リハビリにおける効果的なコミュニケーション 【病棟スタッフ編】 〜トイレ動作の動作分析から情報共有までの流れを学ぶ〜

リハビリにおける効果的なコミュニケーション 【病棟スタッフ編】 〜トイレ動作の動作分析から情報共有までの流れを学ぶ〜

 

 

皆さんこんにちは。作業療法士の内山です。前回はPT・OTへの評価結果の共有方法をお伝えしました。

>>>トイレ動作の評価と情報共有の目的【下衣更衣】 〜トイレ動作の動作分析から情報共有までの流れを学ぶ〜

今回は評価結果の共有シリーズ第2弾である「病棟への評価結果の共有方法」をお伝えしていきます。よろしくお願いします。

病棟スタッフと情報共有をする意味

まず初めになぜ病棟スタッフにトイレ動作の評価結果を共有する必要があるのか考えていきましょう。これは大きく分けて2つあると考えています。

  • 患者さんの現状の能力を把握し、リハビリ以外の日常生活の中でもできる能力を最大限活用してもらうため
    トイレ動作の中でどの工程が自立であるか、また介助や見守りを要するかをチームの共通認識として持っておく必要があります。そうすることによって、日常生活の時間もADL訓練の一環とすることができ、結果として患者さんの自立度を上げることにも繋げられます。
  • 在宅復帰など予後予測を立てていくにあたって、ゴールから見た患者さんの現在地を知るため
     

    在宅復帰をゴールとした場合、トイレ動作が自立の状態でなければ帰れないのか?それとも見守り・介助の状態でも良いのか?これは患者さん各々の状況によって変わってきます。そのため、まずはトイレ動作の現状を評価し、ゴールとの乖離がどれくらいあるのかを知る必要があります。

病棟スタッフと情報共有をする方法

次にどのような方法で共有していくか?を考えていきます。これは大きく分けて3つあると考えています。

  • カルテへ記載して情報共有する

    →1番簡潔に行うことができ、皆さんが毎日必ず記載されていると思います。 カルテは文章で考えることができるため、喋って伝えるのが上手くできない方には向いていると言えます。しかし、内山の経験上、カルテは流し見で見ているスタッフが多く、意外と詳細まで把握しているスタッフは少ないことが多かったです。そのため、カルテに動作の自立度が変わるなど重要事項を記載する際は次のことも一緒に行っていました。

  • カンファ・ミニカンファでの情報共有

    カルテ記載と一緒に行なっていたのが「カンファ・ミニカンファ」での口頭による情報共有です。これは自分が伝えたいことを確実に伝えられるため漏れは少ないです。しかし、ケースカンファは数ヶ月に1回しか行わない現状もあると思います。そのため内山の勤務先の病院では「ミニカンファ」という毎日病棟スタッフ・リハスタッフで患者さんの情報共有を行う時間を5~10分程度作っていました。そうすることによって日々の変化点や経過を追いやすくなっていました。全ての勤務先で導入するのは難しいかもしれませんが、参考までにお伝えします。

  • 担当Ns, 担当CWと話す時間を作る

    前述した「ミニカンファ」など皆で集まって話をすることが難しい場合は、個別に話す時間を設けてもらうことも1つの手段となります。内山もよくこの方法を使って患者さんの現状や予後・トイレ動作を行う際に気をつけてほしいポイントをお伝えしていました。 ただし、病棟スタッフは流動的に動くことが多く、中々タイミングが合わないことがしばしばです。そのため、内山は病棟スタッフの手が空く時間帯が、いつか直接聞くまたは病棟の1日の動きを観察し評価していました。また、自分が話したいスタッフの業務補助をするなど関係性を作っていると、忙しいときでも比較的こちらの話を受け入れてくれることが多かったです。 もし、直接話す時間を作ることがどうしても難しい場合は、院内メールで詳細を記載して共有する方法もあるので試してみるのも良いかもしれません。

病棟スタッフと情報共有する内容

最後に、どのような内容を共有していけばいいか?を考えていきます。これは大きく分けて4つあると考えています。

  • 患者さんのトイレ動作の現状

    トイレ動作の自立度、排泄機能の状態、立ち上がり・立位保持・移乗動作の能力 など患者さんのADLの現状レベルとそれに必要な身体機能の程度を共有しておく必要があります。

  • 必要とする介助・支援内容

    →ADLの現状とそれに対する身体機能の程度を共有した後は、トイレ動作の現状に対してどのような介助や支援が必要かを共有していきます。 例えば立位保持までは見守りでできるが、下衣の着脱は介助が必要であるなど工程ごとに分けると、丁寧に伝えることができ理解も深まりやすいです。

