こんにちは、理学療法士の内川です。
「股関節は荷重関節で安定しているはずなのに、なぜ可動域制限や痛みが出やすいんだろう?」
「大殿筋や腸腰筋の筋力は測るけど、関節本来の動きのイメージがわかない…」
「腰痛や膝痛の患者さん、実は股関節が原因って本当?」
股関節でつまずく最大の理由は、「強力な安定性」と「大きな可動性」という矛盾した機能をどう両立させているか、そのメカニズムの理解が不足していることにあります。
股関節は、体重支持・移動・姿勢制御を担う最重要関節の一つです。
解剖から臨床へのつながりを整理していきましょう。
この記事のポイント(要約)
- 股関節は深い寛骨臼と関節唇により「骨性安定性」が非常に高い球関節である。
- 安定性は強力な靱帯(静的)と、深層外旋六筋等による関節圧縮(動的)で保たれる。
- 股関節の機能不全は、代償動作として腰椎や膝関節のトラブルへ波及しやすい。
1. 股関節の解剖

関節構成
- 大腿骨頭
- 寛骨臼
関節形状:球関節(臼蓋関節)
特徴
- 寛骨臼が深く、骨頭の約2/3を覆う
- 関節唇によりさらに安定性が向上
- 荷重を分散するため、関節軟骨が非常に厚く発達している。
※ 肩関節と異なり、骨性安定性が非常に高い
2. 股関節の運動と主動作筋
| 運動 | 主動作筋 | 臨床ポイント |
|---|---|---|
| 屈曲 | 腸腰筋・大腿直筋 | 制限があると骨盤後傾で代償しやすい。 |
| 伸展 | 大殿筋・ハムストリングス | 歩行の推進力に不可欠。 |
| 外転 | 中殿筋・小殿筋 | 骨盤安定の鍵。低下するとトレンデレンブルグ徴候へ。 |
| 内転 | 内転筋群 | 立位バランスや骨盤の安定に寄与。 |
| 外旋 | 深層外旋六筋・大殿筋 | 骨頭を臼蓋に引き寄せる(求心位)。 |
| 内旋 | 中殿筋・小殿筋前部 | 歩行の推進力、膝への負担に関与。 |

3. 股関節の安定機構
- 静的安定(靱帯):
腸骨大腿靱帯(人体最強)、恥骨大腿靱帯、坐骨大腿靱帯。
これらは伸展位で「ねじれる」ことで締まり、立位を最小限の筋力で支える。 - 動的安定(筋による圧縮安定):
深層外旋六筋などが骨頭を臼蓋へ引き寄せ(求心位保持)、関節を安定させる。
4. 解剖学的特徴
・求心位の概念
- 骨頭が臼蓋の中心にある状態
- 崩れると痛み・不安定・代償につながる(インピンジメント)
・前捻角(約15°)
- 内旋・外旋の可動域に影響
- 歩行パターンにも関与
・荷重量
- 片脚立位で体重の3~4倍の荷重がかかる
5. 機能不全と臨床へのつながり
股関節のトラブルは、必ず上下の関節に波及する
- 腰痛との関連: 股関節が硬いと、腰椎が過剰に動きすぎて痛みが出現する(股関節可動性低下 → 腰椎過可動)。
- 膝痛との関連: 股関節のコントロール不全は、膝のアライメント異常(Knee-inなど)を招く。
- 鼠径部痛: 「股関節の前が痛い」場合、関節内だけでなく腸腰筋の滑液包炎など、軟部組織由来の可能性も考慮する。
6. まとめ
① 解剖・特徴
- 大腿骨頭と寛骨臼で構成される球関節(臼蓋関節)
- 寛骨臼が深く、関節唇により骨性安定性が非常に高い
- 前捻角(約15°)や臼蓋形状が可動域や歩行に影響
- 片脚立位で体重の3〜4倍の荷重がかかる荷重関節
② 評価とアプローチ
- 特に重要なのは内旋可動域と求心位の評価
- 可動域制限時は骨盤代償(後傾など)に注意
- 安定性は靱帯(静的)+筋(動的:深層外旋筋など)で評価
- 改善には可動性+求心性(圧縮安定)の両方にアプローチ
③ 機能低下の影響と臨床的注意点
- 可動性低下 → 腰椎過可動 → 腰痛
- コントロール低下 → 膝アライメント不良(Knee-in)→ 膝痛
- 求心位破綻 → インピンジメント・不安定性
- 鼠径部痛は関節内だけでなく腸腰筋など軟部組織も考慮







