こんにちは!
モーションアナライシスコース講師の吉田頌平です。
今回は安定した端座位保持の敵にも味方にもなるなー、と感じる「股関節の屈曲」についてです。
なぜ股関節の靭帯について知っておくべきなのか
端座位をしていると必ず行うのが「股関節の屈曲」です。この股関節の屈曲では、イメージ通りに行えているか、意図通りに動かせるかなどを確認します。
「ちょっと座ってみてください」と利用者さんにお願いしてみて、「はい、座りました!」と、いざ座っている様子を拝見してみると……「あれ? 今にも後ろに倒れそう?」と心配になるほどに猫背姿勢で仙骨座りをしていることがあったりします。
そういうときの原因としては、以下の3つの可能性が考えられます。
- 股関節の靭帯組織が伸長できない
- 股関節屈曲筋を活用できない
- 骨盤を前傾できない
実は、これら3つの要因の中で「1. 股関節の靭帯組織が伸長できない」が一番頻度が高いです。
股関節の靭帯組織が伸長できない状態は、筋力が出なかったり、骨盤が前傾できなかったりと…たまに悪意なく真実を隠し評価をかく乱します。端座位を取った時に同様の現象が起こった際、その真実にいち早くたどり着くべく、局所(股関節の靭帯)のことをもっと知っていきましょう。
股関節屈曲の動作分析 – スクリーニング評価 –
▼目次
2. 座位を保つことと股関節の靭帯との関係とは?
3. 作業しやすい座位を保つ上で見るべき股関節の動きとは?
4. すばやくADLを評価するコツは?
5. 終わりに
6. 講習会情報
股関節の屈曲可動域制限とは
名前の通り股関節の動きが制限された状態です。もう少し詳しく言うと、大腿骨頭の動きを安定させる3種類の靭帯のうち、恥骨大腿靱帯・腸骨大腿靱帯は弛緩し、坐骨大腿靱帯が伸長した状態を効率よく保てている状態を指します。
(画像引用元:Henry Gray (1825–1861). Anatomy of the Human Body. 1918. Fig.339,340)
これら3種類の靭帯が伸長されたときに起こる、ゴムのように引き戻すの力を利用して大腿骨頭を関節面である寛骨臼に押し付けておく働きがあります。また、大腿骨頭と寛骨が滑らかに動けるように関節包と滑液がクッションのように存在します。
余談
靭帯といっているが、どういう特徴があるんだ? とふと思いました。
まとめてみると…
靭帯 | 伸張位となる股関節の動き→靭帯が大腿骨頭を押し付ける力が発揮される動き |
---|---|
腸骨大腿靱帯 | 股関節伸展位で外旋 |
恥骨大腿靱帯 | 伸展、外転、外旋 |
坐骨大腿靱帯 | 股関節屈曲位で内旋、内転 |
となります。図で見るように、ねじれた構造をしているため、このような特徴が出てくるんですね。
ただ、靭帯が短縮した状態になると適切なタイミングで大腿骨頭を押し付ける力が得られないだけでなく、股関節の動きも制限されるという意味もあり、真実を隠すという部分で今回のトピックと妙に合っているなと思いました。
今回は、この靭帯にフォーカスして、股関節の屈曲についてツッコンでお伝えします。
座位を保つことと股関節の靭帯との関係とは?
どんな姿勢でゆるむの?
さて、先ほどの表をもとに股関節がゆるみやすい肢位を考えてみましょう。
腸骨大腿靭帯は股関節伸展・外旋で伸長するので、股関節屈曲・内旋で最もゆるみますね。
恥骨大腿靭帯は屈曲・内転・内旋で最もゆるみます。
坐骨大腿靭帯は屈曲位で内旋・内転すると伸長するので、伸展・外旋・外転で最もゆるみます。
骨盤が後傾している状態というのは、股関節は90°よりも浅く屈曲した状態を指しますね。
あと、実際に仙骨座りをしてみるとわかやすいのですが、内旋よりも外旋、内転よりも外転したほうが楽に座れます。
つまり、仙骨座りでは「股関節を屈曲・外旋・外転」している状態が高いということです。
机上で作業をしたり、立ち上がったりするときには、身体を起こし足底を地面につけた状態で作業しますよね。
このとき、股関節では「屈曲・内旋・内転」が強く必要になります。
先ほど考えた靭帯のうち、坐骨大腿靭帯は「屈曲・外旋・外転」でゆるむ(短くなる)ため、この肢位が長く続くと靭帯はだんだんと伸びづらくなります。
この靭帯の走行上、股関節内旋と、特に股関節屈曲位での内転が制限されやすいため、伸びづらくなると作業しやすい座位を保つことが難しくなります。
伸びづらくなると、どうなるの?
