作業療法士による健康管理と予防ケアの実践 〜デイサービスにおける療法士の役割〜

皆さんこんにちは。作業療法士の内山です。前回はOTのための最新技術とツールについて考えていきました。今回は、健康管理と予防ケアに焦点を当てて考えていきたいと思います。デイサービスでのリハビリは、利用者さんの生活を支える重要な役割を果たしていますが、健康管理と予防ケアの視点も不可欠です。これを踏まえ、健康を維持し、介護予防に繋がる実践について詳しく見ていきましょう。

デイサービスにおける健康管理とは?リハビリができること

デイサービスにおける健康管理は、利用者さんの身体機能を維持し、生活の質(QOL)を向上させることを目的としています。作業療法士として、リハビリを通じて以下の取り組みが可能とされています。

バイタルサインの管理

目的:健康状態の変化を早期に発見し、適切な対応を行うことで、病状の悪化や緊急事態を未然に防ぐ。

例:血圧や脈拍の測定を通じて、健康状態を日々把握し、異常を早期発見。

身体機能の維持と向上

目的:筋力やバランス機能を維持し、転倒や動作の制限を防ぎ、日常生活での自立を促す。

例:筋力トレーニングやバランス訓練を実施し、転倒予防や歩行能力の維持に貢献。

栄養管理のサポート

目的:健康的な食生活を支援し、栄養不足や不均衡による健康リスクを回避する。

例:食事内容に対するアドバイスを行い、栄養不足や食事バランスの改善を目指す。

生活習慣病の予防と管理

目的:生活習慣病の進行を抑え、合併症のリスクを軽減し、利用者の健康寿命を延ばす。

例:糖尿病や高血圧に対する予防的指導を行い、生活習慣の改善に繋げる。

作業療法士が考える予防ケアとは?

予防ケアは、将来的な疾患や機能低下を未然に防ぐための取り組みです。作業療法士として、個々の利用者さんのニーズに応じた予防ケアを行うことが求められます。以下に具体例を交えながら解説していきたいと思います。

転倒予防

目的:転倒による怪我や寝たきり状態を防ぎ、安全な生活環境を確保する。

例:座位、立位でのバランストレーニングや筋力強化、歩行補助具の提案を通じて、転倒リスクを軽減。

関節可動域の維持

目的:関節の拘縮や硬直を防ぎ、日常動作を円滑に行えるようにする。

例:関節の柔軟性を保つためのストレッチや日常動作の指導により、関節拘縮の予防。

認知機能の維持

目的:認知症や軽度認知障害の進行を遅らせ、日常生活での自立を支援する。

例:ゲームやパズル、会話を通じた脳の刺激活動を通して、認知機能の低下を防ぐ。

ストレス管理とメンタルケア

目的:心の健康を保ち、うつや不安症状の予防・改善を図る。

例:利用者さんの心理的な負担を軽減するためのリラクゼーション法や趣味活動の提案。

デイサービスで実際に行っている健康管理と予防ケアの実践

デイサービスでは、具体的にどのような健康管理と予防ケアが行われているのでしょうか。実際の取り組み例をご紹介します。

嚥下体操、食事形態の調整

目的:嚥下機能の低下を防止し、いつまでも美味しいご飯を食べ続けることが利用者さん本人の生きがいとなり、前向きな活動を継続できるようにすること。

例:YouTubeを使用した嚥下体操の定期実施。
昼食時にOTとNsで一緒に食事場面を観察し、食事形態によるむせ込みなどがないかを随時確認。むせ込みが続くようであれば、1口大や刻み、ペーストなどへの調整をスタッフ全員に共有し方針を決定していく。

姿勢保持のための環境設定

目的:食事を行う際の座位姿勢などは、嚥下のしやすさにも影響する。身体機能へのアプローチだけで姿勢保持を改善することは難しいことが多いため、座る椅子の形や体幹中間位を長時間保持しやすい設定をする。

例:座面が沈まず、背部全面に接地面がある椅子の選択をする。
ハイトレックスを活用した体幹、臀部のコアマッスルの促通運動を行い、姿勢保持筋の筋出力向上を図る。

小レク活動

目的:直接的な身体機能訓練だけでなく、利用者さんたちが馴染みのある遊びなどを通して、楽しみながら身体を動かして健康維持を図る。

例:メンコ遊びを行うことにより、立位バランスや立位での上肢活動を賦活する。
ジェンガを行うことにより、視空間認知機能や注意機能などの認知機能の賦活や把持、手指の分離運動などの巧緻動作を賦活する。

創作活動

目的:時代背景として裁縫などの手先の細かい作業をやってきた世代であり、自分たちの得意を活かした活動を行ってもらうことで、自尊心の向上や他者への貢献などに繋げる。

例:月ごとのテーマに沿った壁画の作成を利用者さんに1から行ってもらうことで、見当識や記憶機能など認知機能やリーチ動作、巧緻動作などの身体機能の両方を1度に賦活する。

栄養、食事サポート

目的:会社が経営しているお弁当屋さんと協働してバランスの良い食事を提供してもらい、サルコペニアやフレイル、廃用症候群などを未然に防ぐ。

例:お弁当屋さんから提供してもらった食べ物の食べやすさ(大きさ、硬さ)や味の感想をデイサービス側からフィードバックし、質を高めていく。

屋外散歩〜買い物活動

目的:「外出機会を増やしたい」を生活目標に掲げている利用者さんを中心にピックアップし、家族だけではサポートできない実動作練習を実施し、日常生活の一部として組み込んでいく。

例:リラクゼーション、軽い有酸素運動の目的でデイサービスの周り200〜300mを屋外散歩として実施する。
屋外歩行〜買い物までを目的として、近隣のスーパーまで味噌汁作りで使う具材をメモして買ってくるまでを一連のIADL活動練習として行う。

自主トレ指導

目的:生活目標を達成するために必要な身体機能、認知機能の賦活をメインに実施方法だけでなく、何のために行うかの目的をしっかりと伝える。

例:個別機能訓練(1回15分)だけで補えない部分を日常生活にも取り入れてもらうために、身体機能訓練の方法を指導する。
利用者さんが普段から行なっている役割活動を介した身体機能維持の方法についても伝達することで、ただきつい運動をするでだけにしないように工夫する。

まとめ

  1. デイサービスにおける健康管理は、日常的なリハビリやバイタルサインの確認を通じて、利用者さんの健康状態を見守り、生活の質を向上させる。
  2. 予防ケアは、転倒予防や認知機能の維持など、将来的な健康リスクを減らすために作業療法士が果たすべき重要な役割を持っている。
  3. 実際のデイサービスでは、個別リハビリ計画や集団体操など、健康管理と予防ケアの多面的なアプローチが実施されている。

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