理学療法士・作業療法士のみなさん、こんにちは。作業療法士の仲田です。ICFシリーズの最終回として、今回はリハビリテーションの最終目標であるICFの「参加」について、その評価とリハビリへの活かし方を解説します。機能回復の先にある、その人らしい社会生活の実現を目指すための本質的な視点を一緒に学びましょう。
この記事も、私が開催するZoomセミナー「OTしゃべり場」でのリアルなQ&Aが元になっています。
ICFにおける「参加」とは何か?
リハビリのゴールを考える上で、「参加」の概念を正しく理解することは不可欠です。
ICF「参加」の定義と具体例
- 「参加」の定義:
個人が家庭や地域社会といった実際の生活場面に関与し、意味のある役割を果たしている状況。 - 具体例:
家庭内での家事、職場復帰、友人との交流、趣味の活動(ゲートボール、コーラスなど)、地域のボランティア、孫の世話など。 - ポイント:
単に「動作ができる(活動)」だけでなく、その活動がその人にとってどのような「意味や役割」を持つかが重要。
「Hope」を聞き出す!参加を評価する4つのポイント
「参加」の評価は、患者さんの「こうありたい」という希望(Hope)を引き出し、それを具体的な目標に落とし込むプロセスです。以下の4つのポイントで評価を深めましょう。
参加を評価する4つのポイントと記載例
- 1. その人にとって「意味のある活動」は何か?
例:「『孫の運動会を見に行くこと』が現在の生きがいで、そのための体力回復を強く希望している。」 - 2. 家庭や社会での「役割」は何か?
例:「これまでは自治会の会計係を担っていたが、病気により休止中。復帰を目標としている。」 - 3. 現在の参加状況と、それを阻害・促進する要因は何か?
例:「デイサービスへの参加意欲はあるが、自宅前の坂道が障壁となり、外出をためらっている(環境因子)。」 - 4. 「できる活動」と「している活動」のギャップは何か?
例:「更衣動作は自立している(活動)が、着替えるのが億劫で日中も寝間着で過ごしている(参加の制約)。」
Hopeをリハビリ目標へ!具体的な目標設定の技術
患者さんの「参加」への希望(Hope)を、具体的なリハビリテーションの目標に変換する作業は、私たち療法士の腕の見せ所です。
「Hope」からリハビリ目標への変換例
参加への希望(Hope) | 具体的なリハビリ目標(活動レベル) |
---|---|
「もう一度、家族と温泉旅行に行きたい」 | ・浴槽をまたぐ動作の安定化 ・不整地での屋外歩行訓練 |
「孫と一緒に食卓を囲み、同じものを食べたい」 | ・食事形態のアップ(刻み→一口大) ・自助具を用いた食事動作の安定 |
「近所の喫茶店に、友人と週1回通いたい」 | ・15分程度の連続歩行能力の獲得 ・公共交通機関(バス)の利用訓練 |
「元の職場にデスクワークで復帰したい」 | ・PCのタイピング訓練 ・1時間以上の座位保持能力の向上 |
まとめ:ICF「参加」の評価と目標設定 3つの鉄則
- 「活動」と「参加」の違いを意識し、本人の価値観を中心に置く
「できること」だけでなく、その人にとって「意味のあること・役割」は何か、という視点で評価する。 - Hope(希望)を具体的な目標に変換する技術を磨く
抽象的な「〇〇したい」を、達成可能な「活動」レベルの目標に分解し、リハビリ計画に落とし込む。 - 環境因子や個人因子を含めた全体像で捉える
参加を支える、または妨げる要因(家族の支援、経済状況、本人の性格など)も併せて評価し、多角的なアプローチを検討する。
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