6年目 理学療法士 村上
歩行中の膝過伸展 いわゆる反張膝(genu recurvatum)をみると、多くの場合「大腿四頭筋の筋力低下」や「膝折れを防ぐ代償」と考えがちではないだろうか。
もちろんそれも一因だが、歩行をロッカー機能の視点からみると、また別の見方ができる。
- 反張膝の原因は膝周囲筋の問題だけでなく、足部のロッカー機能破綻が関与している場合がある
- ヒールロッカー・アンクルロッカー・フォアフットロッカーそれぞれの破綻が、異なる歩行相での反張膝につながりうる
- 評価は膝・股関節だけで結論づけず、足部機能や歩行全体の視点から分析することが重要である
ロッカー機能とは?
ロッカー(Rocker)とは、本来「揺り椅子」や「揺れるもの」を意味する言葉だ。
歩行では、足部を支点として身体を前方へ回転させながら移動する仕組みを指す。
ロッカー機能が適切に働くことで、重心は滑らかに前方へ移動し、効率的な歩行が可能となる。
3つのロッカー機能
ロッカー機能は一般的に3つに分類される。
ヒールロッカー
まず、初期接地から荷重応答期にみられる「ヒールロッカー」だ。
踵を支点として足部が床へ接地し、下腿が前方へ回転する。
この時期には前脛骨筋が遠心性に働き、足部が急激に床へ落ちることを防いでいる。
ヒールロッカーが十分に機能しないと、フットスラップや足底接地の不安定さが生じる。
アンクルロッカー
次に立脚中期にみられる「アンクルロッカー」だ。
足関節を支点として脛骨が前方へ回転し、重心を前へ運ぶ役割を担う。
この時期には十分な足関節背屈可動域が必要であり、下腿三頭筋は遠心性に働きながら脛骨の前方移動を制御している。
背屈制限があると脛骨の前方移動が妨げられ、早期の踵離地や膝過伸展などの代償がみられることがある。
フォアフットロッカー
最後に立脚終期の「フォアフットロッカー」だ。
前足部、とくに中足趾節関節(MP関節)付近を支点として身体が前方へ回転する。
踵が離地し、推進力を生み出す重要な局面だ。この機能が低下すると歩幅の減少や推進力不足につながる。
反張膝(genu recurvatum)はいつ起こる?
一般的には、単脚支持になる立脚中期で解説されることが多い。
ただ、臨床上では他の相で起きていることも観察される。
ヒールロッカー破綻(荷重応答期)
本来は踵を支点に脛骨が前方回転しながら膝が屈曲し衝撃吸収を行う。
しかし、以下のような要因がある場合を考えてみよう。
- 遊脚期でのクリアランス低下
- 足関節底屈拘縮
- 前脛骨筋の機能低下
これらの要因が重なると底屈位での接地となりやすく、接地直後から膝をロックするような代償パターンが生じ、反張膝につながることがある。ただし、実際には初期接地時の足関節角度、痙縮の有無、感覚障害など複数の要因が絡み合っているため、歩行全体で丁寧に観察することが大切だろう。
アンクルロッカー破綻(立脚中期)
本来は足関節を支点として脛骨が前方へ回転する。
しかし、以下のような要因があると脛骨が前に進まない。
- 背屈制限
- 下腿三頭筋短縮
- 下肢協調性低下
- 足関節周囲の疼痛
- 荷重時痛
脛骨の前方移動が妨げられると、重心を前へ送るために膝関節への負荷が変化し、過度な膝伸展位、いわゆる反張膝が生じやすくなると考えられる場合がある。背屈可動域制限や下腿三頭筋の短縮・痙縮、前脛骨筋機能低下は、こうした反張膝の重要な関連因子として評価することが推奨される。
フォアフットロッカー破綻(立脚終期)
あまり語られないけど、十分あり得ると私自身は考えている。
本来は前足部を支点に身体が前へ回転する。
しかし、以下のような要因があると前足部での回転が起こりにくくなる。
- MP関節伸展制限(クロートゥ)
- 前足部の感覚低下
前足部での回転が起こりにくい場合、身体を前へ送るために膝を伸展固定して代償的に押し出す動作が生じやすくなることがある。結果として立脚終期での反張膝パターンにつながると考えられる場合がある。ただし、感覚低下単独で反張膝の直接原因とするには根拠が限定的であり、他の関連因子と合わせた包括的な評価が必要だろう。
まとめ
反張膝は膝周囲筋や股関節機能の問題によって生じることが多い。
ただ、歩行において、足部のロッカー機能の破綻が大きく関与している場合も少なくない。
そのため、反張膝を評価する際には膝関節や股関節だけで結論づけるのではなく、足部機能や各ロッカー機能を含めた、全体的な視点から分析することが重要である。

