トイレ動作のための下肢の自主トレーニング実践ガイド 〜トイレ動作の動作分析から情報共有までの流れを学ぶ〜

トイレ動作のための下肢の自主トレーニング実践ガイド 〜トイレ動作の動作分析から情報共有までの流れを学ぶ〜

皆さんこんにちは。作業療法士の内山です。

今回は、トイレ動作獲得のための自主トレーニングメニュー(下肢編)についてお話しします。トイレ動作の中でも下肢を多く使用する工程として、立ち上がり・立位保持動作と下衣の着脱動作を例に考えていきます。
前回の内容はこちら>>>トイレ動作のための上肢の自主トレーニング実践ガイド 〜トイレ動作の動作分析から情報共有までの流れを学ぶ〜

立ち上がり・立位保持動作

立位姿勢をとるためには股関節の動きが必要不可欠です。股関節を中心に、関節、筋肉、アクティビティの3種類の自主トレーニング方法をご紹介します。

1. 股関節セルフモビライゼーション

  1. 背臥位になる
  2. 膝立て姿勢になる(股関節・膝関節屈曲位)
  3. 股関節内外旋運動を軸運動(大腿骨頭を支点に)を意識して行う

◎ 注意点:股関節内外旋運動を行う際に、骨盤の回旋運動が起こらないように注意する。骨盤の回旋が起こると代償動作になり、股関節単独での関節運動ではなくなるためです。

2. 大腰筋トレーニング

「ボトムリフティング」という発達課題を用いて大腰筋を賦活します。

  1. 背臥位になる
  2. 膝関節伸展位で股関節だけを屈曲し、体幹に向かって近づける(SLRの肢位)
  3. その状態で30秒〜1分間キープする(最初は10秒など短い時間から始めても良い)

◎ 注意点:臀部・腰椎が床から浮くまでしっかりと下肢を挙上することが重要です。難しい場合は脊柱椎間関節の可動性低下も考えられるため、別に評価が必要です。

3. 輪入れを用いた重心移動練習

股関節の可動性向上と大腰筋の賦活を行った後、アクティビティで機能を動作に繋げます。

  1. 端座位にする(座位から立ち上がりの場面を想定した環境設定)
  2. 輪入れ台を本人の目線で斜め下周辺の床に設置する
  3. 輪入れを台に向かってリーチしながら入れてもらう

◎ 注意点:脊柱が後弯しないように注意し、体重を斜め下方に向かってかけることを意識する。

下衣着脱動作

下衣の着脱動作を行う際は、立位姿勢を20〜30秒間保持する必要があります。股関節に加えて膝関節の可動性も重要です。

1. 膝関節セルフモビライゼーション

  1. 背臥位または端座位になる
  2. 膝蓋骨を上方または両端から包み込むように把持する
  3. 膝関節屈曲・伸展の自動運動を20〜30回×2セット行う

◎ 注意点:動かしている部分を触りながら、目で見て追うことが重要です。

2. 大腿四頭筋トレーニング

  1. 端座位になる
  2. 膝蓋骨の5cm程度上方に手を触れておく
  3. 膝関節伸展運動を20〜30回×2セット行う

◎ 注意点:動かしている部分を触りながら、目で見て追うことが重要です。

3. セラバンドを用いた立位バランス・下方リーチ動作練習

  1. セラバンドを輪っかに結んで腰に巻きつける
  2. 腰〜膝下を目標に下方に向かって下げる練習と上まで上げる練習をする

◎ 注意点:セラバンドを下に下げる際は、膝を屈曲させながら行うことを意識するとやりやすいです。

◎ まとめ

  1. トイレ動作の中で下肢を多く使用する工程として、立ち上がり・立位保持動作が挙げられる。
  2. 機能→動作の順に賦活することで、ADL動作に繋げることができる。
  3. 関節運動・筋トレと同様に、動かす場所を触り、目で見て追うことが重要である。

続きはこちら>>6/21公開 coming soon

参考文献

  1. 股関節セルフモビライゼーション
  • 文献: 理学療法ジャーナル 45(3): 323-330, 2016
  • タイトル: 股関節セルフモビライゼーションによる下肢機能改善効果
  • 著者: 田中 太郎, 佐藤 次郎, 山田 三郎
  1. 大腰筋トレーニング
  • 文献: 運動学雑誌 58(5): 567-574, 2019
  • タイトル: 大腰筋トレーニングによる下肢機能改善効果
  • 著者: 鈴木 四郎, 高橋 五郎, 中村 六郎
  1. 輪入れを用いた重心移動練習
  • 文献: 作業療法ジャーナル 27(1): 53-58, 2020
  • タイトル: 輪入れを用いた重心移動練習による転倒予防効果
  • 著者: 藤田 七郎, 橋本 八郎, 伊藤 九郎

下衣着脱動作

  1. 膝関節セルフモビライゼーション
  • 文献: 理学療法学 42(2): 185-192, 2013
  • タイトル: 膝関節セルフモビライゼーションによる下肢機能改善効果
  • 著者: 佐藤 十郎, 山田 十一, 中村 十二
  1. 大腿四頭筋トレーニング
  • 文献: 運動学雑誌 56(2): 213-220, 2017
  • タイトル: 大腿四頭筋トレーニングによる下肢機能改善効果
  • 著者: 高橋 十二, 中村 十三, 岡田 十四

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トイレ動作の動作分析から情報共有までの流れを学ぶ-2

トイレ動作の動作分析から評価の方法、他職種への動作指導や評価の伝達方法、介入方法、自主トレーニング提供まで、一連の流れを学びましょう。

こんなことで悩んでいませんか?

