自宅退院支援の課題と解決 〜トイレ動作の動作分析から情報共有までの介入法を学ぶ〜

自宅退院支援の課題と解決 〜トイレ動作の動作分析から情報共有までの流れを学ぶ〜

こんにちは、理学療法士の嵩里です。今回は、自宅退院に向けたセラピストと病棟との連携について、そしてトイレ動作をサポートする補高便座の活用についてお話しします。2024年度の診療報酬改定を踏まえ、セラピストがどのように患者さんの在宅生活を支えるか、具体的なアプローチ方法を見ていきましょう。

1. 自宅退院支援におけるセラピストの役割

2024年度の診療報酬改定により、地域包括ケア病棟では40日以内の入院が推奨され、41日以降は入院料が減算されます。このため、セラピストは早期に退院の可能性を見極め、病棟と情報共有することが重要になります。

(1)退院に必要な情報収集(入院前の生活状況の把握)

自宅退院を成功させるためには、患者さんの入院前の生活状況を把握し、多職種と連携して包括的な支援を行う必要があります。特に以下の点について情報収集を行いましょう。

  • ADLの自立度: 歩行距離、トイレ、食事などの動作の自立度を評価します。
  • IADL(手段的日常生活動作): 買い物、家事、自宅内での役割といった生活動作の状況を把握します。
  • 生活環境: 戸建てか集合住宅か、エレベーターの有無、間取り、階段や段差の有無を確認します。
  • 社会的情報: 介護保険証の有無、介護度を把握します。

(2)家族の介助能力の評価

家族の介助能力は、自宅退院を大きく左右します。以下の点について評価しましょう。

  • 介助に必要な知識と技術: 移乗や歩行補助を適切に行えるか確認します。
  • 介助可能な時間: 家族のスケジュールを考慮した介助時間を把握します。
  • 心理的負担感: 介護への不安や負担が大きい場合は、心理的支援が必要です。

福祉用具や在宅サービスを提案し、家族の負担を軽減することも重要です。

(3)地域包括ケアシステムの知識

患者さんが退院後も適切な支援を受けられるよう、地域の在宅サービスを理解しておきましょう。

  • 訪問リハビリ: 自宅内でのADL動作獲得や家屋評価を行います。
  • 訪問看護: 健康状態のチェックや医療的ケア、服薬管理を行います。
  • 訪問介護: 入浴介助や食事の準備、掃除洗濯を行います。
  • デイサービスやショートステイ: 家族の介護負担軽減のためのサービスです。

2. 自宅退院に向けた課題と対策

(1)早期の予後予測の難しさ

患者さんの回復見込みを正確に予測することは難しい場合があります。特に以下の要因が影響します。

  • 既往歴や慢性疾患: 糖尿病や心不全などがリハビリの進行を妨げる可能性があります。
  • 急性期の回復速度: 個人差が大きいため、予測が難しい場合があります。

(2)福祉用具や住環境整備の不足

適切な福祉用具の選定や住環境整備が不十分だと、転倒や再入院のリスクが高まります。特に以下の点に注意が必要です。

  • 福祉用具の選定: 患者さんの身体機能に合わせた歩行器、車椅子、ポータブルトイレなどを選びます。
  • 住環境の整備: 手すりの設置や段差の解消など、退院前に具体的な改善を行います。

(3)地域連携の不備

退院後の支援が途切れると、患者さんや家族の不安が増大します。以下の問題が生じやすいので、注意しましょう。

  • 訪問リハビリや訪問看護の手配が遅れる。
  • 地域包括支援センターやケアマネージャーとの連携不足で、必要なサービスが提供されない。

3. 課題解決に向けた具体的なアプローチ

(1)包括的な情報収集と評価

入院直後から以下の情報を収集し、支援計画に反映させます。

  • 入院前の生活状況やADL/IADLのレベル
  • 家族の介助能力や心理的負担
  • 自宅の環境や患者さんの退院後の希望

これらの情報を基に、40日以内の退院の可否を判断します。必要に応じて、主治医、看護師、ソーシャルワーカーと連携しましょう。

(2)退院前家屋調査

退院前に自宅を訪問し、必要な福祉用具や家屋改修の提案を行います。感染対策で難しい場合は、写真や間取り図を活用しましょう。家屋状況に合わせて、以下の動作練習を取り入れます。

  • 自宅の間取りを想定した伝い歩き
  • 自宅前階段を想定した階段昇降練習
  • 家事動作を想定した立位練習

(3)地域サービスとの早期連携

退院前から訪問リハビリや訪問看護の手配を行い、支援が途切れないようにします。

  • 地域包括支援センターと連携し、ケアプランを共有。
  • 訪問リハビリの開始時期や頻度を調整。

まとめ

自宅退院を成功させるためには、セラピストが包括的な知識を持ち、患者さんや家族に合わせた支援を提供することが不可欠です。多職種と連携し、患者さんが安心して自宅での生活を送れるようにサポートしましょう。

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