  • 介助・支援方法

    →介助・支援が必要な箇所まで伝えたら方法も合わせて伝えていく必要があります。 先ほどの例を挙げると立位保持までは見守りで可能だが、下衣着脱に介助が必要な方がいるとします。その場合方法をどのようにお伝えするか記載してみます。

    療法士:

    • 手すりを把持してもらいながら壁の方に向かって、患者さんに立ってもらっていてください。
    • その後に、後方からズボンと下着をゆっくり下ろしてあげてください。
    • しゃがむのが困難な場合は、膝を曲げながらゆっくりと下ろしてください。
    • 患者さんが転倒しないように、常に側にいてサポートしてください。

    このように、工程ごとに時系列順で説明すると実際にケアに入る病棟スタッフもトイレ動作の場面を想像しやすくイメージがしやすくなります。もしも時間が取れるのであれば実際に行なっている場面を病棟スタッフに確認してもらう、患者さんの了承を得た上で動画に撮っておき見てもらうことも1つの手段として有用です。勤務先の状況に応じて使い分けてみてください。

  • 経過観察のポイント

    →病棟スタッフと共有するのは現状だけではなく、経過観察の情報も重要になります。患者さんのADLレベルや身体機能の程度は日々少しずつですが変化していきます。そのため、以前は下衣の着脱に介助が必要だった患者さんも、部分的にご自身でできるようになることもあります。そのような際に、同じ介助を続けるのではなく、ご本人のできる能力を最大限活用してもらうために、病棟スタッフからも情報共有してもらえるようにリハビリ側から伝えておく必要があります。このような関係性が構築できれば、相互の情報共有が密に行えるようになり、患者さんのQOLが上がり、スタッフ側の働くモチベーションも上がり好循環が生まれていきます。最初は上手くいかないことも多いかもしれませんが、めげずに目の前の患者さんの生活を良くしたいという思いを伝え続ければ必ず届きます!

まとめ

  1. 患者さんの現状とゴールからの乖離を把握するために、病棟と情報共有をする
  2. カンファやスタッフと直接話す時間を設けるか、院内伝達など様々な手段で情報共有を試みる
  3. トイレ動作の現状から介助内容、経過観察のポイントまで一連の流れを相互に共有できるような体制を作る

続きはこちら>>6/7公開 coming soon

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トイレ動作の動作分析から情報共有までの流れを学ぶ-2

トイレ動作の動作分析から評価の方法、、他職種への動作指導や評価の伝達方法、介入方法から、患者さん本人への自主トレ提供まで一連の流れを実施できるようになる。

こんなことで悩んでいませんか?

  • 評価、触診が苦手
  • 動作分析でどこに着目したら良いか分からない
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  • 認知症患者の対応について悩んでいる
  • 効果的なアプローチ方法がわからない

一つでも当てはまる場合は参加をご検討ください。

トイレ動作を改善できるようになるには以下のステップが必要です

  1. 対象者にとってトイレ動作がなぜ必要なのかを共有する
  2. トイレ動作の工程を分析する
  3. 問題となっている工程の問題点を抽出する
  4. 抽出された問題点に対して適切なアプローチを行う
  5. 結果を適切な方法で記録・伝達する

トイレ動作が改善できないで悩んでいる時、このステップのどこかで問題を起こしている可能性があります。

1.対象者にとってトイレ動作がなぜ必要なのかを共有する

「トイレ動作はできた方がいい」と漠然と思っていませんか? もちろんできたほうがいいのは間違い無いですが、その「できた方がいい理由」を明確にしてみましょう。例えば以下のような報告があります。

「13項目の運動FIMと8項目の認知FIMを説明変数とし、目的変数を在宅復帰とした重回帰分析を行ったところ食事・更衣(上半身)・トイレ移乗の項目が他項目に比し、有意に在宅復帰と関連性が認められた」

出口貴行・藤本俊一郎.・大平隆博・平尾寛子・塩田和代(2012).脳卒中地域連携クリティカルパスからみた在宅復帰に影響する関連因子の検討.日本医療マネジメント学会雑誌Vol.12より引用

このようにトイレ動作は食事・更衣動作と並び在宅復帰のための条件として優先順位が高いことが伺えます。

2.トイレ動作の工程を分析する

例えばトイレ動作の工程は大きく分けると4つの工程に分解できます。

①トイレに向かう

→尿意・便意を催して、車椅子駆動or歩行でトイレまで向かいます。そのためには車椅子駆動するための上肢機能や歩行のための下肢機能が必要になります。またこの際、転倒リスクが高い方は、スタッフに声掛けするor転倒ムシ設置など何らかの工夫を要する場合もあります。

