こんにちは、理学療法士の赤羽です。
今回は慢性疼痛について解説します。慢性疼痛は、多くの患者さんの生活に大きな影響を与える重要なテーマです。この記事では、慢性疼痛の定義、特徴、そしてリハビリテーションアプローチについて詳しく見ていきましょう。
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慢性疼痛とは
慢性疼痛は一般的に、3ヶ月以上継続する痛みと定義されています。より具体的には、「急性疾患の通常の経過あるいは創傷の治癒に要する妥当な時間を超えて持続する痛み」とされています。
慢性疼痛の特徴:
- 基本的に生物学的意義がない
- 組織損傷に伴う急性疼痛とは異なる病態
- 認知的・情動的側面が大きい
慢性疼痛の治療に対して集学的治療が有効と言われています。集学的治療では、慢性疼痛患者を多面的に評価して治療を行います。慢性疼痛の理解には、生物心理社会モデルの概念が重要です。このモデルでは、生物学的側面だけでなく、心理的・社会的側面も考慮に入れます。詳しくはこちらの記事をご参照ください。
慢性疼痛に対するリハビリテーションの目標
慢性疼痛患者さんへのリハビリテーションでは、以下の点に注意が必要です:
- 痛みそのものを完全になくすことは難しい
- 痛みの軽減は目標の1つだが、第一目標ではない
- 主な目標は患者さんのADL(日常生活動作)とQOL(生活の質)の向上
重要なのは、痛みそのものではなく、痛みによって引き起こされるADLやQOLの低下が本質的な問題だということです。
慢性疼痛へのリハビリテーションアプローチ
慢性疼痛に対するリハビリテーションアプローチには主に以下があります:
1. 認知行動療法
- 痛みそのものではなく、痛みにより引き起こされた問題や行動に焦点を当てる
- 問題解決型のアプローチ
2. 運動療法
- 有酸素運動や筋力増強運動などを実施
- 廃用症候群の予防と改善
- ADLとQOLの向上を目指す
これらのアプローチを通じて、患者さんの生活機能を改善し、痛みとの付き合い方を学んでいくことが重要です。
まとめ
慢性疼痛への対応は複雑で、生物学的側面だけでなく心理社会的側面も考慮する必要があります。リハビリテーション専門職として、以下の点を意識しましょう:
- 慢性疼痛は通常の治癒期間を超えて持続する痛みで、一般的に3ヶ月以上継続します。
- リハビリテーションの主な目標はADLやQOLの向上です。
- 認知行動療法や運動療法などの多面的なアプローチが効果的です。
患者さんと共に、ADLやQOLの改善を目指すことで、結果的に疼痛管理にも良い効果をもたらす可能性があります。慢性疼痛と向き合う患者さんに寄り添い、より良い生活を送れるようサポートしていきましょう。
確認問題
- 慢性疼痛の定義として正しいものはどれですか?
- 1週間以上続く痛み
- 1ヶ月以上続く痛み
- 3ヶ月以上続く痛み
- 6ヶ月以上続く痛み
- 慢性疼痛に対するリハビリテーションの主な目標は何ですか?
- 痛みを完全になくすこと
- ADLとQOLの向上
- 薬物療法の効果を最大化すること
- 安静を保つこと
- 慢性疼痛へのアプローチとして適切でないものはどれですか?
- 認知行動療法
- 運動療法
- 完全な安静
- 生物心理社会モデルに基づく介入
答え:
1. c) 3ヶ月以上続く痛み
2. b) ADLとQOLの向上
3. c) 完全な安静
この記事が慢性疼痛に対する理解を深める一助となれば幸いです。患者さん一人ひとりに合わせた適切なアプローチを見つけ、より良いケアを提供していきましょう。
慢性疼痛に関する理解をさらに深めたい方は、痛みの多面性に関する記事もぜひご覧ください。
痛みに対する科学的根拠をベースにした徒手アプローチについて学びたい方は、DNM(Dermo Neuro Modulating)BASICコースもおすすめです。
参考文献
- 高橋直人ら:疼痛管理の概要と最前線,PTジャーナル,Vol.52 No.7,2018
- 下和弘:疼痛管理のための運動療法,PTジャーナル,Vol.52 No.7,2018
- 長澤康弘ら:疼痛管理のための認知行動療法,PTジャーナル,Vol.52 No.7,2018
- 沖田 実, 松原 貴子,ペインリハビリテーション入門,三輪書店,2020
- 猪狩裕紀,牛田享宏:慢性疼痛のメカニズムとアセスメント, Jpn J Rehabil Med 2021;58:1216-1220
- 牛田享宏ら:慢性疼痛 集学的アセスメントとリハビリテーション治療, Jpn J Rehabil Med 2020;57:154-159
- 「慢性の痛み診療・教育の基盤となるシステム構築 に関する研究」研究班 監,慢性疼痛治療ガイドライ ン作成ワーキンググループ 編:慢性疼痛治療ガイド ライン.真興交易医書出版部,東京