冒頭にお伝えしたように、靭帯は伸長すると大腿骨頭を寛骨臼へ押し付け、安定させるように働きます。
言葉だけだとイメージしづらいと思うので、タオルを使って体験してみましょう。
まず肘を90°屈曲した状態で、前腕は回内外中間位で手をグーにします。
そしてタオルの端をもう片方の手でまとめて持って、身体に引き寄せます。
これで、模擬・股関節の完成です!!
この状態だと、靭帯はユルンユルンの状態ですね。
ですが、キツく束ねて身体に引きつけておくと…
タオルをキツく束ねた段階で、グーにした手から肘にかけて身体に押し付けられる感じがまずありますよね。
そして、ここから回旋すると…
ものすごく抵抗感がありませんか?
さらに肘が身体に押し付けられる感覚がありませんか??
靭帯にゆとりがあると、回旋する動きがスムーズに大きく行えますが、短くなると押し付けられて動きづらくなるんです。
作業しやすい座位を保つ上で見るべき股関節の動きとは?
この感覚を頭に入れてもらいつつ、先ほどの座位での股関節に話を戻しましょう。
仙骨座りでは「股関節を屈曲・外旋・外転」している状態が高く、
安定した座位では「股関節を屈曲・内旋・内転」する動きが強く必要になります。
坐骨大腿靭帯は「屈曲・外旋・外転」でゆるむ(短くなる)ため、この肢位が長く続くと靭帯はだんだんと伸びづらくなり、特に股関節内旋・内転が制限されやすくなるんでしたね。
つまり坐骨大腿靭帯が伸びづらくなると、仙骨座りが強制されるようになるのです。
一方で、股関節の内転・内旋方向への可動域を得られれば、靭帯の力を活用してラクに効率よく座位を保つことができるようになるんです!
これが、敵にも味方にもなる股関節の靭帯の恐ろしさなんです…(大げさ。)
すばやくADLを評価するためのコツは?
ということで、座位で股関節屈曲ができない場合には
・仰臥位で股関節屈曲・内旋ができるか?
の1つに絞って観察してみると、
座位が安定しない要因を評価しやすくなります!
ちなみに…実は寝返り動作から評価・介入すると、起き上がったあとに座位をキープする一連の流れが出来上がるので、その後の食事や移乗、トイレへの移動、歩行などのADL動作を効率よく行いやすくなりますよ。
寝返り動作の具体的な視点については、以下のコラムをご参照ください。
- 寝返りって、利用者さんが自分で起きたいと思いつつも、院内のリスク管理の為に行動制限される「自立と依存の境界線になる説」[療法士に必要なセルフエクササイズの考え方~その64~]
- 股関節が持つ2つの動き、2つの意味とは?[療法士に必要なセルフエクササイズの考え方~その63~]
- 『寝返り動作』を分析したことのなかった僕が、患者さんと寝返りできるようになるために悩み続けたこと[療法士に必要なセルフエクササイズの考え方~その61~]
- 寝返りに必要な脊柱の動きって??[療法士に必要なセルフエクササイズの考え方~その60~]
- 仰臥位から寝返りができない時は?どんな代償パターンがあるのか考えてみました[療法士に必要なセルフエクササイズの考え方~その59~]
終わりに
これまでは座位姿勢を全体的に観察し、見えている現象を解決するようなやり方が行われてきました。しかし、動作分析で問題のひとつひとつを明確にすることで、改善したい問題点をつなぎ合わせて考えていくことができ、線でつながった考察・介入へと変化行きます。座位姿勢の安定化に向けた考察・介入に限界を感じてきたら、一度試してみてください。
より正確で、より詳細で、より精度の高い改善方法を提案していきたいですね!
とはいえ、寝返りを動作として観察・分析したことがなければ、なかなか実践するのは難しいかもしれません…
そんな時は、「Motion Analysisコース」でフォローいたします!
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動作分析が苦手…と思う方の苦手意識が
少しでも「楽しい!」に近づきますように。
ありがとうございました。
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療法士活性化委員会
認定講師 吉田 頌平
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