寝返りって、利用者さんが自分で起きたいと思いつつも、院内のリスク管理の為に行動制限される「自立と依存の境界線になる説」[療法士に必要なセルフエクササイズの考え方~その64~]

こんにちは!
モーションアナライシスコース講師の吉田頌平です。

唐突ですが、私は急性期〜回復期病棟でリハビリを担当していた頃、どこからアプローチを考えたらいいのか、評価の段階で猛烈に時間がかかる場面がたくさんあったんですよ。特にリスク管理の点から、自分で起き上がって移動することは病棟の看護師さんたちから見ても「安全」と確認してもらえないと、なかなか自立オッケーとはいきませんでした。

特にご高齢の方の場合、いろんな既往があったりして、なかなか移動が安定しなくて……
でも、「お手洗いには自分で、自分のタイミングで行きたい!」って思いも強くて……
どうやったら自立オッケーって言えるかなって悩んでました。

利用者さんの起居動作や移動、トイレ動作を介助してその場では笑顔で対応してくれていたとしても、心のなかで「いつまでアタシは手伝ってもらったらいいのよ……アンタの助けなんか別にいらないわよ」と思われていたら、ショックで立ち直れない。

うおおお、それならもういっそ正直に「ほっといて。私ひとりで行くから」って言ってくれ。
あ、でも、転倒リスクも気になる……

 

私は、療法士の「利用者さんが何とか自分で安全に動けるようになってほしい」っていう熱意と、利用者さんが「早く自分で起きたいけど、こけたらダメだからとか何とかうるさく言われるから起こしてもらおう(汗)」って付き合ってくれる優しさのすれ違いだけは避けたい……。

そのすれ違いに私は……「自立と依存の境界線になる説」と名前をつけました。

そして、「依存に向けた共同作業」の絶対的回避法を思いついてしまったんです。

「利用者さんの為にならない動作分析を知れば、利用者さんも療法士も絶対にハッピーになる動作分析が分かるんじゃないか」って。

そこで今回は、これまで行ってきた動作分析の中で「ADL自立に必要だったものは?」というテーマで考えてみることにしました。

寝返り動作中の動作分析 – 総論 –
▼目次

1. 「ADL自立」のリアルって?
2. 自分で起き上がれない=廃用症候群!?
3. どこから評価したらいいんだろう?
4. 終わりに
5. 講習会情報

「ADL自立」のリアルって?

ADL自立の基準って、FIMやBarthel Index(BI)を参考に考えることが多いですよね。
FIMとBIの評価目的と項目を確認してみますと…

FIM(目的:しているADLを評価する)

セルフケア 移乗 排泄コントロール 移動
食事 ベッド、車椅子 排尿 車椅子、歩行
整容 トイレ 排便 階段
清拭 浴槽    
更衣(上半身)      
更衣(下半身)      
トイレ      

 

BI(目的:できるADLを評価する)

食事 移乗 整容 トイレ動作 入浴
歩行 階段昇降 着替え 排便コントロール 排尿コントロール

…って、そもそも寝返りなんてないじゃん!!
移乗はあるから立ち上がりには注目するけど、FIMとかBIありきの評価だと寝返りは評価すらしないかも…

ベッドから起きれなかったら、ADL自立とかいうレベルじゃないだろー!
何でだー!!

…ちょっと調べてみましょうかね。

教訓
FIM・Barthel Index(BI)をベースにした日常生活動作の評価だと、寝返りをそもそも評価しない可能性がある

自分で起き上がれない=廃用症候群!?

平成28年に新設された「廃用症候群リハビリテーション料」ってご存知ですか??
その名の通り、廃用による生活遂行が困難な方に対するリハビリテーションを算定しますという新しいルールなんですが、ここにヒントがありました。

対象を「急性疾患等(治療の有無を問わない。)に伴う安静による廃用症候群であって、一定程度以上の基本動作能力、応用動作能力、言語聴覚能力及び日常生活能力の低下を来しているもの」とする。
(引用元:厚生労働省.(参考)日常生活動作(ADL)の指標 FIMの概要

基本動作能力とは、「寝返り」「起き上がり」「端座位保持」「立ち上がりから立位」「床からの立ち上がりから立位」

応用動作能力は明記されていませんでした。

いろんな病院などのHPから推察すると応用動作は、「歩く」「段差昇降」「障害物をまたぐ」「更衣」「トイレ動作」のように広範囲にわたると考えられます。
もちろん、PT・OT・STの各専門分野から考えると、この辺りはまた違ってくると思います。

つまり寝床から起きて、立ち上がるまでの一連の動きを『基本動作』と呼ぶわけですが、
ADLと思われる『応用動作』は、この基本動作の上に成り立っているという業界の常識的なものが存在していることにお気づきかと思います。

言い換えれば、いくらシルバーカーや手すりで歩けていようと、自分でベッドから起き上がれないなら
保険診療のもとではADL自立とは言えない、ということです。

これって…単位算定にもかかわる割に見過ごしやすいところですね。
はぁ…こんな前提があったなんて、ちょっと気分がズーンとなりますね…

教訓
  身辺動作の前に、そもそも自分で寝床から起き上がれない場合は…言わずもがな自立アウト

どこから評価したらいいんだろう??

まあ、うん、よし!! でもADL自立のポイントは「まず寝床から自分で起き上がることができること」であることが分かったわけだし、気を取り直していきましょう!!

ところで、寝床から起き上がるのは大変そうだけど、歩行器で歩くとまぁまぁ安定している方っていらっしゃいません??
西田らも、脳卒中片麻痺を持つ方に対する基本動作の難易度を調査したときに、「歩行の方が簡単で、寝返りの方が難しい」方を多く見かけたそうなんです。
この方々には麻痺のレベルはBr.ステージ上肢2、下肢3が多く、股関節0°以上の伸展可動域制限と体幹回旋・屈曲ROMにそれぞれ有意差が現れていたそうです。

半側空間無視の有無や、経過が長く、高齢であるという背景もありますが、
『股関節の伸展可動域制限』『体幹回旋・屈曲制限』が寝返り〜起き上がり、立ち上がりを阻害していることが推察できますね。

なので、寝返り動作を自分でできない、または手すりに頼らないと難しい方の場合はまず
『股関節が0°以上伸展できるか?』
『体幹回旋・屈曲は可能か?』
を、関節可動域だけでなく寝返り動作から観察できるかがポイントとなりそうです!

こないだまで書いていたブログでも、この辺に触れてます 笑

終わりに

あれ……ちょっと待って。なんかちまちま言ってきましたけど、なんか究極の結論に気づいちゃったんですけど。

「生活の自立を目指すなら、まず寝返りをスムーズにできたらいいんじゃない?」
((((これって、もう最終結論でしょ?そうでしょう??))))

今回いろいろと考えてみて、やはり「寝返りは自立と依存の境界線になる説」は成立すると確信しました。

食事・着替え・トイレを介助し、介助され気を遣いあう……優しさから生まれる悲しい徒労……。寝返りを自分で行えるようになることでそんな悲しい連鎖を根本からぶった切る!!!自分で寝返って起き上がれるようになれれば、利用者さんもナースコールを押すのに気兼ねしなくていいし、看護師さんも詰所でピリピリしなくていいし、気を遣い合う関係から抜け出して、みんながハッピー!

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動作分析が苦手…と思う方の苦手意識が
少しでも「楽しい!」に近づきますように。

ありがとうございました。

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認定講師 吉田 頌平

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