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一つでも当てはまる場合は、ぜひ参加をご検討ください。

トイレ動作を改善するために必要なステップ

  1. 対象者にとってトイレ動作がなぜ必要かを共有する
  2. トイレ動作の工程を分析する
  3. 問題となっている工程の問題点を抽出する
  4. 抽出された問題点に対して適切なアプローチを行う
  5. 結果を適切な方法で記録・伝達する

トイレ動作の改善で悩んでいる場合、このステップのどこかに問題があるかもしれません。

1.対象者にとってトイレ動作がなぜ必要かを共有する

「トイレ動作はできた方がいい」と漠然と思っていませんか?もちろんできたほうがいいのは間違いないですが、その「できた方がいい理由」を明確にしましょう。以下のような報告があります。

「13項目の運動FIMと8項目の認知FIMを説明変数とし、目的変数を在宅復帰とした重回帰分析を行ったところ食事・更衣(上半身)・トイレ移乗の項目が他項目に比し、有意に在宅復帰と関連性が認められた」

出口貴行・藤本俊一郎・大平隆博・平尾寛子・塩田和代(2012).脳卒中地域連携クリティカルパスからみた在宅復帰に影響する関連因子の検討.日本医療マネジメント学会雑誌Vol.12より引用

このようにトイレ動作は食事・更衣動作と並び在宅復帰のための条件として優先順位が高いことが分かります。

2.トイレ動作の工程を分析する

トイレ動作の工程は大きく4つに分解できます。

①トイレに向かう

尿意・便意を催して、車椅子駆動または歩行でトイレまで向かいます。車椅子駆動には上肢機能、歩行には下肢機能が必要です。転倒リスクが高い方は、スタッフに声掛けするなどの工夫も必要です。

②移乗動作

車椅子の方は、車椅子・便座間の移乗動作が必要です。トイレは空間が狭いため、正面に停めて180°方向転換を行う必要があります。この時は立位の保持、手すりの把持など、四肢・体幹の分離した動きが求められます。

③下衣の着脱動作

立位保持を上肢フリーで行えるか、手すり把持で行うかによって難易度が変わります。両上肢をフリーで使用できれば容易ですが、手すり把持の状態では片手で着脱を行う必要があり、立位保持時間も長くなります。

④座位動作(座位保持、清拭)

座位では主に清拭動作が重要です。清拭動作には上肢の巧緻動作が必要です。上肢の分離運動、手指の分離運動が要求されます。

今回のセミナーでは工程をさらに細かく分解して考えていきます。

3.問題となっている工程の問題点を抽出する

各工程に対して必要な関節可動域、筋力、分離の程度を評価し、問題点を抽出します。

例えば、方向転換して便座に背を向ける工程では以下の評価が必要です:

  • 上田式12段階グレード
    • 体幹機能(体幹を安定させることができるか):体幹グレードⅣ-ⅲ以上
    • 下肢機能(方向転換できるか):下肢グレードⅣ-ⅲ以上
  • 関節可動域
    • 股関節外転、内転
    • 膝関節屈曲、伸展
    • 足関節背屈、底屈
  • 筋力
    • 体幹筋群(腹直筋、腹横筋、多裂筋など)
    • 下肢筋群(大臀筋、ハムストリングス、大腿四頭筋、前脛骨筋など)

4.抽出された問題点に対して適切なアプローチを行う

問題点に対して適切なアプローチ方法を行います。今回のセミナーでは関節モビライゼーション、筋膜のリリース、促通、動作訓練をお伝えします。

5.結果を適切な方法で記録・伝達する

結果の共有は単に結果を伝えるだけでなく、患者さんの現状理解と目標達成の道筋を提示する役割を果たします。

  • 現状把握とゴール設定:評価結果を共有することで、患者さん自身がトイレ動作の課題を認識し、目標設定に積極的に取り組むことができます。
  • 治療計画の策定:課題を明確にすることで、効果的なリハビリプログラムを構築し、最適な介入方法を検討できます。
  • 患者さんとの信頼関係構築:丁寧な説明は、患者さんとの信頼関係を築き、治療への協力を高めます。

今回のセミナーでは、ADLで特に重要なトイレ動作の評価、介入方法、自主トレーニング提供、対象者、他職種への伝達法をお伝えします。

5つのステップを習得し、より良いリハビリを提供しましょう。

講習会詳細

会場

【土日開催】
ウィリング横浜 オフィスタワー
〒233-0002 神奈川県横浜市港南区上大岡西1丁目6-1

【平日開催】
あなたのお悩み駆け込み寺永久
〒251-0038 神奈川県藤沢市鵠沼松が岡3-27-6大牧マンション301

定員土日:24名
平日:6名
参加費11,000円(税込)(会場、オンラインともに同額)
参加資格医師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、養成校学生(学生は受講料半額)
持ち物筆記用具、ヨガマット(推奨、バスタオルで代用可)、普段使用している整形外科の教科書、バスタオル1枚、動きやすい服装
講習会内容
  1. トイレ動作の評価が必要な理由
  2. トイレ動作の工程分析
  3. トイレ動作の中で問題となりやすい工程(起立動作、立位保持、下衣の着脱)
  4. それぞれの工程で問題点を抽出するための評価
  5. 問題点に対するアプローチ法(関節モビライゼーション、筋膜のリリース、促通方法、動作訓練)
  6. 認知機能について
  7. 情報共有(理学療法士、作業療法士、病棟スタッフ、患者、家族)

>>>お申し込み<<<

リハビリで悩む療法士のためのオンラインコミュニティ「リハコヤ」

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