変形性膝関節症に対する評価と介入 ~危険因子から考えてみる~

こんにちは、療法士活性化委員会の赤羽です。

みなさんは変形性膝関節症の方を担当したことはあるでしょうか。

保存療法としての介入やTKA等の術後、別の疾患でリハビリテーションをしているが元々変形性膝関節症がある、診断はなくとも膝に疼痛を訴える…等々

何かしらの機会で膝に訴えがある方を今まで診たことがある、もしくは今後診ることになる人は多いのではないかと思います。

僕は理学療法士になった当初は膝の痛みに対して、漠然としたマッサージをしたり、大切だと聞きかじっただけで評価も不十分なまま大腿四頭筋の筋トレをしたり、なんとなくROM訓練を行うといったことを行っていました。

これで問題点に偶然合致して良くなる人もいるとは思いますが、多くの場合はなかなかうまくいかないことが多いのではないかと思います。

そこで、今回は変形性膝関節症の危険因子という視点からどんなことを考えてリハビリテーションを提供していくのかをお伝えします。

 

変形性膝関節症の危険因子(一例)

  •  筋力低下
  •  肥満
  •  女性
  •  外傷の既往
  •  歩行時のスラスト *発症とは関連ないという報告もあり
  •  膝関節に負荷をかける活動性
  •  膝アライメント
  •  高血圧、脂質異常、糖代謝異常。認知症など全身性疾患との関連性も指摘されている

 

上記のように一例とはいえ様々な危険因子があることが分かると思います。

僕らが膝の痛みを訴える方を担当する際にはすでにある程度、進行している方を担当することになることが多いです。危険因子には制御できるものとできないものがあると思いますが、制御できるものに対して評価・アプローチが行えると、進行予防につながってくる可能性がありますし、症状の改善への糸口になることもあります。

そこで今回、着目するのが「歩行時のスラスト」です。意識的にスラストを止めるというのは難しく、装具やインソール等の道具に頼って外部環境を整えることも考慮する場合もあるかもしれません。しかし、それしかできないのかというとそれもまた違うと思います。

歩行時のスラスト(外側スラスト)でどんな負荷が膝関節にかかっているのかを考え、その負荷を減らすことができればスラストによる変形性膝関節症の進行予防につながる可能性があります。

そこで、外側スラストによってどのような負荷がかかっているのかを考えるキーワードに「KAM」というものがあります。

 

KAMとは

KAM:knee adduction moment(外部膝関節内転モーメント)

といいます。

KAM=床反力の大きさ×レバーアームの長さ

で表すことができます。

 

つまり・・・

膝関節を内反方向に作用させる力のことです。

スラスト等によって膝が外側へ行くほどレバーアームの長さが大きくなるためKAMも大きくなり、内反方向へのストレスが大きくなることで変形が進行しやすい要因をつくってしまいます。

そこで、KAMを減らせれば進行予防の一助になる可能性があります。

 

KAMが大きくなる要因

KAMを減らすことを考えるにあたり、まずは大きくなる要因を考えてみましょう。

大きくなる要因が分かれば、その対策をすることで、KAMによる負荷がこれ以上大きくならないようにしたり、修正できれば減らすことにつながります。

 

では、KAMが大きくなる要因にどんなものがあるのかというと・・・

  •  腰椎前弯減少(屈曲位)
  •  股関節外旋位
  •  膝関節伸展制限
  •  膝関節安定性低下
  •  足部過回外
  •  下腿過外旋アライメント(大腿骨に対して下腿が内旋しない)

等があります。上記はあくまで一例ですが、膝だけみていれば良いわけではないことが分かると思います。

 

これらのアライメントや可動域、筋力、実際の動作方法等を評価し、問題点を抽出しアプローチを行うことで、変形性膝関節症の進行予防や症状の改善につながっていく可能性があります。

 

 

まとめ

本日は「歩行時のスラスト」に焦点を絞って考えてみました。ポイントを3つにまとめると・・・

  1. 危険因子には様々あり、制御できるものとできないものがある。
  2. 危険因子の一つである「歩行時のスラスト」はKAMを減らすことで進行予防につながる可能性がある。
  3. KAMを減らすためには膝以外の部位も評価する必要がある

です。

次回は、今回とは別の危険因子に注目して考えてみようと思います。

変形性膝関節症のリハビリテーションを学ぶには

【初学者向け】膝関節疾患に対するリハビリテーション

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