問題点を見つけてからが本当のリハビリの始まり|臨床推論の型

こんにちは、理学療法士の大塚です。本日は、臨床でよく受ける相談をきっかけに、「本当のリハビリはどこから始まるのか」についてお話ししていきます。

この記事の結論(3行まとめ)

  • 痛みやふらつきなどの主訴の解決だけでHOPEは達成されない。問題点の特定はスタートラインに過ぎない。
  • 関節・筋肉へのアプローチの後、「なぜそこが動かせなくなったのか」を脳の働き(反射・情動・認知)から探ることが本質である。
  • 脳がその指令を出す根拠は現在・過去の環境にある。この視点なく介入しても、症状は繰り返される。

よく受ける相談:「原因がわからないんです」

臨床でよく、こんな相談を受けます。

  • 「痛みの原因がわからないんです」
  • 「痛みを出している筋肉を特定できるようになりたいです」
  • 「歩行でふらつきがあるので、なんとかしたいんですが…」

そこで僕が必ず確認するのが、「その方のHOPEは何ですか?」という問いです。

すると、こんな答えが返ってきます。

  • 「痛みなく動けるようになること」
  • 「ふらつきなく屋内で一人で歩けること」

もちろん、間違いではありません。でも、ここに一つ落とし穴があります。

⚠️ 落とし穴
「主訴となる問題点が解決すれば、HOPEが達成できる」と思い込んでいませんか?
痛みやふらつきは、動作や自立を阻害する要因のひとつではありますが、それだけが原因ではありません。たまたまその主訴が、今の段階で目に見えて気になっているだけかもしれないのです。

まず問題点を特定する:動作観察→評価→アプローチ

では、実際の手順を整理してみましょう。

原因となる組織に辿り着くためには、まず動作観察をして、問題がありそうな部分を特定します。そしてその部分が「なぜ動かないのか」を確認していきます。

  • 自動運動(MMT)で、筋肉が自ら動かせるかを確認する
  • 他動運動(ROM)で、関節としての可動性を確認する

問題となる関節や筋肉が特定できたら、その部分にアプローチをします。アプローチの方法は、徒手的介入でも、物理療法でも、動作訓練でも構いません。その方に最善の方法を考えてみましょう。

💡 ここがポイント
動作が改善されたとしても、それで終わりではありません。
問題点を見つけてアプローチできたこと——それは、本当のリハビリのスタートラインに立ったということです。

問題点の先にある問い:「なぜ、その関節や筋肉が動かせなくなったのか?」

アプローチをして変化が生まれた後、大事なのはここからです。

「なぜ、その関節や筋肉が動かせなくなってしまっているのか」という原因を探すことが、リハビリの本質です。

筋肉を使って関節を動かしているのは、です。だとすれば、原因を探るには脳の機能を確認する必要があります。

脳の3つの切り口:反射・情動・認知

  • 反射:姿勢制御はできているか? バランスを保つための自動的な反応は働いているか?
  • 情動:その動作に対して恐怖や不安を感じていないか? 「また痛くなるのでは」という予感がブレーキになっていないか?
  • 認知:そもそもその動作を「必要なもの」と脳が判断しているか? 動く動機・理由があるか?

この3つの視点が欠けると、どれだけ関節を動かしても、脳が同じ指令を出し続けてしまいます。

脳が指令を出す根拠は「環境」にある

脳が今の反応を返しているのは、環境から何かしらの刺激が入力されているからです。

だとすれば、脳がその指令を出す根拠になっている環境を見る必要があります。

現在の環境を見る

まずは今、その患者さんが置かれている現在の環境を観察します。

どんな場所で、どんな状況で、どんな姿勢でいるのか。現在の環境を見ることで、どんな反射が起きているかがわかります。

環境への反応から情動を読む

次に、その環境に対する反応を観察します。不安そうにしているか、リラックスしているか、緊張しているか。

この反応の中に、情動の手がかりがあります。

過去の情報で行動の傾向を探る

そしてその情動を元に「どう判断して行動するか」は、これまでの経歴や生活歴など、過去の情報で探る必要があります。

⚠️ 再発を防ぐために
過去からの行動の傾向を見て対策を立てなければ、また今の状態を繰り返します。
痛みやふらつきが再発するということです。

実際に、リハビリの実施計画書には「活動・環境に対する具体的なアプローチ」を記載する欄があります。これはまさに、こうした視点を臨床に組み込むための設計です。

臨床推論の流れを整理すると

ここまでをまとめると、こういう流れになります。

  1. HOPEを確認する:その人が本当に実現したいことは何か
  2. 動作観察で問題点を特定する:どの動作で、どこに問題があるか
  3. MMT・ROMで原因を絞る:その問題を生んでいる関節・筋肉はどこか
  4. アプローチする:特定した部位に対して、最善の方法で介入する
  5. 「なぜ動かせなかったのか」を探る:反射・情動・認知の視点から脳の機能を確認する
  6. 環境を見る:現在の環境→情動の反応→過去の行動傾向へとさかのぼる
  7. 再発しない対策を立てる:行動の傾向を踏まえた、活動・環境へのアプローチを計画する

この流れが、僕が考える「臨床推論」です。

まとめ

  1. 痛みやふらつきといった主訴の解決だけがゴールではない。問題点を見つけた後からが、本当のリハビリの始まりである。
  2. 関節・筋肉へのアプローチの後、脳の機能(反射・情動・認知)という視点で「なぜそこが動かせなかったのか」を探ることが本質的な介入につながる。
  3. 脳の指令の根拠は現在・過去の環境にある。この視点を持たなければ、症状は繰り返される。

そのためにはまず、問題点を見つけられること——筋肉や関節を考えながら触れる力が必要です。その土台を一緒に作っていきましょう。

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硬いところを緩める。弱いところを鍛える。間違いではありません。
でも、患者さんのHOPEから逆算したとき、今すべきことはそれでしょうか。

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