痛いですか?」など、具体的な質問で深掘りしましょう。
複数の神経線維が同時に障害され、症状が混在している可能性も常に念頭に置く必要があります。

ポイント2:しびれの「部位」

しびれている範囲の聴取は、障害部位を特定する上で極めて重要です。

  • 特定の皮神経の支配領域か? → 手根管症候群など、末梢神経の絞扼性障害を疑います。
  • デルマトーム(皮膚分節)に一致するか? → 頚椎症や椎間板ヘルニアなど、神経根レベルの障害を疑います。
  • 手袋靴下型か? → 糖尿病性神経障害など、多発ニューロパチーを疑います。
  • 神経走行に一致しないか? → 筋・筋膜性の関連症状や、より中枢性の問題も考慮します。

ポイント3:しびれの「誘発・寛解要因」

どのような時に症状が変化するかも重要な情報です。

  • 夜間や明け方に悪化する → 手根管症候群などの絞扼性障害の典型例です。
  • 特定の動きや姿勢で誘発される → 動的な神経の圧迫や血流障害が考えられます。
  • 冷感で悪化する → 脱髄性疾患や糖尿病性末梢神経障害の一部で見られます。

これらの問診に加え、感覚検査(触覚、振動覚など)、腱反射、筋力評価などの神経学的評価、必要に応じてTinel徴候などの特殊テストを組み合わせることで、病態の解像度をさらに高めることができます。

まとめ:しびれの評価はリスク管理の第一歩

今回の内容をまとめます。

  • 「しびれ」は非疼痛性の異常感覚で、痛みとは異なる神経線維(主にAβ線維)が関与する。
  • 問診では「性質」「部位」「誘発要因」の3つのポイントを確認し、障害部位を推測する。
  • 痛みとしびれの鑑別は、病態把握とレッドフラッグを見逃さないリスク管理において極めて重要。
  • 神経線維の障害に応じた適切な評価が、効果的なリハビリテーションの鍵となる。

患者さんの「しびれ」という訴えの裏にあるメカニズムを理解し、的確な評価を行うことで、私たち理学療法士・作業療法士はより質の高い介入を提供できます。

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参考文献

  • 日本神経治療学会監, 標準的神経治療 しびれ感, 医学書院, 2017
  • Tao Zou et al. Predictive factors for residual leg numbness after decompression surgery for lumbar degenerative diseases, BMC Musculoskelet Disord. 2022 Oct 13;23(1):910.
  • Sherry L Wolf et al. The relationship between numbness, tingling, and shooting/burning pain in patients with chemotherapy-induced peripheral neuropathy (CIPN) as measured by the EORTC QLQ-CIPN20 instrument, N06CA, Support Care Cancer. Author manuscript; available in PMC: 2012 Apr 19.

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