理学療法士・作業療法士のみなさん、こんにちは。作業療法士の仲田です。今回は、多くの療法士が「診断名を書くだけ」と思いがちなICFの『健康状態』について、臨床の質を高めるための深い意味と活用法を作業療法士の視点から解説します。
この記事は、私が開催するZoomセミナー「OTしゃべり場」で、参加者の療法士さんから実際にいただいた質問への回答が元になっています。現場のリアルな悩みにお答えします!

仲田先生、ICFの「健康状態」について質問です! 正直、カルテに診断名が書いてあるので、わざわざ転記する必要があるのか疑問に思っていました。

良い質問ですね!確かにその通りです。ですが、ICFにおける健康状態は、単に診断名を写すだけではないんですよ。その人の生活全体を理解するための『出発点』として捉えることが、私たち療法士には求められます。
ICFの健康状態は「出発点」という考え方

はい。ICFの「健康状態」には、疾患や障害、外傷といった医療的な診断名や病状を記載します。しかし、それはあくまでスタート地点。そこから“生活機能”や”背景因子”にどう影響していくか、その連鎖を読み解くためにあるんです。

なるほど…!診断名だけで判断してはいけない、ということですね。

その通りです。例えば同じ「脳梗塞による片麻痺」という健康状態でも、回復の程度、ご本人の性格、家族の支援、家の環境などによって、生活の質(QOL)は全く違ってきますよね。
健康状態から始まる「影響の連鎖」を理解する

そこで重要になるのが、“影響の連鎖”を読み解く視点です。「健康状態」が出発点となり、そこから「心身機能・身体構造」の低下が起こり、それが「活動」の制限につながり、さらに「参加」の制約を生み、心理的な影響も出てくる…この一連の流れを評価するんです。

もう一つ大切なのは、健康状態は固定されたものではない、ということです。治療によって改善することもあれば、新たな合併症が生じることもあります。常に変化する要素として捉え、評価を更新し続ける必要があります。
【実践】臨床で使えるICF健康状態の記載例
では、具体的にどのように書けばよいのでしょうか。診断名が「脳卒中後左片麻痺(右中大脳動脈領域)」の患者さんを例に考えてみましょう。
ICF健康状態の記載例(脳卒中後左片麻痺)
- 主診断:脳卒中後左片麻痺(右中大脳動脈領域)
- 合併症:高血圧、糖尿病(血糖コントロール状態も追記すると尚良い)
- 現在の状況:発症後2ヶ月。回復期リハビリテーション病棟にてリハビリ継続中。
- 特記すべき症状:医師より右視床痛の指摘あり。また、麻痺に伴う左肩の痛み(亜脱臼の有無など)も出現。

診断名や合併症だけでなく、現在のステージや具体的な症状まで書くんですね!これなら、他のスタッフにも患者さんの状態がずっと伝わりやすいです。

そうなんです。ここまで書くことで初めて、他の項目との繋がりが見えてきます。より詳しい書き方や症例別のポイントは、またセミナーでお伝えしますので、ぜひご参加くださいね。
まとめ:ICF「健康状態」3つの重要ポイント
- 「診断名」ではなく「生活への影響を見通す枠組み」として捉える
単なる病名の記録に終わらせず、その人の生活全体を考える出発点とすることが重要です。 - 他の項目(心身機能・活動・参加)との「影響の連鎖」を意識する
健康状態から始まる影響の連鎖を理解し、多角的な視点で総合的な評価を行いましょう。 - 病名の裏にある”意味”を捉え、更新し続ける
診断名の背景にある個人の状況(ステージ、症状の変化など)を常に把握し、情報をアップデートしていくことが、質の高いリハビリにつながります。
いかがだったでしょうか。ICFの「健康状態」に対する見方が少しでも広がり、明日からの臨床のヒントになれば幸いです。
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