②移乗動作

→車椅子レベルの方であれば、車椅子・便座間の移乗動作も必要になってきます。トイレは空間が狭いため、正面に停めた状態で180°方向転換が必要です。この時は立位の状態を保持しながら手すりを把持したりと、四肢・体幹の分離した動きがより高度に求められます。

③下衣の着脱動作

→立位保持を上肢フリーで行えるか、手すり把持で行うかによって難易度が変化します。

両上肢をフリーで使用できれば、容易に可能なことが多いですが、手すり把持の状態であると。片手で着脱を行う必要があり、立位保持時間もより長く要求される場合が多いです。

④座位動作(座位保持、清拭)

座位では主に清拭動作が大きな比重を占めてきます。清拭動作では、上肢のより細かい巧緻動作が必要になってきます。上肢の分離運動はもちろんのこと、手指の分離運動も高いものが要求されます。

今回のセミナーではさらに工程をさらに細かく分解して考えていきます。

3.問題となっている工程の問題点を抽出する

各工程に対して必要な

  • 関節可動域
  • 筋力
  • 分離の程度

を評価し、問題点を抽出する必要があります。

例えば

方向転換して、便座に背を向ける

  • 上田式12段階グレード
    • 体幹機能(体幹を安定させることが出来るか)
      • 体幹グレードⅣ-ⅲ以上
    • 下肢機能(方向転換できるか)
      • 下肢グレードⅣ-ⅲ以上
  • 関節可動域
    • 股関節外転、内転
    • 膝関節屈曲、伸展
    • 足関節背屈、底屈
  • 筋力
    • 体幹筋群
      • 腹直筋、腹横筋、多裂筋など
    • 下肢筋群
      • 大臀筋、ハムストリングス、大腿四頭筋、前脛骨筋など

を評価する必要があります。

4.抽出された問題点に対して適切なアプローチを行う

抽出された問題点に対して適切なアプローチ方法を行う必要があります。

今回のセミナーでは

  • 関節モビライゼーション
  • 筋膜のリリース
  • 促通
  • 動作訓練

をお伝えします。

5.結果を適切な方法で記録・伝達する

結果の共有は、単に結果を伝えるだけではありません。患者さん自身の現状を理解し、目標達成に向けた具体的な道筋を提示する重要な役割を果たします。

  • 現状把握とゴール設定:評価結果を共有することで、患者さん自身がトイレ動作における課題を認識し、目標設定に積極的に取り組むことができます。
  • 治療計画の策定:課題を明確にすることで、効果的なリハビリテーションプログラムを構築し、最適な介入方法を検討することができます。
  • 患者さんとの信頼関係構築:丁寧かつ分かりやすい説明は、患者さんとの信頼関係を築き、治療への協調性を高めることにつながります。

今回のセミナーではADLで特に自身で行いたい動作のトイレ動作を動作の分析方法から、評価、介入方法、自主トレ方法、対象者、他職種への伝達法をお伝えします。

ここまでの5つのステップを習得して患者さんにとってより良いリハビリを提供できるようになりませんか?

講習会詳細

  
会場

【土日開催】
ウィリング横浜 オフィスタワー
〒233-0002 神奈川県横浜市港南区上大岡西1丁目6−1

【平日開催】
あなたのお悩み駆け込み寺永久
〒251-0038 神奈川県藤沢市鵠沼松が岡3−27−6大牧マンション301

定員土日:24名
平日:6名
参加費11,000円(税込)(会場、オンラインともに同額となります)
参加資格医師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、養成校学生(学生は受講料が半額となります。)
持ち物筆記用具
ヨガマット(推奨、バスタオルで代用可)
普段使用している整形外科の教科書
バスタオル1枚
動きやすい服装
講習会内容
  1. トイレ動作の評価が必要な理由
  2. トイレ動作の工程分析
  3. トイレ動作の中で問題となりやすい工程
    起立動作
    立位保持
    下衣の着脱
  4. それぞれの工程で問題点を抽出するための評価
  5. 問題点に対するアプローチ法 関節モビライゼーション
    筋膜のリリース
    促通方法
    動作訓練
  6. 認知機能について
  7. 情報共有
    理学療法士
    作業療法士
    病棟スタッフ
    患者、家族

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リハコヤ