皆さんこんにちは。作業療法士の内山です。
月末、パソコンの前で個別機能訓練計画書と格闘している療法士の姿を、内山は全国のデイサービスで何度も見てきました。アウトカム評価が重視されるいま、計画書は「埋めればいい書類」ではなく、事業所の成果を左右する設計図になっています。
今回は、個別機能訓練加算を「算定のための作業」で終わらせず、数値と参加を両立させる計画書の書き方をお伝えします。
- 計画書を「心身機能」から書き始めると、目標が空洞化し生活が見えなくなる
- 「参加」から書き始めて活動・心身機能へ降りる逆算設計にすれば、アウトカム(数値)と生活(参加)が一本の線でつながる
- 数値はゴールではなく「参加への通過点」。要件と質は、対立しない
「要件は満たしているのに、生活が見えない」計画書
個別機能訓練加算には、生活機能の向上を目指すこと、居宅訪問を踏まえること、参加を意識した目標であること——といった理念が、要件の言葉の裏に込められています。
ところが現場では、しばしばこうなります。「下肢筋力向上」「関節可動域維持」「立位バランス改善」——計画書の目標欄が、心身機能レベルの言葉だけで埋め尽くされる。確かに要件は満たしているし、監査も通る。けれど内山は、こうした計画書を見るたびに思うのです。この目標を見て、その人がどんな生活を取り戻すのか、まったく見えてこない、と。
💡 ICFで言う「参加の空洞化」とは
心身機能の改善は、それ自体が目的ではなく、活動と参加を実現するための手段にすぎません。手段が目的化したとき、訓練は生活から切り離され、ただのメニュー消化になる。そして利用者さんは感じ取ります——「この運動、何のためなんだろう」と。これが、「来てくれない」問題にもつながっていくのです。
計画書を「参加」から書き始める
ではどうするか。内山は、書く順番をひっくり返すことを提案します。
多くの計画書は、心身機能の課題から書き始め、活動、参加へと積み上げます。これを逆にする。まず参加目標を決め、そこから活動、心身機能へと降りていく。4次元アプローチの逆算設計です。
逆算設計の例:「スーパーへ買い物に行く」
たとえば、ある利用者さんの参加目標を「週1回、近所のスーパーへ自分で買い物に行く」と置く。すると、必要な活動が見えてきます——往復600mの歩行、カゴを持っての立位、レジでの金銭管理。さらにそれを支える心身機能が定まる——下肢筋力、立位耐久性、巧緻性。
✅ 逆算設計で変わること
- 「下肢筋力向上」が「スーパーまで歩くための下肢筋力」という、生活に根を張った目標になる
- 要件は同じように満たされ、けれど中身はまったくの別物になる
- 居宅訪問で「家からスーパーまでの道に段差はあるか」「休めるベンチはあるか」など、見るべきものが定まる
- 居宅訪問の要件が「面倒な手続き」から「設計に必要な情報収集」へと変わる
📋 「数値と参加が両立しているか」チェックリスト
- ☐ 計画書に、その人の具体的な「参加(生活場面)」が書かれているか
- ☐ 心身機能の目標が、参加目標から逆算されているか
- ☐ 数値目標(FIM・歩行など)が、生活のどの場面につながるか説明できるか
- ☐ 居宅訪問の情報が、目標設定に活かされているか
- ☐ 本人・家族が、目標を「自分ごと」として共有できているか
数値は「参加への通過点」として置く
ここで誤解してほしくないのですが、内山は数値を否定しているのではありません。アウトカム評価の時代、数値は私たちの成果を示す大切な証拠です。
大事なのは、数値を「ゴール」ではなく「参加への通過点」として位置づけること。「歩行が10m速くなった」ことそのものを喜ぶのではなく、「だからスーパーまで歩けるようになった」「だから孫と散歩に行けた」という参加の実現を、数値とセットで語る。そうすれば、数値の改善(アウトカム)と生活の回復(参加)が、一本の線の上に乗ります。
📝 内山の事例より
三か月後の再評価で、先ほどの利用者さんは実際にスーパーへ一人で行けるようになりました。評価欄には、数値の改善だけでなく、こう書きました。「買い物の帰り、好きな菓子パンを自分で選んで買えた、と笑顔で報告」。これこそ、数値と参加が両立したアウトカムだと、内山は考えています。
🏃 明日からできるアクションプラン
① 計画書を「参加目標」から書いてみる
次に計画書を作るとき、心身機能ではなく「その人が取り戻したい生活場面」から書き始めてみてください。
② 数値に「だから何ができる」を添える
すべての数値目標に、「だから生活のどこが変わるか」という一文を必ず添えてみてください。
まとめ
- 計画書を心身機能から書くと目標が空洞化し、生活が見えなくなる
- 参加から逆算して書けば、数値(アウトカム)と生活(参加)が一本の線でつながる
- 数値はゴールではなく「参加への通過点」。要件と質は対立しない
アウトカム評価の時代、「数値も生活も諦めない」計画書を書ける療法士が求められています。参加を起点に計画を設計する力を、一緒に磨いてみませんか?







