腕尺関節の解剖と運動学|肘関節の屈伸制限・痛みの評価ポイント

腕尺関節の解剖と運動学|肘関節の屈伸制限・痛みの評価ポイント

こんにちは、理学療法士の内川です。

「肘の屈伸制限が強いけど、どこを見ればいいの?」
「肘関節の安定性って、結局どこで決まる?」
「投球やプッシュ動作で”引っかかる感じ”が出る理由がわからない…」

肘関節を評価するとき、屈曲・伸展の中心となるのが腕尺関節(上腕尺関節)です。
しかし新人のうちは、腕橈関節や前腕回旋ばかりに意識が向き、この関節の重要性が見落とされがちです。

今回は、腕尺関節の解剖・運動特性・安定性・臨床での着目点を整理していきましょう。

この記事の要点(30秒で把握)

  • 安定性の要:腕尺関節は肘関節の中で最も「骨性安定性」が高く、屈伸のガイド役を担う。
  • 運搬角の意義:正常値(10〜15°)からの逸脱は、外反ストレスやMCL負荷への影響大。
  • 臨床リスク:伸展制限は「後方インピンジメント」や他関節の代償を招くため早期発見が必須。

目次

  1. 腕尺関節の解剖学的特徴
  2. 腕尺関節の運動と機能
  3. 腕尺関節の安定機構
  4. 機能不全と臨床症状
  5. 臨床ちょこっとメモ
  6. まとめ
  7. 参考文献

1.腕尺関節の解剖学的特徴

関節構成

腕尺関節の解剖図1 腕尺関節の解剖図2 腕尺関節の解剖図3
  • 上腕骨滑車
  • 尺骨滑車切痕
    • 鉤状突起
    • 肘頭
👉 ポイント
上腕骨滑車が、尺骨滑車切痕にはまり込む形で構成されます。

上腕骨滑車の形態的特徴

  • 内側が大きく、外側が小さい非対称な形状
  • この形態により、完全伸展位で肘関節は軽度外反位をとる
  • この角度を運搬角と呼ぶ
  • 正常値:約10〜15°(女性でやや大きい傾向)
👉 ポイント
運搬角の存在が、外反ストレス・MCL負荷の理解に重要です。

関節の性質

  • 蝶番関節
  • 主に屈曲・伸展のみを許容
  • 回旋運動はほぼ起こらない

2.腕尺関節の運動と機能

主な運動(参考可動域)

  • 屈曲:145°
  • 伸展:
    (※臨床的には5〜10°程度の過伸展を認めることも多い)

運動の特徴

  • 屈曲時:
    鉤状突起が鉤突窩に入り込み、前方安定性を高める
  • 伸展時:
    肘頭が肘頭窩に収まり、終末域で高い安定性を発揮
👉 ここが評価の第一歩!
エンドフィール(最終域感)の違い

  • 伸展:骨性(Bony)
    肘頭がカチッとハマる硬い感覚
  • 屈曲:軟部組織性(Soft tissue approximation)
    筋肉同士がぶつかる弾力のある感覚
    ※痩せている方の場合は骨性(鉤状突起の衝突)を感じることもあります。

3.腕尺関節の安定機構

① 骨性安定性

  • 深い尺骨滑車切痕
  • 肘頭と鉤状突起による前後方向の制動

👉 肘関節の中で最も骨性安定性が高い関節

② 靱帯性安定性

  • 内側側副靱帯(MCL)
    • 前斜走線維(AOL):外反ストレスへの主抵抗
    • 後斜走線維(POL):屈曲位での補助的安定性
  • 外側側副靱帯(LCL)
    • 内反・回旋ストレスの制御

👉 特に投球動作では腕尺関節 × MCL前斜走線維の協調が重要

③ 筋による動的安定性

  • 上腕筋:屈曲時の前方安定化
  • 上腕三頭筋:伸展時の後方安定化
  • 肘筋:関節包挟み込み防止、外側安定性

👉 屈伸運動中の関節中心化(求心位保持)に寄与

4.機能不全と臨床症状

腕尺関節の機能不全で起こりやすい問題

  • 屈伸可動域制限(特に伸展制限)
  • 終末域での引っかかり感・疼痛
  • 投球・プッシュ動作時の不安定感
  • 肘内側部痛(MCLへの負荷増大)

臨床でよくある背景

  • 外傷後(肘頭骨折、脱臼)
  • 長期固定後
  • 投球動作の反復
  • 変形性肘関節症

後方インピンジメント

投球選手や伸展制限例では、後方インピンジメントも考慮が必要です。

  • 機序:伸展強制時に肘頭が肘頭窩に繰り返し衝突
  • 結果:骨棘形成、遊離体(関節ねずみ)の原因となる
  • 好発場面:投球のフォロースルー期、プッシュ動作の終末域
👉 注意点
腕尺関節の伸展制限は、肩・手関節の代償を招きやすい点に留意してください。

5.臨床ちょこっとメモ

  • 肘の屈伸制限=まず腕尺関節を疑う
  • 伸展終末域の硬さは骨性(End Feel)か軟部組織かを必ず見極める
  • 投球障害では腕尺関節+MCL前斜走線維の評価が必須
  • 腕橈関節・近位橈尺関節の問題が腕尺関節のストレスを増やすことも多い
  • 運搬角の増大(外反肘)はMCLへの負荷増大因子

6.まとめ

① 解剖・特徴(腕尺関節の本質)

  • 関節構成
    • 上腕骨滑車が尺骨滑車切痕に深くはまり込む構造
    • 肘関節の中で最も骨性安定性が高い
  • 上腕骨滑車の形態
    • 内側が大きく、外側が小さい非対称構造
    • 完全伸展位で軽度外反位をとる
  • 運搬角
    • 正常:約10〜15°(女性でやや大きい)
    • 外反ストレス・MCL負荷を考えるうえで重要
  • 関節の性質
    • 蝶番関節(屈曲・伸展のみ許容)

② 評価とアプローチ(運動・安定機構)

  • 運動の特徴
    • 屈曲:145° / 伸展:0°(過伸展あり)
    • 屈伸終末域での骨性ロックが最大の特徴
  • 評価の第一歩
    • エンドフィールの確認(伸展=骨性、屈曲=軟部組織性)
  • 安定機構
    • 骨性:深い尺骨滑車切痕、肘頭・鉤状突起による前後制動
    • 靱帯性:MCL(特に前斜走線維)が外反ストレス制御
    • 動的:上腕筋、上腕三頭筋、肘筋

③ 機能低下の影響と臨床的注意点

  • 起こりやすい問題
    • 屈伸可動域制限、終末域での引っかかり感、肘内側部痛
  • 後方インピンジメント
    • 伸展強制時に肘頭が肘頭窩へ反復衝突し、骨棘や遊離体の原因に
    • 投球フォロースルー期、プッシュ終末域で好発
  • 臨床的注意点
    • 腕尺関節の伸展制限は、肩・手関節の代償を強く招く
    • 運搬角増大(外反肘)はMCL負荷増大因子

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7.参考文献

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