膝内側痛を「組織名」より「痛みが出る条件」から考える|臨床推論のフレーム

膝内側痛、あなたはどこから考え始めていますか?

こんにちは、理学療法士の赤羽です。
今回は私見が中心となってしまいますが、侵害受容性疼痛の膝内側の痛みを例として「組織名」ではなく「痛みが出る条件」について焦点をあてて考えてみたいと思います。

膝の内側が痛い患者さんを前にしたとき、私たちはつい「内側半月板かな?」「鵞足炎かな?」「MCLかな?」と、組織名から考え始めてしまうことがあります。
もちろん、どの組織が痛みに関与しているのかを考えることは重要です。

膝内側痛に関与し得る組織としては、内側側副靭帯、内側半月板、関節包、鵞足、半膜様筋、腓腹筋内側頭、内側滑膜ヒダなどが挙げられます。

  • 「組織名を当てる」だけでなく「痛みが出る条件(動作・姿勢・負荷)」から仮説を立てることが臨床推論の核心です
  • 触診・整形外科テストは「確定」ではなく「仮説の検証」ツールであり、「いつもの痛みが再現されるか」が重要な判断軸となります
  • 評価には力学的イメージ力・触診力・テスト操作力・再評価力の4つが必要であり、HOPEや生活目標と合わせて統合的に考えることが求められます

仮説を立てるために評価をする

臨床で重要なのは、組織名だけを当てにいくことではなく、

  • 「どの動作・姿勢・負荷条件で痛みが出ているのか」
  • 「その条件で、どの組織に伸長・圧縮・剪断・牽引ストレスが加わっているのか」
  • 「それらはなぜ出現しているのか」

を考えることです。

「痛みが出る条件」と組織への力学的ストレスの対応例
  • 方向転換・下腿外旋・膝外反ストレスで痛みが出るなら、内側支持機構であるMCL、後斜靭帯、内側関節包等へのストレスが示唆されます
  • 深屈曲・荷重下での回旋・しゃがみ込みで関節裂隙部の痛みや引っかかり感がある場合は、内側半月板、滑膜、関節包、軟骨下骨などの関節内・関節周囲組織への圧縮・剪断ストレスが鑑別に挙がります
  • 脛骨内側近位部・関節裂隙よりやや遠位に圧痛があり、階段昇降や立ち上がりで痛みが出る場合は、鵞足部への牽引・摩擦・圧縮ストレスが関与している可能性があります
  • 膝窩内側から下腿後面に近い痛みで、膝伸展位かつ足関節背屈・蹴り出し・急な加速・減速で症状が出る場合は、腓腹筋内側頭の関与が鑑別の一候補として挙がります

そして、これらが脛骨大腿関節の可動性低下や股関節・足関節の可動域制限、モーターコントロールの低下等があることでストレスが過剰にかかりやすくなっている可能性があるため、他部位の状態等も評価を行って、「なぜ出現しているのか」を集めた情報から総合的に判断して仮説を立てていきます。

触診・整形外科テストの正しい位置づけ

ここで注意したいのは、触診で痛いからといって、その組織が痛みの主原因であるとは限らないという点です。触診は、痛みの部位、圧痛の性質、左右差、周囲組織との関係を把握するための情報の1つです。圧痛があることは重要な情報ですが、それ単独で仮説を確定するものではありません。

整形外科テストも同様です。MCLを疑うなら外反ストレステスト、半月板を疑うならMcMurray testなどを用いることがあります。しかし、これらのテストは「陽性だから確定」ではありません。

大切なのは、

  • そのテストで患者さんの「いつもの痛み」が再現されるか
  • どの方向のストレスで痛みが出るか
  • 痛みだけでなく、不安定感、クリック、ロッキング、荷重困難、症状の残存時間がどう変化するか

などを確認することです。

評価の本質
評価とは「組織名を当てる作業」ではなく、痛みが出る条件を整理し、その条件で加わる力学的ストレスを仮説化し、その仮説を検証していく作業となります。

評価するためにセラピスト側に求められる能力

この流れを臨床で実践するためには、3つの力が必要です。

1つ目は、動作や姿勢の中で、各組織がどう伸ばされ、圧迫され、滑走し、剪断されているのかをイメージする力です。
2つ目は、実際にその組織を触診し、周囲組織との位置関係や圧痛の再現性を確認する力です。
3つ目は、整形外科テストやストレステストを「何となく陽性・陰性で見る」のではなく、どの組織に、どの方向のストレスを加えているのかを理解して操作する力です。

再評価の重要性と解釈の注意点

そして最後に必要なのが、介入後の再評価です。

  • 鵞足部周囲への負荷を減らすために股関節・足部・膝のアライメントを調整したあと、階段昇降時痛が変わるか
  • MCL周囲の過剰な外反ストレスを減らす運動療法後に、方向転換時痛が変わるか
  • 半膜様筋や後内側部の滑走性・収縮制御を調整したあと、立ち上がりや歩行時の痛みが変わるか
⚠ 再評価結果の解釈に注意
再評価で変化が出た場合、それは「その組織が原因だった」と断定できるとは限りません。むしろ、「その介入が患者さんの痛みや機能に影響を与えた」と考える方が良いと私は考えています。

なぜなら、痛みの変化には、組織間の滑走性やメカニカルストレスの変化だけでなく、治療文脈、患者さんの期待、安心感、注意の変化、下行性疼痛調節系の関与など、複数の要因が影響するためです。また、徒手的に特定の組織を狙ったとしても、実際には皮膚、皮下組織、筋膜、筋、神経、各種受容器にも刺激が入ります。そのため、「特定の組織だけに選択的に刺激を入れた」とは必ずしも言い切れません。

HOPE・目標をしっかり把握する

膝内側痛の評価では、患者さんのHOPEや目標も見失ってはいけません。

  • 階段を降りたいのか
  • 正座をしたいのか
  • 仕事でしゃがみ込みたいのか
  • 買い物で長く歩きたいのか
  • スポーツで切り返したいのか

同じ膝内側痛でも、必要な評価と介入は患者さんによって変わります。

理学療法士・作業療法士が見るべきなのは、単なる痛みの部位ではなく、「どの生活動作で、どのような負荷条件になると、どの組織や運動制御システムに破綻が起き、患者さんの目的達成を妨げているのか」という点です。

まとめ

膝内側痛を診るときは、「どこが痛いか」だけでなく、「いつ痛いか」「なぜその条件で痛いのか」「どうすればその人の動作目的を達成できるのか」まで考えることが重要です。

組織を診ることは大切です。しかし、組織名に患者さんを当てはめるのではなく、患者さんの動作と目的の中で、その組織がどう関与しているのかを考えることが重要となります。

本記事が、日々の臨床の一助となれば幸いです。

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